資料6 第6節
正礼暦二一一年○月○日
エイダ・プラウス記
『妬み令嬢』! まさか! 劇場の演目で一番好きな話だわ! まあ、私が気に入ってるだけで一番人気にはほど遠いけど。
さらに驚きなのは、現在公演中の『妬み令嬢』の脚本家から話を伺えた事。まさかあの熊みたいな叔父が繊細そうな脚本家と知り合いとは思えなかった。
彼によると原典は吟遊詩人の詩で、誰の作なのかは不明。おそらく隣国のマンディ王国の人、らしい。
結局、大した情報は得られなかったが、逆に彼は私の調査に強い興味を持ったようだ。
【土地/時期】
脚本家の話から、おそらくマンディ王国ではないかと推測される。時期は不明。
戦場からさほど離れていない土地のはずだが、戦争なんて小さい戦いを含めたらいくらでもあるし、国が志願兵を募るのもざらにある。
聖女についても同様。マンディ王国で聖女の伝承は珍しくない。絞り込みは不可能。
【人物】
・ギル
ジャネットと面識があった模様。二人の会話に出てきた伯爵とは、第3節のブルーノであろう。
気にかかるのは呪い師の記述。呪われた三人の共通点から何かわからないかと期待したいが、現状での推測は妄想以外の何物でもない。
・パトリック
男性。吟遊詩人。『妬み令嬢』を現在に伝わる形に変えた本人。そもそも変更前があった事すら知る者はいない。彼の名は後世に残らなかったが、彼の『妬み令嬢』は今も語り続けられている。彼は満足出来たのかしら? 私なら……名前が残るより、私が書いた本が残る方がうれしいかもしれない。うん、きっとそう。
・ジャネット
女性。この土地の出、ではない。聖女と呼ばれていた。民に施しを与える事もなく、奇跡を行使する事もなく、一緒に悩み、汗をかき、泣いた。そんな聖女の話はマンディ王国に数多く残されている。全て別人だと考えられていたが、もしかすると同一人物の可能性が浮上してきた。彼女も呪いで歳をとらないなら十分あり得る。
当然、教会の公式見解では聖女だと認められていない。
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