資料4 第4節

  正礼暦二一一年○月○日

  エイダ・プラウス記


 第4節で出てきたクレイグという鍛冶師について文献をあさったけど、そんな鍛冶師がいた事実は見つけられなかった。しかし意外なところから彼の情報を聞くことができた。父に愚痴ったら、叔父、つまり父の弟が名匠に詳しいとのこと。それは初耳だった。叔父の話はやたら長かったけど重要な話が聞けた。おかげで剣を作る工程を聞かれてもすらすら答えられる自信があるわ。



【土地/時期】

 詳細な時期は不明。

 第1節時にギルが持っていた短剣の束頭の紋様は片面に金床で、裏面がユリの花だった。第4節でクレイグが作った剣と短剣の束頭は片面が金床とユリの花で、裏面がつば広帽だった。叔父の話からすると晩年のクレイグ作は金床とユリの花が同じ面に彫られており、それ以前の作ではありえないらしい。

 つまり、第4節は第1節より後、という事になる。

 そしてクレイグが拠点としていたのは、私がいるセックトンランド王国の街、ガーデリー。鉱山と鍛冶で栄える町だ。私のいる街からは馬車で一週間。一度行ってみてもいいかもしれない。


【人物】

・ギル

 傭兵ようへいとして戦争に参加していた? ここまでの人となりからすると戦争で戦えそうもない。戦う技術に秀でているようには感じないし、性格的にも無理そう。


・クレイグ

 男性。鍛冶師。事故で記憶に障害を負っていたらしい。それでも剣を作り続けていたのは鍛冶師としての本能なのか、約束への想いが強かったのか。若い頃はとりでで技を磨いていた。その頃に妻のリリーと知り合った模様。

 叔父の話によると有名なのはクレイグの剣であってクレイグ自身についてはほとんど知られていないらしい。彼の紋様のユリの花が奥さんを表していると教えたた大喜びしていた。その後、剣を手に入れたら高額で買い取らせてくれと詰め寄られて怖かった。私を古物商と勘違いしていない?


・リリー

 女性。クレイグの妻。さや職人。夫から忘れられるどころか別人と間違えられ続けても健気に支えていた。依存? それとも、これが本当の愛なのかしら? それを判断するには私の人生は浅すぎる。本人に聞いてみたいけど、きっと笑いながらこう言うでしょうね、『そんな難しい話じゃないわ』って。

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