九話 悪役令嬢は婚約破棄を……
九話 悪役令嬢は婚約破棄を……
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私は結局、平凡な天才でしかなかったということか……
私なんかが王子相手に、敵うわけなかったのだ。
国の勢力を二分した、ね。
結局のところ私が半分を勝ち取ったというより、王子が半分譲ってあげただけだったってことなのでしょう。
私は王子と互角だなんて、思い上がりをしていた。
いえ、私はまた夢見ごちになっていた。
彼女が死んでから、すべての物事に現実感がなくどこか他人事だった。
夢に落ちそうになっていた時、また衝撃を受けた。
王子にたいしてというより、王子によってあの時の衝撃を思い出したというべきかもしれない。
でも、間違いなく王子は本物の天才だった。
それこそ、彼女に届くかもしれないレベルの。
私がここまでできたのは、王子が手段を選ぶ人間だったから。
私のような平凡でも、手が届いてしまうぐらいには手段を選ぶ。
だから国は二分した。
それもあの平民が動いた時点で、表面上はともかく実際の形勢はあっという間に傾いてしまったが。
平民も彼女に比べたら大したことないというだけで、庶民でありながら学園に入学した人物だ。
当たり前のように優秀だ。
しかもあの平民は手段を択ばない。
手段を択ばない、平凡な天才だ。
私と平民でいい勝負といったところだろうか。
手段を選ぶとはいえ、本物がいる。
平民と拮抗してしまった時点で、勝負にすらならない。
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「ケレス・アルベード。俺は、ここに……貴女との婚約を破棄する」
パーティー会場が一瞬で静まり返る。
王子の言葉とともに、示し合わせたかのように周りに集まっていた貴族たちがいなくなる。
もう表面上ですら取り繕う必要もなくなったということか。
私は、詰まれたのか。
私はどうなるのかしら?
きっと、死刑。
よくてもアルベード家のお取り潰しは免れないでしょうね。
貴族たちが私と王子を囲むように大きな輪を作り、大きく国が動くであろうその瞬間をかたずをのんで見守る。
誰もがその二人に注目する中、重い音を立て会場の大きな扉が開き……
そこには私(ケレス)と瓜二つの容姿をした少女が……
「……え!?」
……イリス??
私と同じように、
いや、それ以上に着飾った私そっくりの少女(イリス)がいた。
「あらあら、皆様。そんなよってたかって、私のかわいいメイドをいじめないでもらえるかしら」
感情があふれてくる。
いろいろと言いたいことが……
でも今は、ただ……
お帰りなさい、イリス。
やっぱりあなたはすごいのね。
私の都合のいい妄想の、さらに上を行くなんて。
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彼女は、イリスは本物の天才だ。
別格だ。
今までそう思っていた。
対峙して、王子のことを知って、王子は私なんかが及ばない本物なんだと理解した。
彼女と同等なのだと、そう思った。
でも、幼いころの私の直感は間違っていなかったらしい。
イリスは、本当に別格なんだ。
私とは違う本物の王子を通してみたからこそ、より強く実感する。
私たちとは根本から違う、まるでほかの生物みたい。
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