第52話 VS第六階層階層主
――ダンジョン『九竜の潜窟』第六階層・砂漠フロア
海底にあった階段を下りた先に広がっていたのは、茫漠とした砂漠だった。
火山フロアほどではないが、燦々と太陽が照りつけ、暑い。
下層に進むほど広くなるこのダンジョン。
第六階層は第一階層のゆうに四、五倍の広さがあるらしい。
しかも見渡す限りの砂漠。今までここで遭難して帰ってこなかった冒険者は数えきれないという。
日射を避けるため水着から厚めの服へと着替え、足を取られる砂の上を進んでいく。
にしても、色々と過酷だよなぁ、このダンジョン。
トラップやモンスターも危険だが、こうした環境面が地味にいやらしい。
マッドスコーピオン
レベル:34
スキル:〈鋏攻撃+3〉〈毒尾攻撃+5〉
サボテンデス
レベル:35
スキル:〈毒針攻撃+4〉〈自己修復〉
高頻出のモンスター、マッドスコーピオンはその名の通りサソリ型の魔物だ。猛毒の針を持つ尾には要注意で、喰らうと並みのポーション程度では解毒不可能とされている。
サボテンデスは見かけはただのデカいサボテンだが、動くものを見かけると毒針を飛ばして攻撃する。百メートル近い飛距離が出る上、散弾のように大量に飛ばしてくるので厄介だ。遠くから魔法で仕留めるに限る。
レギオンアント
レベル:20
スキル:〈噛み付き+2〉〈軍隊構築+2〉
遭遇して最も厄介だったのは、グンタイアリのモンスターだ。体長はせいぜい三十センチほどで(蟻としてはでかいが)、レベルも低いが、とにかく数が多い。最低でも二百匹くらいで群れている。
広範囲魔法やスラぽんプレスなどを駆使しつつどうにか駆逐したが、今後は遭遇しても避けるようにしたい相手だ。
レイジ
レベルアップ:47 → 48
スキルアップ:〈雷魔法+3〉→〈雷魔法+4〉 〈噛み付き+7〉→〈噛み付き+8〉
スキル獲得:〈軍隊構築+7〉
ファン
レベルアップ:38 → 39
スキルアップ:〈天翔+1〉→〈天翔+2〉
アンジュ
レベルアップ:39 → 40
ルノア
スキルアップ:〈雷魔法+3〉→〈雷魔法+4〉
スラぽん
レベルアップ:36 → 38
スラいち
レベルアップ:34 → 35
スキルアップ:〈吸収+1〉→〈吸収+2〉
スラじ
レベルアップ:25 → 29
スラさん
レベルアップ:24 → 28
お陰でかなりレベルが上がったけどな。
「さて……この辺りにボスがいるはずなんだが……」
この階層にやってきてからおよそ半日。
俺たちは階層主が出現するとされている場所へと辿り着いた。
と言っても、ずぅっと砂漠が広がっているだけ。
しばしその辺りを巡回していると、不意に微かに足元が揺れ始めた。
「っ……来るぞ! ここから離れろ!」
その場から一斉に散開した直後、ドバァッ、と突如として噴水のように砂が空へと吹き上がった。
砂の中から姿を現したのは、巨大な蛇――いや、蚯蚓と言った方がいいかもしれない。
サンドワーム
レベル:50
スキル:〈土魔法+5〉〈噛み付き+4〉〈潜砂+5〉〈魔力探知+3〉〈自己修復+3〉
称号:九竜の潜窟階層主
まだ半身が砂の中だというのに、全長は十メートルを軽く超えている。ぶよぶよとした蚯蚓めいた身体は頭部と胴体の区別が付かず、ただ先端部にぽっかりと口と思われる穴が開いていて、鋭い牙が列をなしていた。
ワームというのは一応、ドラゴンの一種らしい。目の前に現れたのは爬虫類っていうより、完全に環形動物系だけどな。
ドラゴンのような鱗も持たず、魔力で獲物の居場所を察知しているらしい。
サンドワームは空中で身を躍らせると、その口部を剥き出してこちらへと襲い掛かってきた。
咄嗟に躱しつつ、刹竜剣でその身体を斬り付ける。鱗がないからか、武器補正のお陰か分からないが、あっさりと刃が通った。
「ギャアアアアッ」
砂を巻き上げながら暴れ回るサンドワームだが、俺たちはその巨体に押し潰されないよう気を付けながら攻撃を加えていく。
噛み付き攻撃に気を付けて口部に近づいたりしなければ、ノーダメージで一方的に攻撃ができる。なまじ身体がデカい分、攻撃が当てやすいしな。
ただ、〈自己修復+3〉というスキルを持つため、与えた傷はすぐに修復されてしまうのが厄介だ。まぁそれを凌駕する速度でダメージを与えて行けばいいだけだが。
だがこのままでは一方的にやられると思ったのか、サンドワームは再び砂の中へと潜り込もうとする。
逃がすかよと思ったが、中級の土魔法サンドストームを放たれてしまった。砂嵐が巻き起こり、吹き飛ばされそうになる。まるで前が見えない。
嵐が去ったときにはもう、サンドワームは砂の中へと潜っていた。
辺りに静寂が戻る。
「どこか行った?」
「逃げたのかしら? ボスのくせに」
恐らく砂の中に身を潜め、受けた傷を回復しているのだろう。かなり深く潜ってしまったのか、気配は感じられない。〈千里眼〉で見ようにも砂の中は真っ暗だしな……。
と、そのとき突然、足元の地面が沈み始めた。
直径十数メートルに渡って砂の地面がすり鉢状に窪んでいく。しかも砂がまるで吸い寄せられるように窪みの中心へと向かっていて、その中心部には穴が開いていた。
あそこへ獲物を引き摺り込み、捕食しようという魂胆だろう。
さながら蟻地獄だ。
実際、すり鉢の斜面がかなり急で、これを上っていくのは非常に大変そうだな。
俺は〈天翔〉スキルであっさり脱出したけど。
同じくファンも〈天翔〉スキルで難を逃れ、ルノアは翼で、アンジュはスカイスライムであるスラさんに捕まって離脱。
今頃はなかなか獲物が落ちてこないので、サンドワームが首を傾げている頃合いだろう。あいつ首ないけど。
しびれを切らし、サンドワームが穴の奥から飛び出してきた。
「今だ、ルノア」
「グラビティゼロ」
ルノアが重力魔法を発動する。指定空間の重力をゼロにする魔法だ。
いきなり無重力圏内へと置かれ、戸惑うサンドワームへ、俺は風魔法を発動。
「トルネード」
発生した竜巻によって、サンドワームの巨体があっさりと空へと舞い上がる。
必死に身体をくねくねさせているが、愛しの砂の中へ戻ることは叶わず。
陸に上がった魚状態の階層主は、俺たちに蹂躙されて絶命した。
レイジ
レベルアップ:48 → 49
スキルアップ:〈土魔法+5〉→〈土魔法+6〉
スキル獲得:〈潜砂+5〉〈魔力探知+3〉
ファン
レベルアップ:39 → 40
ルノア
レベルアップ:49 → 50
スキルアップ:〈重力魔法+3〉→〈重力魔法+4〉
サンドワームを倒し、第六階層を踏破した俺たちは、次の第七階層へと辿り着いた。
闇に沈んだ薄気味悪い場所だった。
打ち捨てられた墓石が並び、澱んだ空気が辺りに充満している。
墓場のフロアである。
「まぁ墓場って言っても、実際に墓石の下に本物の死者が眠っている訳じゃないだろうけどな」
ダンジョンが生み出した、言わば偽の墓場である。
要するにお化け屋敷なんかと一緒だ。
たぶんアンデッドモンスターが出てくるが、いずれも元は本当に死んだ人間じゃない。……はず。
Q:本物ではない。
〈神智〉で調べたから間違いない。
けど、このフロアで死んだ冒険者の死体がアンデッドモンスターになることはないのだろうか?
Q:ない。冒険者の死体はダンジョンに吸収され、分解される。
ないらしい。
「という訳だから、怖がる必要なんてないぞ、ルノア」
「うん」
ルノアはまったくもって平気そうだ。
ファンはこういうのは大丈夫そうだし、アンジュも――
「むむむ、無理よっ……」
アンジュが蒼い顔で唇を震わせながら叫んだ。
「ぜったいっ、無理……っ! こんな場所っ、ぜっっったい無理ぃぃぃぃぃっ!!!」
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