第44話 VS第三階層階層主
第三階層へと続く階段の途中で、俺たちは死にかけている男女二人組のパーティを発見した。
ルーク 24歳
種族:人間族
レベル:29
スキル:〈槍技+4〉〈体術〉〈回避+2〉〈動体視力+3〉〈度胸〉
称号:上級冒険者(Cランク)
状態:怪我(重傷) 熱中症(軽度)
ヤルナ 22歳
種族:人間族
レベル:27
スキル:〈弓技+3〉〈望遠+1〉〈気配察知+3〉〈罠探知〉〈冷静+1〉
称号:上級冒険者(Cランク)
状態:怪我(重傷) 熱中症(軽度)
二人とも上級冒険者だ。
恐らく第三階層に挑んだが怪我を負い、しかし撤退しようとするも、第二階層を突破できるだけの力が残されていなかったのだろう。たぶん治療薬も切れている。
助けてやるか――
「ああ、ヤルナ……残念だけれど、どうやら僕たちの旅はここで終わりのようだね……。すでにポーションは切らし、この重傷……もはや第二階層を抜けることはできない……。ここにいれば第三階層に向かう同業者が通りかかるかもしれないと、最後の望みにかけたけれど……やっぱり第三階層に挑むような冒険者は少なく、そう都合よくはいかなかったみたいだね……」
「ルーク様……」
「……貴族の四男として生まれ、何の未来もなかった僕は、成り上がることを志して、実家を飛び出した……。そんな僕のことを無謀だと笑わずに今までついてきてくれたのは、君だけだったよ……」
「……当然でございます、ルーク様……。お屋敷に居た頃、お兄様の不興を買って捨てられかけていたわたくしを必死に庇ってくださったときから、わたくしはあなた様を生涯をかけてお支えしようと誓っておりました……」
「ヤルナ……。……心残りなのは、そんな君をここで死なせてしまうことだ……」
「いいえ、ルーク様……わたくしは、本望にございます。あなた様と一緒に死ぬことができて……。……願わくば、もう少し、お傍で……」
……おい。
そんなやり取りしてやがったら、めちゃくちゃ助けにくいだろーが。
◇ ◇ ◇
「「グレイトヒール」」
俺とルノアで二人に回復魔法をかけてやった。
あと、熱中症のようだったので水も飲ませてやる。
「……た、助かったよ」
「あ、ありがとうございます……」
元々は主従関係にあったらしい二人の冒険者たちは、恥ずかしそうに顔を赤らめている。
もう最後だと思って秘めていた相手への想いを伝えていたら、直後に助かってしまったんだからそりゃ気まずくもなるわな。
図らずもそれを聞いてしまった俺たちも恥ずかしい。
ポーションを切らしたらしいので、二人に手持ちのものを幾らか売ってあげた。普通に譲ろうとしたのだが、お金を払うと言われたのだ。まぁそう言われて断るのも失礼なので、貰っておいたが。
「レイジ君か。初めましてだね。僕はCランク冒険者のルークだ。この恩は忘れないよ」
「Bランクの第一級冒険者様ですか……お恥ずかしいことに、わたくし、これまでお名前を存じ上げておりませんでした」
「つい先日、ファースから来たばかりだからな。それで昇格したんだ」
二人はこれからすぐに地上に戻るという。
元気になったようだし、彼らのレベルなら二人でも大丈夫だろう。
「この先は火山フロアになっている。常に体力を奪われる過酷な環境だから、水分補給をしっかりして、無理はしないようにね。……僕が言うのもなんだけれど」
「街に戻って来られたら、お声掛けください。ぜひ、助けていただいたお礼をさせていただきたいので……」
と言っているので、ダンジョンから出たら会いに行ってみよう。
もちろん、クランへの加入候補である。
ルーク:信仰度20%
ヤルナ:信仰度15%
◇ ◇ ◇
――ダンジョン『九竜の潜窟』第三階層・火山フロア
二人組と別れた俺たちは、第三階層へと足を踏み入れていた。
「暑いな……」
「暑い……」
「暑いわね……」
「あついの……」
『……?』
『……?』
火山フロアというだけあって、物凄く暑い。というか、熱い。ところどころに溶岩の川が流れているのだから当然だろう。先ほどルークが言っていた通り、動くだけで体力が奪われそうだ。暑さを感じるための感覚器がないのか、スライム二匹は平然としているが。
「アクアシールド」
水魔法で水膜を張ってみると、多少はマシになった。
「だが、このフロアで寝泊まりするのはやめた方がいいな。いったん第二階層に戻ろう」
という訳で、俺たちは森林フロアで長めの休息を取ることにした。
翌日、再び第三階層へと足を踏み入れた俺たちは、本格的にこの階層の攻略をスタートした。
マグマリザード
レベル:26
スキル:〈炎の息+3〉〈炎熱耐性+3〉〈突進+2〉〈噛み付き+2〉
火山フロアに多く出現するのは、口から火を吐く蜥蜴のモンスターだ。〈炎熱耐性〉を持っていたので、〈死者簒奪+2〉で獲得する度に、パーティメンバーたちに〈賜物授与+2〉で分けていく。
種族的な問題で、さすがにマグマリザードのように溶岩に浸かっても大丈夫というわけにはいかないが、それでも随分と楽になった。
ラーバゴーレム
レベル:28
スキル:〈突進+4〉
ラーバ(溶岩)でできたゴーレムも時々徘徊している。〈突進〉しかできないのだが、全身が赤熱する岩塊なので喰らうと火傷では済まない。
火山フロアは高頻度で溶岩流の場所が変わるらしく、ギルドで買った地図でも所々当てにならない部分があった。最新の情報が欲しければ、ダンジョンの入り口前に屯している露天商辺りが売っている地図が必要らしい。気を付けないと偽物を掴まされることもあるそうだが。
だが俺には〈鷹の眼〉や〈千里眼〉があるので、ほぼ正確なルートを把握しながら進んでいくことができる。
当然、ボス攻略は必須だ。今までは通り道に近い場所にボス部屋があったが、この階層では大きく寄り道しなければならず面倒だった。
洞窟めいた穴倉を進んでいくと、やがてボス部屋に続いていると思しき扉の前へと辿り着く。
扉の向こうは火山の火口に繋がっていた。見下ろすと、ぐつぐつと煮え滾る灼熱のマグマ。頭上は開けていて偽物の空が広がっている。
火竜(レッドドラゴン)
レベル:42
スキル:〈炎の息+4〉〈噛み付き+3〉〈突進+3〉〈翼飛行+2〉〈炎熱耐性+4〉
称号:九竜の潜窟階層主
状態:睡眠
マグマを取り囲む岩場の上に、赤い鱗に覆われたドラゴンがその巨体を横たえて眠っていた。
ドラゴントレントと違ってガチで眠っているようなので、盛大な先制攻撃をさせてもらうとするか。
「「ライトニングバースト!」」
俺とルノアが口をそろえて雷魔法を発動する。魔力量で勝るルノアの方が威力が大きいが。
「――ッ!?」
強烈な目覚ましに、レッドドラゴンは瞬時に覚醒した。
「オオオオオオオオオオオッ!」
「「ライトニングバースト!」」
「――ギャアッ!?」
雄叫び中に悪いが、その隙に再び雷撃を見舞ってやった。
さらに連射する。
「「ライトニングバースト。ライトニングバースト。ライトニングバースト」」
「ギャアアアアアアアアアアアアッ!!」
「っ、炎の息が来るぞっ」
レッドドラゴンはいったん首を撓めると、咢を突き出すとともに口腔から凄まじい火炎を吐き出した。
咄嗟に四散して回避する。
「オオオオオオオオッ!」
ルノアが翼で上空へと逃れたからか、レッドドラゴンは俺の方へと突進してきた。
「――ッ!?」
だが突然、つんのめるようにして頭から岩場に転倒する。
『……!』
レッドドラゴンの後足にスラぽんが巻き付いていた。小型化し、かつ〈保護色〉スキルで岩と同じ色になっていたため、足元にいることに気づかなかったのだ。
「剣舞」
「はぁぁぁっ、爆裂連脚っ!」
岩に激突したレッドドラゴンの頭部に、両側から襲い掛かったのはファンとアンジュだ。斬撃と脚撃が叩き込まれ、硬い竜鱗をも穿った。
「ギャアアアアアッ!」
「っ、逃げる?」
「飛んだ!?」
堪らずレッドドラゴンは翼を使って空へと逃げようとした。
だがそこにはルノアがいた。
「ハイグラビティなの」
「オオッ!?」
重力魔法を喰らい、墜落していくレッドドラゴン。
俺は落下地点へと先回りし、刹竜剣ヴィーブルを掲げた。
「――――ッッッ!!!?」
竜殺しの剣がレッドドラゴンの下顎に突き刺さった。ドラゴンにとって、比較的鱗の薄い下顎は弱点の一つだ。落下の勢いも加わり、鱗と皮膚をあっさりと貫く。
「せーのっ!」
〈怪力+6〉を持つ俺は、その怪力任せに剣を薙ぐ。大量の血飛沫とともに、ドラゴンの顎がぱっくりと割れた。
「グァ……」
最後に弱々しい呻き声を漏らし、レッドドラゴンは沈黙した。
レイジ
レベルアップ:41 → 43
スキル獲得:〈翼飛行+2〉
スキルアップ:〈死者簒奪+2〉→〈死者簒奪+3〉 〈炎の息+5〉→〈炎の息+6〉 〈突進+4〉→〈突進+5〉
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます