第30話 お前のような仲間がいるか!

 研究所内部へと侵入した俺たちは、奥へ奥へと進んでいた。そこらかしこに極天騎士団の騎士たちが倒れている。全て謎の黒騎士が倒した。本来であれば会うのは、序盤だったはずだ。しかし、俺がアルマが捕まっているガングレリ要塞に乗り込んだ為、謎の黒騎士は登場しなかった。


「俺が竜馬を奪ったから、出遅れたんだろうな……」


 俺は呟いた。本来ライジーンが幽閉されている屋敷の竜馬を、謎の黒騎士が奪い、ガングレリ要塞に向かうはずだったのだ。しかし、1匹しかいない竜馬を奪ったことが原因なのか、デーモン戦で謎の黒騎士は現れなかった。


「ライジーン様、敵の機械魔兵です。手強いですよ」


 アルマが忠告をゲーム通りくれる。機械魔兵はロボットスーツを着た兵士であり、上級魔法を詠唱速度は遅いが、放ってくる。【ライジーン一人旅】でリフレクトバングルが必須の雑魚敵だ。


「闇の中迸るは雷鳴の光、神の怒りを顕現せし電光、我らの敵を殲滅せん、サンダーボルト!」


 先手をアルマがとる。相手の機械魔兵は、ロボットスーツの障害が発生して、動きがとれないでいる。機械魔兵は接近戦も強力な相手だ。強力な属性攻撃をしてくる。【ライジーン一人旅】を撮ってた時は、チートと名高い属性物理攻撃を吸収するエレメントバングルと魔法をはね返すエレメントバングルが必須だった。


「それ! 電光石火だ!」


 敵の機械魔兵は倒れ、動かなくなった。ドロップアイテム、アームギアが手に入った。今までも敵からかなりの数のドロップアイテムを入手している。後でこれらを有効活用する方法があるので、売るような真似はしない。


「これは新型の魔力炉ではないでしょうか?」


 研究所の奥へと入っていくと、少しずつ大掛かりな実験装置、魔力炉の様なものが見られるようになってきた。魔力炉とは魔石を臨界状態にすることで、爆発的なエネルギーを生み出すという革新的な技術と攻略本の設定集には書いてある。


「魔石研究所だからな、あっても不思議ではないな」

「でも、進むごとに、より大きな魔力炉が増えているのが気になります」


 スヴェンと話をしていると、極天騎士団の上級騎士と戦闘になった。


「あなた様は、元団長⁈ 何故こんなところに?」

「お前は副団長のワームルッドか?」

「お前たち、命令通りに行動しろ。剣を降ろせ」


 極天騎士団の上級騎士は剣を鞘に納めた。そしてワームルッドは、何故ここにやって来たのかを聞き始める。俺は、ザルカバードの悪事を止める為だと、言葉少なく返事をした。


「確かに、ウィンドレス王国からバストック連邦に、寝返るとき多くの団員が抜けました。私は副団長として騎士団を守る義務があったので抜けませんでしたが……」

「ねえ、副団長さん、ザルカバードのところへ、案内してくれないかしら」

「その前に、ライジーン様と2人で話をする必要があります。お前たちしっかりやれよ」

「はっ、副団長」


 ワームルッドは俺を研究室の一画へ招き入れた。そして話そうとした時……。


 俺は不発弾をワームルッドの顔面に叩きつけた。


「げふんっ、何をいきなり……!」


 問答無用で不発弾を投げまくる。ワームルッドは不発弾投擲の勢いで壁に叩きつけられ、スタン状態になる。繰り返されるデスコンボ。この狭い部屋だからこそできる小手先のテクニックである。


「ぐはっ、ザ、ザルカバード様……!」


 ワームルッドは死んだ。こいつはパーティーリーダーと2人っきりになると、突然先制攻撃を加えてくる【ライジーン一人旅】の嫌がらせ要員である。最初はゲームのパーティー画面を見ると、ちゃっかりと仲間のように表示されるのだ。しかし裏切って襲ってくる。


「間抜けだな。俺はストーリーを脳細胞いや魂に焼き付けているんだ」


 ちなみにその間抜けは、いざ戦い始め、ピンチになると変身し、モンスターとなって襲ってくる。ピンチにせず、さっさと殺すに限る敵だ。


「ライジーン様、大丈夫ですか? さっきの騎士たちいきなり襲ってきたので、心配したんです」

「問題ない、大丈夫だ。間抜けは速攻で倒したから」


 ちゃっかり戦利品も手に入れた。騎士の証というアクセサリーで、騎士と名の付くジョブの攻撃力をアップさせる。聖騎士であるスヴェンに渡した。


「まだまだ先は長いぞ、気を抜かずにな」


 その後も機械魔兵と上級騎士との連戦が続き、最終エリアに辿り着いた。


「父よ、何故このような暴挙におよぶのですか? 人間を、この世界の生きとし生けるもの全てを滅ぼすなどと!」

「黙るが良い、ヴァイツよ。騎士になる道を捨て、崇高な私の使命を理解しない貴様は、我が息子ではない!」


 謎の黒騎士もといヴァイツ・デュナミスと父ザルカバード・デュナミスとの死闘が行われていた。剣戟が木霊する。打ち合うと剣に火花が生じた。実力は伯仲しているが、必死なヴァイツに比べて、余裕を見せるザルカバード。


「くっ、やはり強い……! だが、負けられないッ!」


 ヴァイツが剣による決死の刺突攻撃を躱されたところで、ザルカバードは息子に向かって、炎属性魔法を放つ。至近距離から食らい、足がもつれるヴァイツ。そこに一閃が走る。


「がはっ!」


 ヴァイツの端正な顔に傷がつく。痛みで倒れるヴァイツ。それをアルマは真っ先に助けに走り出した。俺たちも後に続く。ヴァイツに回復魔法をかけるアルマだったが、額の傷は完全には治らない。


「アルマが、今、この時やって来るとは僥倖という他ありませんね。緋魔石の器はほぼ完成しました。後は生贄が必要なだけ……」

「ザルカバード、ヒューゴーの仇をとらせてもらうぜえ」


 ヴェルファイアを見ると、ザルカバードは一言詠唱した。


「重力結界!」


 俺とアルマ、ヴァイツを除く仲間3人が、重力の結界で動けなくなった。


「話の邪魔が入りましたね。オルランド伯、先の大戦、くだらないアベルの大森林の取り合いではないことは、ご存じでしょうな?」

「先の大戦でサンドール共和国がウィンドレス王国に攻め入ったのは、シャントート帝国の遺産、緋色の欠片――緋魔石の欠片――を入手する為だ」

「ですが、バストック連邦も緋色の欠片を狙っていたのですよ。私の父は連邦のスパイでした。緋色の欠片は偽物とすり替えられ、バストック連邦にもたらされたのです」


 それを使ってどうするつもりかとは俺は聞かない。全て知っているからだ。


「おや、驚いているのですか? それとも既に知っていたとか?」


 なんだか変な感じだ。以前戦ったザルカバードとは大分印象が異なる。


 何かが決定的に違う。そんな気がする。


「まあ、戯言はこの位にしましょうか? 監獄花プリズンフラワー!」

「か、身体が動かない。ライジーン様、助けて!」


 俺を除いて、全員が暗緑色の棘のついた植物に手足を縛られ、動けなくなった。


「歴戦の英雄ライジーン・オルランド……! 私との勝負受けてもらいましょう!」

「かかってこい! ザルカバード! 俺は絶対に……負けない!」


 俺と宿敵ザルカバードの一騎打ちが始まった。

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