第33話 オーク殲滅戦2

 俺の刹竜剣で頭を粉砕されたオークの巨体が、ずん、と地響きを立てながら崩れ落ちた。


オークジェネラル

 レベル36

 スキル:〈剣技+4〉〈闘気〉〈怪力+3〉〈頑丈+3〉〈威嚇+1〉〈統率+2〉

 称号:オークの将軍


 どうやらオークキングの出現に伴って、オークジェネラルという上位種も現れていたらしい。

 残念ながらその力を見せることもなく、呆気ない退場となってしまったが。


レイジ

 レベルアップ:36 → 37

 スキルアップ:〈闘気+1〉→〈闘気+2〉 〈怪力+4〉→〈怪力+5〉 


 レベルが上がった。

 それとこのタイミングで〈闘気〉スキルが+2になってくれたのは、かなりありがたいぜ。


「ブヒっ!?」

「ブヒヒヒっ?」


 他のオークたちは何が起こったのか理解できていないようで、突然現れた俺を前に呆然としている。

 もちろんそんな隙を逃す俺ではない。


「サンダーストーム」


 ルノアのお陰で習得できた中級雷魔法をぶっ放す。

 雷が迸り、オーク数匹が纏めて黒こげになった。


「オオオオオオッ!」


 だが一撃では仕留められなかったオークリーダーが、雄叫びを上げながら襲い掛かってくる。


 俺は地面を蹴り、跳躍した。

 オークリーダーが剣を振り回し、空中にいる無防備な俺を切り裂かんと迫る。


「ッ!?」


 オークリーダーが瞠目した。

 俺が空中で再び跳躍し、剣の届かない高さまで逃げたからだ。


 ――〈天翔〉。


 ファンのお陰で俺はこのスキルを獲得していたのである。


 先ほど空から降ってきたのも、この〈天翔〉の力だ。それと〈隠密〉を併用することで、オークジェネラルに奇襲を仕掛けたのである。

 いやー、上手くいったぜ。


「サンダーストーム。サンダーストーム。サンダーストーム」


 俺は空からサンダーストームを連射する。〈高速詠唱〉スキルのお陰で、発動まで二、三秒しかかからないのがありがたい。


 オークたちがどんなに頑張っても届かない場所からの、一方的な攻撃だ。破れかぶれに剣を投げ付けてきたりするが、あっさり叩き落としてやる。


「サンダーストーム。サンダーストーム。サンダーストーム」

「ブギィ!」

「ブギャ!?」

「ブゥ!?」


 地面があっという間に焼き豚で埋め尽くされていく。

 はっはっは、飛べない豚はただの豚だ!


レイジ

 スキルアップ:〈頑丈+4〉→〈頑丈+5〉


〈死者簒奪〉のお陰で経験値はもちろん、奴らが持っている熟練値がどんどん入ってくる。


「この技、便利」


 同士討ちしないよう、離れた場所でファンもまた〈天翔〉を使いながら一方的にオークを蹂躙していた。

〈飛刃〉スキルも獲得しているので、完全にオークの剣が届く範囲外から攻撃ができるのだ。


「サンダーストーム。サンダーストーム……む、魔力が切れてきたか。スラぽん、頼む」

『……!』


 小型化して懐に入り込んでいたスラぽんから、俺はマインドポーションを受け取った。

 素早く飲み干し、魔力を供給する。

 ついでに普通のモーションも飲んだ。〈天翔〉の方は闘気を使うため、生命力を消費するのである。


「……来たな」


 と、そこで巨大な物体がオークを押し退けながらこちらへと迫ってくるのが見えた。


 オークキングだ。


オークキング

 レベル:44

 スキル:〈斧技+5〉〈剣技+2〉〈闘気+1〉〈怪力+4〉〈頑丈+4〉〈威嚇+3〉〈統率+3〉

 称号:オークの王

 状態:洗脳(軽度)


「ウオオオオオオオオッ!!!!!」


〈威嚇+3〉の咆哮を上げたオークキングは、地面を思い切り蹴って跳躍した。

 あれだけの巨体だというのに、驚くべき跳躍力だ。


 だがさすがに俺がいるところまでは届かない――


「なっ」


 跳躍の最高地点に到達したその瞬間、オークキングが再度跳躍した。

〈天翔〉だと!?


オークキング

 スキル獲得:〈天翔〉


 こいつ、俺たちが使うのを見て、見よう見まねで習得しやがったのか!

〈闘気+1〉のスキルを持ってはいたが、まさか〈天翔〉を覚えてきやがるとは思わなかった。


 オークキングが手にしていた巨大な斧を豪快に振り回す。


「くっ!」


 俺は〈天翔〉で上空へと逃げ、すんでのところで回避する。すぐ背中を馬鹿でかい刃が擦過し、叩きつけるような風圧に襲われた。危ねー。


 オークキングもまた〈天翔〉を使い、追い駆けてくる。

 俺は〈飛刃〉で応戦。闘気の刃がオークキングの身体を切り裂く。だが〈頑丈+4〉を有する巨体にダメージは低い。元より〈飛刃〉は通常の斬撃より威力がだいぶ落ちるしな。


 じゃあ、これならどうだ。


「ハイグラビティ!」

「――ッ!?」


 俺は中級重力魔法を発動した。

 大質量と化したオークキングの巨体が落下していく。〈天翔〉を使って踏み止まろうとしているが、さすがにあの重量での跳躍は不可能らしい。


 凄まじい地響きとともに、オークキングが地面に着地する。不幸にも何体かのオークが踏み潰されていた。


「ブギャッ!?」


 オークキングが悲鳴を上げ、ガクリと膝を折った。見ると、右足の膝に矢が突き刺さっている。てか、意外と可愛い悲鳴だな、おい。


 セルカの援護射撃だろう。

 あんなに離れた位置からピンポイントで膝を射抜くとは、さすがだ。


 膝を破壊されたオークキングは、もはや〈天翔〉で空を舞うことはできない。たぶん。

 俺は重力魔法を解除すると、今度は雷魔法を〈高速詠唱〉。


「ライトニングバースト!」


 中級雷魔法、ライトニングバースト。だが範囲攻撃のサンダーボルトと違い、一極集中型の魔法だ。その分、遥かに威力が高い。


「ブギャアアアアアアアアアアアアアアア!!!」


 頭上から真面に雷撃を浴び、オークキングが絶叫を轟かせた。


「これでトドメだ」


 俺は逆さまになってオークキング目がけて落下していく。〈天翔〉で空を蹴り、さらに加速する。

 雷撃を受けて麻痺状態のオークキングへ、大上段から刹竜剣を振り下ろす!


「おおおおおおっ!」


 頭から胸辺りまでを一気に斬り裂いた。脳漿と血が辺りにぶちまけられる。


 オークキングは断末魔の声を上げることもできず、絶命した。


レイジ

 レベルアップ:37 → 38

 スキルアップ:〈斧技〉→〈斧技+5〉 〈威嚇+2〉→〈威嚇+4〉 〈天翔〉→〈天翔+1〉



「「「うおおおおおおおおおおおおおおおっ!!!!!!!」」」



 背後から凄まじい歓声が上がった。

 俺の戦いを呆然と見ていた冒険者や街の住民たちだ。


「すげぇ! あいつオークキングを倒しやがったぞ!?」

「なんて奴だ!」

「一体、何者だよあの男!?」

「レイジだ! 冒険者のレイジだよ!」

「あいつが噂のレイジなのか!」

「とんでもねぇ奴だ!」


 一方、完全に浮足立ったのはオークたちだ。

 二体のリーダーを失ったのだから当然だろう。統率を取れる者もいなくなり、どうすればいいのかと困惑している。


「サンダーストーム」


 そんな連中など、もはや経験値と熟練値稼ぎのための良い的でしかない。俺は雷撃を連発して次々と焼き豚にしていった。


 だがさすがに血気盛んな種族だけあって、街に向かって破れかぶれの突撃を敢行する者もいた。しかし単発で突っ込んでいっても、冒険者たちに袋叩きにされるだけだ。


 あれだけいたオークが、気が付けばあっという間に殲滅させられていた。

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