第14話 本物はニセモノと対峙する
その時、窓の下で声がした。
「レディース仮面、参上ッ」
「!」
二人は同時に窓から顔を出し、下に目を向ける。
そこにいたのは――――
「ニセモノだ!」
「行きましょ、新聞部!」
「い、行ってどうするんですかっ!?」
「こいつはニセモノですって記事が書けるでしょ!」
「あっ、なるほどっ」
バタバタと二人は階下を目指した。
現場では、生徒がすでに一人倒れていた。
「また罪もない人を……!」
美幸が歯噛みする。
目の前にいる【レディース仮面のニセモノ】は、不気味な笑いを顔中に浮かべて木刀をもてあそんでいた。
視線が美幸たちに移る。
「あっ……」
狙いをつけられた、と賢が察したが、手が震えてうまくスマホが起動できない。
「く……来るなら来なさいよっ、ニセモノっ! あんたなんかに負けないんだからねっ!」
美幸は精一杯の虚勢を張るが、やはり足は震える。
レディース仮面…………! と、彼女がつぶやきかけたその時だった。
「あははははははは!」
あたりに高らかな笑い声が響いた。
「そんな風体であたしの名を騙ろうなんて片腹痛いわね!」
「こっ……この声はっ!」
賢が目をキラキラと輝かせる。
「本物のレディース仮面はこのあたし! ニセモノにはとっととご退場いただこうかしらねぇ!」
建物の陰からレディース仮面が木刀片手に現れる。
「レディース仮面だ――――!!!!」
賢はがぜん元気になり、スマホでパシャパシャと写真を撮りまくる。
だが、美幸は落ち着かなかった。
興奮している賢は気がついていないが、明らかにレディース仮面の息は上がっている。
体調が本調子でない中、ニセモノをどうにかするためにわざわざやってきたに違いない。
よく見れば脂汗だか冷や汗だか判然としないものも流れているように見える。
「…………」
美幸は祈るように指を組んだ。
「オマエ……ガ、レディースカメン……」
「そうよ。そのダッサい衣装、それでよくまああたしの名前を名乗れたわね」
ダッサい衣装はお互い様だとは思うけれど、と美幸はつぶやきそうになったが、いまの問題はそんなところにはない。
「ニセモノは必要ない。今までも、これからもね!」
レディース仮面は木刀を構えた。
ニセモノも木刀を振り回す。
がつ、がづっ、と、何度か木刀同士が交差した。
腕前からするとたぶん本物のほうが上のはずなのだが、受け止めるので精一杯の様子だ。
「やっぱりまだ、体調よくないんだ……」
美幸はハラハラしながらその行方を見守る。
ニセモノの木刀が、本物の頬をビッとかすめた。
「!」
口から血がしぶく。
ぐいと拭き、木刀を構え直す。
がづっ――――何度目かの交差。
よろりと、レディース仮面が揺れる。
「危ないっ」
美幸は思わず叫んだ。
体勢を崩したレディース仮面の頭上に、ニセモノの木刀が振り下ろされる。
レディース仮面は上段の構えで木刀を受け止めると、そのまま自身の木刀を滑らせた。
「ぼ……くとう、クラッシャ―――――!!!!」
ニセモノのみぞおちに、レディース仮面の木刀がめり込む。
「やった――――ッ」
賢が歓声を上げる。
「カ……ハッ……」
ニセモノはそのまま仰向けに倒れた。
だが、レディース仮面も膝をついたまま立ち上がれない。
「…………っ…………」
肩で息をする。
「早く……この、人……保健室に……」
「わ、わかったわっ。新聞部! 手伝ってっ」
「は、はいっ」
ニセモノを引きずって、美幸と賢は校舎の中へ消えた。
「…………」
レディース仮面は深呼吸を繰り返す。
身体が熱い。
熱がぶり返したに違いない――――
早く引き下がろうと彼女は思ったが、そうは問屋がおろさなかった。
「せっかくの駒を台無しにしてくれた礼をしなくてはな、レディース仮面」
藤山……!!
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