第30話 成長速度

 ファースの街に帰ってきた俺たちは、ギルドで適当に依頼を受けつつも、比較的のんびりとした日々を過ごしていた。


レイジ

 スキルアップ:〈神眼+1〉 → 〈神眼+2〉、〈献物頂戴+1〉 → 〈献物頂戴+2〉


 その間に、二つの神スキルの段階が上がった。


 Q:〈神眼+2〉ってどんなスキル?

 A:神の目で対象を見ることを可能にするスキル。〈鑑定〉〈鷹の眼〉〈暗視〉〈千里眼〉〈心眼〉などのスキルを内包。


〈千里眼〉か。

 その場にいながら、離れた場所を見ることができるようになる能力らしい。


 ふむ。ちょっと冒険者ギルドでも覗いてみるかな。

 俺はギルドへと意識を飛ばしてみた。


 すると受付嬢のセルカが見えてきた。冒険者の対応をしているところだな。

 ちょっと面倒な案件なのか、長いやり取りになっている。冒険者は時折、声を荒らげているようだ。声までは聞こえないが。


 最後に冒険者は吐き捨てるような何かを言って、去っていった。それでもセルカは最後まで笑顔のままだ。さすがだな。

 あっ、誰も見てない瞬間を見計らって舌打ちしたぞ。残念、俺が見てました。


 なかなか面白い能力だ。

 千里眼の名の通り、かなり遠くまで見ることができるようで、オーク山まで視界を飛ばすことができた。


 おっ、あんなところにアンジュがいるぞ。ソロでオーク狩りをしているのか。ん? なんか立ち止まって周囲をキョロキョロしているが……。

 と思ったら、木の陰に隠れていきなりズボンを下ろし始めたぞ。さらにパンツも……って、これは……っ!

 ……うん、彼女の名誉のためにも見なかったことにしよう。


〈心眼〉というのは〈慧眼〉の上位版らしい。

〈慧眼〉のときの物事の本質や真偽を見極める能力に加え、目を瞑っていても周囲の状況が手に取るように把握できるようになった。お陰で死角からの攻撃に強くなった。


 それからより詳しい〈鑑定〉が可能になった。

 それによる一番大きな変化は、才能を見極めることができるようになったことだろう。具体的に言うと、スキルの熟練値の上がりやすさが分かるようになった。


 分かりやすいように「成長速度」とでも表現しよう。

 これはS、A、B、C、D、E、Fの七段階で示される。

 例えばこんな感じだ。


ニーナ

〈採掘〉B

〈剣技〉D

〈鍛冶〉S

〈料理〉E


ファン

〈剣技〉A

〈二刀流〉A

〈体術〉B

〈料理〉E


ルノア

〈黒魔法〉A

〈翼飛行〉A

〈雷魔法〉A

〈料理〉E


 稀少なスキルであればCでも天才と言えるだろうが、基本的にはCは普通、Bは才能あり、Aは超天才、といったところか。Sに至ってはもはや何十年、何百年に一人クラス。


 逆にEは致命的。頑張っても熟練値がほぼ入ってこず、スキルを獲得することすら難しい。

 Fはそもそも獲得することが不可能。たとえ俺のように何らかの方法で獲得したとしても、死にスキルになる。


 ニーナはまだ〈鍛冶〉スキルを持っていないが、成長速度がSなんだが……。今度ぜひやらせてみるべきだろう。

 ……というふうに、才能が見えるというのはなかなか便利だ。


 三人とも〈料理〉スキルがEだし、これは絶対に料理をさせていけないパターンだな。……というふうに残酷な現実も見えてしまう。


 ちなみに従魔たちはこんな感じ。


スラぽん

〈物攻耐性〉A

〈自己修復〉A

〈吸収〉A

〈擬態〉E

〈料理〉E


スラいち

〈物攻耐性〉A

〈自己修復〉A

〈吸収〉E

〈擬態〉A

〈料理〉D


 スラいちの〈料理〉がD!? できるようになるの!?


 ……基本はほぼ同じだが、種族固有のスキルに関しては大きな違いがあるな。スラぽんなら〈吸収〉が高く、スラいちなら〈擬態〉が高い。


 試しにスラぽんに俺がスラいち経由で得た〈擬態〉スキルを譲渡してみたが、〈擬態〉の成長速度はEのままだった。

 種族もミミックスライムではなく、グラトニースライムのままだ。


 続いてスラいちに〈吸収〉スキルを譲渡しても、やはり〈吸収〉の成長速度はEのまま。種族もミミックスライムから変化しなかった。


 どうやら一度上位種に進化してしまうと、たとえ必要なスキルを習得したとしても別系統の上位種には進化することができないらしい。


 え? 俺はどうだったかって?

 ……よし、次にいこうか。


 ステータスの上がり易さも分かるようになった。


ニーナ

 生命:C

 魔力:D

 筋力:B

 耐久:B

 敏捷:D

 知力:B


ファン

 生命:B

 魔力:D

 筋力:B

 耐久:B

 敏捷:A

 知力:B


ルノア

 生命:B

 魔力:S

 筋力:B

 耐久:B

 敏捷:B

 知力:A


スラぽん

 生命:A

 魔力:D

 筋力:B

 耐久:S

 敏捷:C

 知力:E


スラいち

 生命:B

 魔力:D

 筋力:B

 耐久:A

 敏捷:B

 知力:C


 こんな感じ。


 スライム二体を比較するに、たとえ遺伝子(?)が同じでも、種族が違うと違う成長を遂げるらしい。スラいちの知力は魔物としては異常な高さだな。



 Q:〈献物頂戴+2〉って?

 A:神固有のスキル。信者が自らの力で得た経験値、および熟練値(信者になる前に得たものも含む)の一部を獲得できる。


 +1のときとの違いは「信者になる前に得たものも含む」という部分だ。

 お陰で+2になると同時に、膨大な経験値と色んなスキルの熟練値がいっぺんに入ってきた。


 俺のレベルは一気に36まで上がった。

 スキルが多すぎるので、ちょっと整理してみる。


レイジ 0歳(24歳)

 種族:人間族(ヒューマン)(邪神)

 レベル:36

 神スキル:〈神眼+2〉〈神智+1〉〈献物頂戴+2〉〈賜物授与+1〉

(〈鑑定〉〈鷹の眼〉〈暗視〉〈千里眼〉〈心眼〉)

 固有スキル:〈死者簒奪+2〉

 武技スキル:〈剣技+6〉〈二刀流+3〉〈体術+3〉〈爪技+3〉〈鞭技+2〉〈拳技+2〉〈槍技+1〉〈盾技+1〉〈弓技+1〉〈杖技〉〈蹴技+1〉〈斧技〉

 魔法スキル:〈火魔法+2〉〈水魔法+1〉〈風魔法+1〉〈土魔法+1〉〈雷魔法〉〈重力魔法〉〈黒魔法〉〈回復魔法+1〉

 魔法補助スキル:〈無詠唱〉〈高速詠唱〉〈魔力吸収〉

 攻撃スキル:〈投擲〉〈突進+1〉〈噛み付き+2〉〈触手攻撃〉〈炎の息+3〉

 防御スキル:〈物攻耐性+4〉〈自己修復+4〉〈毒耐性〉〈痛覚軽減〉

 移動スキル:〈逃げ足〉〈木登り〉〈隠密+1〉〈翼飛行+4〉

 身体能力スキル:〈怪力+4〉〈動体視力+3〉〈望遠〉〈俊敏+2〉〈柔軟〉〈回避〉〈嗅覚+1〉〈自然治癒力+2〉〈頑丈+4〉

 探知スキル:〈罠探知〉〈気配察知〉

 心理スキル:〈勇敢〉〈度胸〉〈忠誠+1〉〈慈愛〉

 特殊スキル:〈威嚇+2〉〈遠吠え+2〉〈念話+2〉〈虎化+3〉〈闘気+1〉〈保護色〉〈擬態+1〉

 技術スキル:〈魔物調教+2〉〈統率+3〉〈採掘〉〈園芸〉〈子育て〉〈料理〉〈会話〉

 称号:神殺しの大罪人 中級冒険者(Dランク)


 ……うん、多いね。


 とりあえず〈翼飛行+4〉は俺が持っていても仕方ないので、ルノアにあげておこう。


レイジ

 スキル喪失:〈翼飛行+4〉


ルノア

 スキルアップ:〈翼飛行〉→〈翼飛行+4〉

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