第2話死神の鎌
●死神の鎌
下層部のダンジョンに潜るときは、いつも危険と隣り合わせです。危険なモンスターがうようよとさまよっているからなのです。そんなところに潜るのだが、実入りは安定しているとは言い難いです。良いものを拾えれば稼ぎがいいが、拾えなければゼロです。
マサネの父親がどんな人間かは分かりませんが、息子を料理人にしたあたり堅実な男であったのだろうと思いました。
待ち合わせの場所に、マサネは剣を持って現れました。初心者用の軽い剣です。防具もつけているが、こちらの初心者用の物でした。間違いではない道具選びですが、これならばやはり深くは潜ることはできないだろうと思われました。
「俺の装備、どこかおかしいところはあるか?」
マサネの言葉に、私は「特におかしなところはない」と答えました。
事実です。
初心者用の装備は比較的脆いが、軽くて動きを邪魔しない作りになっているものが多いです。たくさん歩いてもへばることはないと思われます。
「それでは行きましょうか」
私は、下層部へと続く洞窟へと足を踏み入れました。
あたりは安全地帯よりも薄暗く、松明がなければ一歩進むのも恐ろしいほどです。マサネも松明を持って歩いていました。
「こんなところを昔は親父は潜ってたのかよ」
マサネは、そんなことを呟きました。
私にしてみれば、この薄暗さは日常です。目は、マサネよりも早く暗さに慣れました。
不意に、マサネは私に向かって剣を振り下ろしました。私はその剣を避けて、素早く自分の武器をマサネに向けました。
私の武器は、大鎌です。
死神の鎌のような形をした武器を私はマサネに向けて、松明を持っている彼を睨みました。彼は息を切らせて、私にさらに切りかかろうとします。剣と松明がほとんど同じ軌道を描いており、マサネが武器に慣れていないことは一目瞭然でした。
「何をするんですか?」
私は、できる限りマサネを刺激しないように話しかけます。武器を持つ初心者が、出来心で私のことを攻撃している――とはさすがに思いませんでした。
「武器を下ろしなさい」
私は鎌を向けながらも、マサネと一定の距離を撮ります。
マサネの剣が決して届かない間合いです。
「おろすもんか。あんたが、親父を殺したんだろ」
マサネは、私を睨みながらうめきました。
私はというと、見当もつきません。そもそも、私はマサネの父親の顔すら知らないのです。そんな人間を殺せるでしょうか。……まぁ、顔を知らなくても殺せますが。最近は、見知らぬ人間を殺した記憶はありませんでした。
「私は、あなたの父親を殺していませんよ!」
私は人知れずコインを取り出して、マサネの顔面に向かって投げました。それに怯んだマサネは、尻もちをつきます。私は素早く、マサネの背後に回りました。そして、首筋に手套を叩き込みます。
それだけで、マサネは気絶しました。
私はマサネが持っていた松明を拾い上げ、ふぅとため息をつきました。
気を失ったマサネを安全地帯まで連れ帰るのは、結構骨が折れる作業だったからです。
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