資料11 第11節
正礼暦二一一年○月○日
エイダ・プラウス記
私は幽霊が苦手だ。ラーヘルの話だと怖くないのに、幽霊の存在を気にしてしまうとどうしようもなくなる。ただでさえ図書館は暗い。静かすぎる。本棚の影から私の様子をうかがっているのでは? と思うと仕事に集中できなくなる。
そんな私を司祭様が心配してくれるのはうれしい。うれしいけれど!
なんで、後ろから話しかけてくるんですかね? 心臓が止まるかと思った。机に膝をぶつけて
それも全部、司祭様のせいなのに、なぜか私が叱られた。理不尽極まりない。
【土地/時期】
恐らく、グーベルク王国。時期は正礼暦五七年以降だと思われる。
根拠は薄い。三国戦争時にマンディがグーベルクに侵攻したのは前回で記述した通り。占領した土地はグーベルク王国の半分だと言われている。問題はそこから。一気に侵攻したため、統制が取り切れていなかったという学者もいる。そんな状態でマンディー第二王子の戦死。それとセックトンランドとの開戦。かなりのマンディ兵がグーベルク内で孤立したそうだ。中にはうまく占領統治していた軍もあったらしいが、ほぼ野盗化したことだろう。
そうなると狙われやすいのは、人目に付きづらい山村。例えば、ラーヘルの村。
【人物】
・ギル
トレバーの依頼で薬草を採取していた。戦争に参加していたと、再び語られた。
・ラーヘル
女性。幽霊。前向きで、明るい、女性。教会の教えでは死者の魂は天国に行き、神に仕えるとされている。そして天国に行けぬ者は邪なる者だという。死してなお留まり続けるラーヘルは邪だとは思えない。こんな事を口にすれば異端審問官が飛んでくるだろう。しかし、あえてこの記述を残す。彼女の名誉のためにも。
・トレバー
男性。商人。資料2参照。自分の店を持っている。ラーヘルが国境を越えたということは、トレバーはセックトンランドかマンディー在住? グーベルクとの国境が明確になっているのはこの二国だけだ。
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