第2話 第一モンスター発見
ハルエルとかいう自称天使(本当に天使なのか俺は未だに半信半疑である)に教えてもらった通り、〈神智〉というスキルを使ってみることにした。
次の瞬間、俺の脳内に大量の情報が流れ込んできた。
「っ!?」
ちょ、何だよこれは!?
酷い眩暈が襲ってきて、俺はその場に蹲ってしまう。
やがてゆっくりと眩暈が収まってきた頃、俺は〈神智〉スキルの正体を概ね理解していた。
Q:〈神智〉ってどんなスキル?
A:《神智図書館》にアクセスすることを可能にするスキル。
Q:《神智図書館》って何?
A:神々の叡智を集めた図書館。
どうやら先ほど俺は、その図書館にある膨大な知識を一度に閲覧しようとしてしまったらしい。しかし当然だが、それは人間の脳で処理できる量ではない。
色々と試してみて、どうにか必要な知識だけを選んで見ることができるようになった。
ってか、使い方くらい教えておけよ、あのクソ天使。
しかし、情報を探すのに少し手間がかかるな、これ。図書館だけあってきちんと整理されてはいるようなのだが、慣れるまでは探すのが面倒そうだ。検索機能が欲しい。
Q:ここはどこ?
A:……。
Q:この近くに街とかない?
A:……。
そして現在地に関する情報は調べても見つからない。考えてみたら、そんな個人の情報が《神智図書館》とやらにあるはずないもんな。
そこでふと思い立って、俺は地面に目を凝らしてみる。
すると視界の端に、先ほどのステータスと同じような文字が浮かび上がった。
・地面
見れば分かるんですが……。
が、これこそが〈神眼〉というスキルの能力に違いない。
再び〈神智〉を使ってみる。
えーっと、「スキル」に関する情報は、確か、こっちの方に……。
お、あったあった。
Q:〈神眼〉ってどんなスキル?
A:神の目で対象を見ることを可能にするスキル。〈鑑定〉〈鷹の眼〉などのスキルを内包。
ふむふむ、なるほど。
つまり俺は先ほど、大地を〈鑑定〉したということだろう。
続いて、目を瞑って意識を空へと向けてみる。すると、上空から地上を俯瞰するような映像が脳内に流れ込んできた。
これは〈鷹の眼〉の能力だ。
北西の方角に街らしきものを発見した。
〈鷹の眼〉を使いつつ、街を〈鑑定〉してみた。
・ファースの街
街の名称が分かったぞ。
ここで再び〈神智〉の出番だ。
Q:ファースの街って?
A:シルステル王国南東部にある都市。人口約三千人。
さすがは神スキル。〈神眼〉と〈神智〉、この二つのスキルを併用すれば、大抵のことは知ることができそうだ。
とりあえず俺はファースという街に向かって歩くことにした。上から見た限り、間に丘や森なんかもあったのでそれなりに距離がありそうだ。
「っ……あれは……」
その途中のことだった。前方に高さ五十センチメートルくらいの無色透明の塊を発見し、俺は足を止めた。
種族:スライム
レベル:2
スキル:〈物攻耐性〉〈自己修復〉
第一モンスター発見!
しかもゲームではお馴染みの最弱モンスターだった。
レベル2だし、異世界に転生して初めての戦闘としては恐らく適当な相手だろう。
ただ〈物攻耐性〉っていうスキル持ちなのに対し、こっちは素手だ。そしてどこにでもあるような布の服。せめて簡単な武器くらいサービスしてほしかった。
まぁ無い物ねだりしても仕方ない。幸いまだこちらには気づいていない様子なので、俺は背後から気配を殺して近付いていった。
よし、今だ。
俺は覚悟を決めて全力ダッシュ。その勢いのまま思いきりジャンプし、スライムに渾身の飛び蹴りを見舞った。
◇ ◇ ◇
結論から言うと、スライムは雑魚だった。
俺の先制攻撃でほぼ瀕死状態になり、〈自己修復〉するまもなく俺の追撃で絶命した。
スライムは死ぬと形状を保てなくなるらしく、どろどろに溶けてしまった。
そんな中、小さな球形のものだけが後に残った。
「何だこれは?」
・粘性生物の目玉
Q:粘性生物の目玉って?
A:粘性生物の目玉が時々落とすドロップアイテム。稀少度コモン(普通)
大した価値はなさそうだが、一応拾っておくことにした。換金できるかもしれないしな。
レイジ
種族:人間族(ヒューマン)(邪神)
レベル:1
スキル:〈神眼〉〈神智〉〈献物頂戴〉〈賜物授与〉〈死者簒奪〉〈物攻耐性〉〈自己修復〉
称号:神殺しの大罪人
「新しいスキルが加わってるな」
ステータスを確認してみると、スライムが持っていた二つのスキルが追加されていた。たぶん、〈死者簒奪〉というスキルのお陰だろう。
Q:〈死者簒奪〉って?
A:殺した生物が持っていたスキルを奪う。
そしてこのスキルこそが、俺が神の力を手にしてしまった原因でもある。
〈自己修復〉の効果を確かめようと、俺はワザと転んでみた。
擦り剥いた膝をじっと見ていると、ゆっくりとではあるが、確実に自然治癒以上の速さで治っていく。十分もすれば傷は跡形もなくなっていた。
どうやら人間でもちゃんと機能するスキルらしい。魔法のようにすぐに回復するというわけではないが、この効果はありがたい。
その後も俺は幾度かスライムに遭遇したが、危なげなく倒すことができた。
いずれも〈物攻耐性〉〈自己修復〉のスキルしか持っていなかったため、新しく加わったスキルはない。
五匹くらい倒したところでレベルが2に上がった。レベルアップ効果か、少し身体が軽くなった気がした。
「おっ、緑色のスライムがいる」
種族:グリーンスライム
レベル:2
スキル:〈突進〉〈物攻耐性〉〈自己修復〉
Q:グリーンスライムって?
A:スライムの亜種。スライムより数が少ない。
少しだけ稀少種らしい。
強さはスライムと大差なく、倒すと〈突進〉というスキルが手に入った。
「森だ」
二時間くらい歩いた頃、目の前に森が現れた。
・ファース南の森
Q:ファース南の森って?
A:ファースの南にある森。ゴブリンが棲息している。
「ゴブリンか……まぁ、なんとかなるだろ」
森を迂回するという手もあるだろうが、俺はあえて真っ直ぐ森を突っ切ることにした。
ゴブリンを倒せば、新しいスキルが手に入るかもしれないしな。それに可能な限り早くレベルを上げておきたい。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます