第15話 ゲストキャラの装備を盗め!
地下迷宮ロアル市街の探索は続く。古代の人々は現代日本と同じような生活を、送っていたという設定であるのを俺だけが知っている。
行く手を阻むは、このダンジョンで当たり前の機械のモンスターだ。地面を泳ぐ魚型の機械のモンスターが、ラーサラ王子の近くを優雅に泳ごうとした。が、しかし、魅惑的なボディとエルフの美しい姿で、ゲーマーから人気のあるルルガの槍の一閃で機械の魚は倒れる。
ルルガは優雅に、敵を倒した後の決めポーズをとった。
疾風のヒューゴーと同じくらい竜騎士ルルガは人気があり、不正なデータ改造で仲間にしている動画を見たことがある。俺はデータ改造などは邪道の中の邪道だと思っているので感心はしない。ゲームは己の技と知識で楽しむ者だ。それは開発者への敬意の表明でもある。……と40代のゲーマーは思うわけであった。
「しっかし、地上のモンスターとは外見も中身も全く違うモンスターだなあ」
「ヴェルファイアさんもそう思いますか?」
「ああ、俺はスヴェンや王子様と違って学がねえから、良くは分からねえけどなあ」
そこにまたもや敵モンスター? が現れた。外見は小さなぬいぐるみだ。俺がいた日本でいうゆるキャラというヤツに似ている。外見はざっくり言うとクマだな。
『マジックポーションちょうだイ』
可愛らしい声で、おねだりをするモンスター。俺を除いた仲間たちは、どうするべきか混乱しているようだ。俺は全員に手を出さないことを厳命する。そして要求通りマジックポーションを与えた。
『ポーションちょうだイ』
今度はポーションか……。腐る程ヒューゴーと一緒に、ごろつきから巻き上げたので、即座に渡す。
『ハイポーションちょうだイ』
はい、ハイポーション喜んで。お客様1名追加です。
『万能薬ちょうだイ』
はいはい、今度は万能薬ね。全部腐る程あるから、幾らでもあげるよ。
『ありがとう、お礼にこれから守ってあげル』
そう言うと、可愛らしい人形は消えていなくなり、紫の宝珠が付いたリボンが残された。俺はそれをおもむろに掴むとアルマの頭にくっつける。
「ライジーン様、これは一体なんですか?」
「召喚獣の魔石だ」
「ええ⁈」
「そのリボンを付けたアルマなら、召喚できるはずだから、次に敵が出てきた時に使ってみると良い」
アルマはリボンを長い金髪に付けると、ショーウィンドウでポーズをとった。可愛らしい。似合っている。最高だぜ。等々、中学生時代の心を取り戻した俺は、自分にグッジョブと言った。
……何を考えているんだ40歳児。興奮するな。俺は紳士だ。そうだろう?
『ギイイイイイッ』
今度は機械のカエルのモンスターが大量に現れた。その数、30匹アルマの魔法とヴェルファイアの乱れ撃ちで、一気に半数ほどまで減ったが、そこからがやっかいだ。
『シャアアアアッ』
機械の蛇型モンスターが大量にカエル型モンスターに引き寄せられて、集まって来たのだ。セオリー通り戦っても勝てる相手だが、この世界での召喚獣がどの程度使えるものなのか見ておきたかった。
「アルマ、召喚獣を呼ぶんだ!」
「はい、でもどうやって?」
「なんとなく、それっぽい詠唱をして、最後に、イフリートって言えば呼べるよ」
「我万理の理を読み解く者、円環の牢獄に繋がれし、業火の魔人よ、ここに顕現せよ……イフリート!」
『があああっ、我を呼びし者は汝か?』
「え……と、はい、私です」
『御命令を、主よ』
「じゃ、じゃあ敵を倒してください」
『
大きな赤熱する熊に角と人間を融合させたような召喚獣イフリートは口から炎を出し、それを収束させる。そしてそれをレーザーのように敵のいる地面に魔法陣を描くと、地獄の炎が召喚されモンスターを包み込み融かしていく。
『契約がある限り、汝に従おう』
そうアルマに告げると召喚獣イフリートはフッと姿を消した。赤いリボンはアルマ専用の装備である。あのゆるキャラ風のクマのぬいぐるみを普通に倒したら、紫のリボンは手に入らない。このエリアだけのランダムエンカウントのレアモンスターなのだ。しかも一度倒してしまったり、要求するものを与えられないと二度と現れない。
「アルマばっかり美味しいところを、持っていってズルいぜ」
「まあまあ、アルグレイン。僕らもそこそこ活躍しているじゃないか」
「大体、アルマの魔法で数が減って、ヴェルファイアの親分が倒していくじゃないか」
「そりゃあ俺は修羅場をくぐり抜けた数が違うからなあ、アルグレインの坊主」
修羅場をくぐり抜けたのは、ヒューゴーとだけどな。それに修羅場って程でもなかったし。まあもうすぐ、スヴェンもアルグレインもジョブチェンジできるから、聖騎士かサムライあたりにしようと思っている。
「ライジーン殿、あそこに見えるのは、宝物殿ではないですか?」
「ああ、
「宝物殿に行きますか?」
ポーション販売機……もといラーサラ王子が「はい」か「いいえ」の選択肢を選ばせるような質問をする。
はい、と言いたいところだが、準備が必要だ。俺は、まだ準備があると答え、宝物殿の裏に回る。そして邪魔な雑魚モンスターを倒し終えると、ヴェルファイアにある命令を下した。
「宝物殿の壁を撃てばいいのかあ?」
「ああ、狙撃を32回ほど使ってくれ」
「あのライジーン様、これにはどんな意味があるんでしょうか?」
「アルマ、後で説明するから。やってくれヴェルファイア」
「おおよお、行くぜえ、狙撃!」
確かに、ヴェルファイアの弾は宝物殿の壁に当たっている。これで八割このダンジョンでやることは終わった。あとは雑魚モンスターと一戦交えたら準備は整う。
機械のアルマジロのモンスターがまた現れた。ヴェルファイアに狙撃で弱らせてもらう。アルマジロは身を丸くして防御態勢に入った。ここでまたやることがある。
追い剥ぎだ。ヴェルファイアは元フォーロッド盗賊団の首領という設定からか、盗むという技を覚えているのだ。それは一般的にモンスターに使うために付けられたスキルなのだが、ヴェルファイアは足が全てのキャラクターの中で一番遅い。モンスターに近づこうにも、先に逃げられるのが常で誰も盗むの技を使おうとはしないのだ。
俺はヴェルファイアに命じて、ルルガに盗むを使わせた。するとルルガの装備は無くなることは無く、竜騎士の槍が手に入る。その後も連続してヴェルファイアに盗むを使わせて、竜騎士装備1セットを手に入れた。
「手癖が悪いと嫌われますよ」
ルルガは少し困ったような口調で言った。
竜騎士装備はサムライも装備できる。というかゲーム内のデータで、ルルガ専用のジョブ竜騎士はサムライと同じジョブであるらしい。なので、サムライにジョブチェンジさせるつもりのアルグレインに装備させるつもりだ。
「宝物殿に行きますか?」
ラーサラ王子が、宝物殿へのルートに行くと、また尋ねてきた。答えはイエスである。リヴェルカ王からは、宝物殿に近づくなと言われているが、これが正規ルートだ。
「古代の街の宝物殿……何が隠されているのだろう」
ラーサラ王子がは心底楽しそうに話す。しかし、ここは【ライジーン一人旅】の鬼門の一つであったことを、俺は覚えている。
俺が
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