第16話 駆け出し三人組再び

 目標としている金貨50枚まであと20枚。

 今日は鉱山の最下層である第六層まで行ってみようと思う。


「あっ、レイジくん!」


 第一層で、この間ゴブリンの森で助けたリザ、ミルフィ、メアリの駆け出し三人組に出会った。俺の方が年上のはずなんだが、くん付けで呼ばれている。別にいいけど。


「聞いたよ! Dランクに昇格したって!」

「……あっという間に、先を越された……」

「それに、コボルトの群れに追い駆けられていたバルドックさんたちを助けたって聞いたわ」


 俺の噂はどうやら冒険者たちの間でかなり広まっているらしい。


「あたしたちも負けられないね!」


 俺に触発されたのか、三人はここ最近かなり頑張っているようだった。その証拠に、この短期間でレベルが一つずつ上がっている。


リザ 17歳

 種族:人間族(ヒューマン)

 レベル:12

 スキル:〈剣技+1〉〈度胸〉〈回避〉

 称号:駆け出し冒険者(Eランク)


ミルフィ 18歳

 種族:人間族(ヒューマン)

 レベル:11

 スキル:〈水魔法+1〉〈氷魔法〉〈料理〉

 称号:駆け出し冒険者(Eランク)


メアリ 16歳

 種族:人間族(ヒューマン)

 レベル:10

 スキル:〈隠密+1〉〈罠探知〉〈園芸+1〉

 称号:駆け出し冒険者(Eランク)


 くくく、どんどん経験値を稼ぐがいい。

 その分、俺にも経験値が入って来るからな。


「けど、気を付けろよ? 油断してるとまた前回みたいなことになりかねないぞ」

「わ、分かってるもん!」

「お前たちが死んだりなんかしたら、俺、マジで悲しむぞ」

「……レイジくんっ……」


 だって死んだら経験値が入って来ないもんな。


 訊けば、彼女たちがこの鉱山に来たのは今日が初めてらしい。というか、どうも俺がこの鉱山に来ていると知ったからこそ、ちょっと背伸びしてここに来たみたいだな。


 彼女たちのレベルだと第一層でもギリギリっぽい。

 なので少しだけ行動を共にすることにした。だって死んだら経験(ry


「すごい! レイジくん、前よりも強くなってない!?」

「いつの間にか従魔まで作っているしね」

「……恐るべし……」


 君たちから経験値をもらっているお陰だよ。


「見ての通り、コボルトは足の関節の構造上、振り返る動作が苦手だ。一対一の場合は積極的に背後に回るといい。盗賊のメアリは気配を消すのに長けているだろうし、二人を陽動に使って背中から攻めるというのもありだ」


 俺はここ数日の間に経験で掴んだ知識を彼女たちに伝授してやった。

 ステータスも大事だが、冒険者にとってこうした知識は侮れない。

 これで彼女たちの生存率もかなり上がったはずだ。


「だいたい分かったか?」

「はい、先生っ!」

「助かったわ。リザとメアリに半ば無理やり引っ張られる形で来ちゃったけど、これなら何とかやっていけそうね」

「……我々も早くDランクに……」


 ・リザ:信仰度55%

 ・ミルフィ:信仰度20%

 ・メアリ:信仰度40%


 彼女たちの信仰度もまた少し上がったな。


「じゃあ、俺たちはもっと下の層に潜るから」

「みなさん、頑張ってくださいなのです!」

「ありがとう、レイジくん、ニーナちゃん!」


 別れ際、俺は少しだけ彼女たちに〈賜物授与〉を使うことにした。

 あと一つくらいレベルが上がれば、第一層ならさらに安全に行動できるはずだ。効率も良くなり、経験値も溜まりやすくなるだろう。


レイジ

 レベルダウン:20 → 18


リザ

 レベルアップ:12 → 13


ミルフィ

 レベルアップ:11 → 12


メアリ

 レベルアップ:10 → 11


「あれ、なんか急に力が湧いてきた……?」

「私もそんな気が……」

「……摩訶不思議……」


 三人そろって首を傾げているのが面白い。


レイジ

 スキルアップ:〈賜物授与〉→〈賜物授与+1〉


 おっ、〈賜物授与〉の段階が上がったぞ!


 Q:〈賜物授与+1〉って?

 A:経験値、および熟練値を信者に譲渡することができる神固有のスキル


 つまり、経験値だけじゃなく、スキルも渡すことができるようになったということか。

 早速、試してみよう。


レイジ

 スキル喪失:〈吸収+3〉〈触手攻撃+1〉〈噛み付き+2〉


スラぽん

 スキル獲得:〈吸収+3〉〈触手攻撃+1〉〈噛み付き+2〉


 よーし、上手くいったぞ。

 俺が持っていてもほとんど死にスキルだった〈吸収〉と〈触手攻撃〉も、スライムであるスラぽんなら使いこなすことができるだろう。ついでに〈噛み付き〉も渡してみた。


スラぽん

 種族:スライム → グラトニースライム

 レベル:13

 スキル:〈物攻耐性〉〈自己修復〉〈吸収+3〉〈触手攻撃+1〉〈噛み付き+2〉

 称号:暴食生物

 状態:テイム


 そしてスラぽんが進化したようだ。

〈吸収〉のスキルを入手したから、この間遭遇したグラトニースライムになったのか。これまでは植物しか食べなかったが、これからは色んなものを食べさせてみよう。




 リザたちと別れ、俺たちは下層へと向かった。

 とりあえず昨日と同じ第五層へと辿り着く。


レイジ

 レベルアップ:18 → 19


 降りてくる間にレベルが上がった。なんだか上がるのかなり早かったな。上でリザたちが頑張っているからかもしれない。


 ところで今さらだが、今の俺の武器は鋼の剣に戻っている。


 ・鋼の剣:片手剣。業物。稀少度アンコモン


 ただし量産品ではなく、鍛冶師が丹精を込めて打った業物だ。

 ルバートが使っていたミスリルソードは俺が持っていると怪しまれるということもあり、ギルドに回収されてしまったのだ。いつか欲しいなぁ。


「ウオオオオオン!」


 第五層には〈遠吠え〉で仲間を呼ぶコボルトリーダーが数多く棲息している。


 種族:コボルトリーダー

 レベル:19

 スキル:〈剣技+2〉〈噛み付き+2〉〈統率+1〉〈遠吠え〉


 お陰であちこちからコボルトが集まってくる。


「ピットフォール!」

「ッ!?」


 小さな落とし穴が出現し、先頭にいたコボルトが足を取られて引っくり返った。後ろの何体かがそれに巻き込まれる。

 覚えたばかりの土魔法だ。地味な技だが、ちょっとした足止めができて便利だ。


「えい、なのです!」

『……!』


 ニーナが槍斧を振り回してコボルド数匹を纏めて吹っ飛ばし、スラぽんも突進攻撃や触手攻撃で俺たちを援護してくれる。


 コボルトの集団を殲滅すると、死体をスラぽんに吸収させてみた。


「一度にそんなに入れて大丈夫か?」


 グラトニースライムに進化したことで肉食化したのか、スラぽんはまだ小さな身体でコボルトの死体を丸ごと取り込んでしまった。

 しかも〈噛み付き+2〉を獲得したことで牙のような器官が出現し、それで死体を咀嚼している。


スラぽん

 レベルアップ:13 → 14


 どうやら〈吸収〉することでも経験値が入るらしい。この調子でどんどん成長していってもらおう。

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