第37話 島田は意外に本気を出してくる
三階に駆け上がったレディースクイーンは、自分の見通しが正しかったことを知った。
里佳はやはりもともと三階にいたらしく、そこにいたのはヤンキーどもがばらばらと数人。
「レディースクイーン、見参ッ!!」
レディースクイーンはまずカードを投げ、次いで奪った武器でヤンキーどもを仕留めていった。
里佳という司令塔をなくした三階のヤンキーどもを倒すのは簡単だった。
だが、レディースクイーンには気になることがあった。
階を上がるごとに、香の匂いが強くなっていく。
もう一度自分たちをも洗脳しようとしている? それとも……?
「レディースクイーン!」
レディース仮面が三階に上ってくる。
「レディース仮面! 陣内は……」
「トオルがやってくれました。他のヤンキーと一緒に、気を失って転がってます」
「そっか。――行こう、四階へ」
「ええ」
二人はゆっくりと階段を上る。
香の匂いがきつくなっていくことに、レディース仮面も気がついていた。
「…………今これだけ匂いがきつかったら、最上階は…………」
「だとすると岡部が危ない。急ごう」
うなずきあう二人。
だっ、と四階に駆け込むが、そこは闇の世界だった。
「!?」
シャー、シャーという音だけが響く。
「来たか、レディース仮面、レディースクイーン!」
島田の声がした。
「生徒会長直々にお相手とは光栄ね! 姿を見せなさい!」
レディースクイーンが叫ぶ。
暗闇の中から、シャーという音が迫ってきて――
「うっ!?」
スピードに乗って目の前に迫る凶器。
二人はとっさに身をひるがえした。
「ローラーシューズ……!?」
背後から音が迫る。
レディース仮面は音めがけて木刀を振るった。
「木刀クラッシャー!!」
「がふっ」
「あまりバラバラにならないほうがいいと思います、クイーン」
「――そうね。でもそれなら――」
レディースクイーンは自分に迫った音めがけて、カードを投げる。
「ぐあっ」
「レディース仮面! 最上階へ行きなさい!!」
「クイーン!?」
「岡部を救えるのはあなたしかいない!! わたしはここで決着をつけたらすぐに行く!」
「でも!」
レディースクイーンは何枚目かのカードを投げると、レディース仮面に微笑んだ。
「さっきはトオルに先へ行かせてもらったわ。今度はわたしの番よ!!」
「――。はいっ……!!」
階段を守っていたヤンキーどもに向かっていくレディース仮面。
「邪魔よっ! 木刀、クラッシャ――――――ッ!!!!」
三人ほどを木刀クラッシャーでなぎ倒すと、彼女はそのまま階段を駆け上がった。
「ずいぶんと献身的だな。そんなに生徒が可愛いか、先生?」
「そりゃ可愛いわよ。少なくとも授業に逆皆勤のあなたと違ってね!」
暗闇の中から、島田がようやく姿を見せた。
レディースクイーンは片手にカード、片手にさっきヤンキーどもから奪った木刀を握りしめる。
「来なさい!」
床を滑る音ともに、暗闇から次々にヤンキーどもが飛び出してきた。
レディースクイーンは木刀を振り回し、彼らの脛を叩く。
「ぐあっ!」
その様子を見ていた島田は静かに、右手に何かを握った――――
「ふっ!」
レディースクイーンに向けて突き付けたそれは、薄くとがったナイフだった。
なんとかして避けたレディースクイーンのマントが、ビッという音ともに裂ける。
「……あら、まあ……」
「殺すつもりはない。おとなしくさえすれば、悪いようにはせん!」
ナイフはレディースクイーンを的確に狙う。
広げたカードで攻撃を受け止めながら、彼女は次の一手を考えていた。
「へえ、意外に強かったのね。でも、おとなしくするつもりはないけれど!」
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