第25話 ミミックスライム
朝起きたら巨乳になってました。
何を言っているか分からないと思うが、俺にも分かりません。
まぁ冗談はさておき、俺は胸の上に乗っかっているスラぽんをぷにぷにと揉んでやった。
『……!』
巨乳の正体はスラぽんだ。俺の胸の上で二つの膨らみを作っていたため、まるでおっぱいのように見えたというしょーもないオチである。
……ん? 待て。何で二つ……?
「ちょ、何があったんだ!?」
俺は慌ててベッドから飛び起きる。二匹のスラぽんが転がり落ち、床にぶつかってぽよよーんと跳ねた。
スラぽん 0歳
種族:グラトニースライム
レベル:26
スキル:〈物攻耐性+2〉〈自己修復+2〉〈吸収+4〉〈触手攻撃+1〉〈噛み付き+3〉〈亜空間〉〈硬化+1〉〈怪力+3〉〈頑丈+3〉〈保護色〉〈帯魔〉〈酸攻撃〉〈毒攻撃〉
称号:暴食生物 保管生物
状態:テイム 信仰度75%
とりあえず〈神眼〉で見てみた。
こっちは何の変哲もない(?)スラぽんのようだな。身体の大部分を保管庫に入れているため、今はかなり小型化した状態だ。
ちなみに〈保護色〉とか〈酸攻撃〉とか〈毒攻撃〉というのはつい最近、気が付いたら取得していた。
何を〈吸収〉した結果だろうか……。適当に色んなものを食わせているからな。
スライムの中には、カメレオンスライムやアシッドスライム、ポイズンスライムとかいう変異種もいるらしいが、スラぽんの種族はグラトニースライムのままだ。
俺はもう一匹の方を〈神眼〉で見た。
種族:ミミックスライム
レベル:1
スキル:〈物攻耐性〉〈自己修復〉〈保護色〉〈擬態〉
称号:ベビィスライム 擬態生物
どうやらこの子、スラぽんから生まれた赤ん坊らしい。
スライムは無性生殖により繁殖する。親の身体の一部が独立し、新たな個体として誕生するのである。
その際、親の能力の一部も受け継ぐらしいが、グラトニースライムであるスラぽんの最大の特徴である〈吸収〉スキルは受け継いでいないようだ。
その代りに〈擬態〉という見たことのないスキルを所持している。
どうやら〈保護色〉の上位版らしい。
すでに絨毯に擬態しようとしていて、べろーんと煎餅のように薄くなっていく。すごい、これ本当に見分けがつかないぞ。〈保護色〉だけだとこうはいかない。
ぷるぷるっ!?
俺が意地悪して持ち上げてみると、今度は慌てたように透明化していった。なかなか面白いな。
Q:ミミックスライムって?
A:スライムの変異種であるカメレオンスライムの上位種。様々なものに擬態できる。
もちろん俺はミミックスライムをテイムすることにした。
スラいち 0歳
種族:ミミックスライム
レベル:1
スキル:〈物攻耐性〉〈自己修復〉〈保護色〉〈擬態〉
称号:ベビィスライム 擬態生物
状態:テイム 信仰度15%
名前はスラいちだ。
理由はこれからまた増えるかもしれないし、そのとき数えやすそうだから(安直)。
ぷるりんぷるりん!
スラいちは喜んでくれたようだな。たぶん。
すぐに死なれると困るので、〈賜物授与〉で経験値を付与しておこう。〈頑丈〉も与えておくか。
レイジ
レベルダウン:30 → 28
スラいち
レベルアップ:1 → 17
スキル獲得:〈頑丈〉
これでよし、と。
「スラぽんが二匹いるのです!?」
「繁殖した?」
「新しい従魔のスラいちだ。仲良くしろよ」
その後、スラいちをニーナとファンに紹介した。
「これでスラぽんボールが二発なのです!」
「いや、この子はこのサイズにしかなれないから無理だぞ」
「……残念なのです……」
あ、でもスラいちにも〈吸収〉スキルを付与してやればいいのか。そうすれば、アイテムボックスを食って〈保管庫〉スキルを獲得することができるだろう。
以前、俺が持っていた〈吸収〉スキルの熟練値はすべてスラぽんに与えてしまったが、〈献物頂戴〉のお陰でスラぽんが〈吸収〉を使う度に俺にも熟練値が入ってきている。
放っておけば、そのうちまた〈吸収〉を獲得できるだろう。
少し話は逸れるが、ステータス上には表示されなくても、水面下で熟練値を入手しているスキルは多い。そしてスキルがなければその能力をまったく発揮できない訳ではない。
例えばどんなスライムであっても、〈吸収〉スキルが無くとも、普通に植物や昆虫などを取り込んで吸収しているものだ。剣だって〈剣技〉スキルが無くとも使うことができる。
とは言えスキルの効果は大きい。習得した途端、開眼したかのように能力や性質が大きく向上するからである。
「そのうちスラいちの〈擬態〉能力もスラぽんに付与してやりたいな」
◇ ◇ ◇
「悪魔?」
新たな従魔を手に入れ、冒険者ギルドに足を運んだ俺たちは、セルカからとある情報を聞かされていた。
「はい。サントールという村に悪魔が出現したという情報が入って来たのです」
Q:悪魔って?
A:魔族の一種。地下世界が主な生息地で、地上に出現することは稀。下級悪魔(れっさーデーモン)でも危険度Bの討伐対象に指定される。
ちなみに危険度Bの討伐対象というのは、Bランクの冒険者が一対一で戦うと大いに苦戦するが、Bランクの冒険者を含むパーティで戦えば比較的安全に討伐することが可能、というくらいのイメージである。
だが現在この街のギルドを拠点としている冒険者たちの中には、Bランク自体、俺が知る限り三人しかいない。
一人はギルド長のアンジュリーネで、もう一人は受付嬢のセルカ。あと一人は何度か見かけたことがある程度だが、初老の剣士だ。
下級悪魔でさえそれほどの強さなのだから、いかに悪魔という種族が強大な力を持っているかが分かるというものだろう。
「それで、俺たちに調査に赴いてほしいと?」
セルカは若干申し訳なさそうにこくりと頷いた。
まぁ他に依頼できそうな冒険者はいないもんな。三人のBランクたちの内、二人はギルドを離れることはできないし、もう一人はソロなので今回の任務には不適切だ。
それに俺はCランクとは言っても、実力はBランク相当。ニーナとファンもDランクだがCランク上位の力がある。俺たちのパーティは適任だろう。
「もちろん十分な報酬はお出しいたします。それと、強力な助っ人も用意しています」
助っ人か……。俺は思わず内心で顔を顰めた。
俺のパーティメンバーは全員が俺の信者だ。俺の指示に忠実だし、お陰で高い連携を保つことができている。
そこに異分子が加わると非常にやり辛いことになるだろう。かえって戦力が低下しかねない。
スラぽんもいるし、俺たちだけで十分なんだけどな……。
しかしいつも街中では小型化しているので、普通のスライムと思われている。そしてスライムというのは、一般的に戦闘用というより愛玩用の従魔だ。
かと言って、グラトニースライムなんていう物騒な正体を明かすのはなぁ……。
そのときだった。
「ふんっ、このあたしが一緒に行ってあげるんだから、感謝なさいよね!」
背後から高圧な声。
振り返ると、そこにいたのはアンジュリーネ(娘)だった。
どうやら助っ人というのは彼女のことらしい。
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