第3話拷問器具
●拷問器具
「ここは何処だ!離せ」
拘束していたマサネが起きたようです。気絶させたマサネを私は家に連れ帰り、地下室に縛っていました。地下室には、私が趣味で集めた拷問器具が山のようにあります。
「目覚めましたか」
正直、長く気を失っていたので少しハラハラしていたところでした。打ち所が悪く殺してしまったのではないかと……。
マサネから地下室がよく見えるように、私は松明を手に持って照らします。
マサネは、茫然としていました。
当たり前です。
地下室には、私が集めた拷問器具がところせましと並んでいました。なかには中古品のようにさび付いて、いかにも恐ろしげな雰囲気を出している品もあります。
「おまえ……どうして、こんなものを」
「趣味です」
私は、はっきり答えました。
「どれも使ったことはありませんが……今日は攻撃されましたし、使ってみますか?」
私は、奥から東洋で使われている拷問器具を引っ張ってきました。ギザギザのある木の板と重い石がセットになっている拷問器具です。ギザギザのある板に人を座らせ、その膝の上に重い石を抱かせるという器具なのです。
「さて、どうして私を襲ったのかを話してもらいましょうか」
ロープで縛って地面に転がしておいた、マサネ。
そのマサネをひょいと持ち上げると、彼は悲鳴を上げました。私は調達屋にしてみれば体格が恵まれないほうですが、それでも少年一人ぐらいだった担ぐ筋肉はあります。私に抱きかかえられたマサネは必死に暴れまわりますが、それぐらいの抵抗ならば簡単に押さえつけることができました。
「さて、本当にどうして私を襲ったのか。正直に言わなければ石を抱かせますよ」
「やめろ、変態!」
マサネは「近づくな」と叫んでいました。
ですが、足首と太ももを縛っていたので、自分で立つこともできません。暴れまわったところで、みじめにはいずることしかできない姿。その姿に憐れみを感じつつも、私は彼に視線を合わせました。
「だから、どうして私を襲ったのかを教えなさい」
「お前が親父を殺したからだろうが」
また、それです。
本当に、私は殺していないのです。
「誰から、それを聞いたのですか?」
マサネは、私から顔をそらします。
この少年が、自分一人で私が犯人だと思いついたとは考えられませんでした。きっと話を吹き込んだ何者かがいることでしょう。
ですが、少年は健気に自分に私の名前を吹き込んだ相手を黙っていました。
私は脅しのつもりで、石を持ち上げます。
それを見たマサネは悲鳴を上げて、また気絶をしてしまいました。
「……おや、なさけない」
私は片手で持っていた石を投げ捨てます。この石、実はとても軽い偽物なのです。マサネを座らせた板も偽物で、落ち着いていればその材質が柔らかいことに気が付いたことでしょう。
ここにあるほとんどのものが偽物です。
中古のように見えるものさえ、そのように作られただけなのです。
私はマサネを抱き上げて、地下室から上の階へと移動させます。これ以上、拷問まがいのことはできませんし、やったところでこの子はしゃべらないでしょう。
「肝の据わった子ですね」
彼をベッドに寝かせて、私は足の拘束だけは解いてやることにしました。
「さて、これからどうするかですね」
彼の話が本当ならば、彼の父親のほかに『犬の死体』の従業員が消えているとのことでした。お気に入りの店で事件が起きているのならば、黙っているわけにはいきません。私は外套を羽織って、外へと飛び出しました。
目指すは『犬に死体』です。
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