第2話 日常

「あづーい」

「うるせぇ、そんなこと言うなよ」

悠翔の声に余計に暑くなるだろ、と正樹はよれよれのシャツを捲りながら言う。

「事実、暑いじゃん。過去最高気温だって言ってたし」

悠翔は携帯型扇風機を取り出して、空を仰いだ。

「そんなん毎年言ってるじゃん。信憑性に欠けるね」

えー、でもさぁ……と悠翔が反論しようとした瞬間

「永久はどう思う?」

話を振られた。

「いや、別に」

「別にって?」

言葉が足りなすぎたようだ。正樹が怪訝そうに聞き返した。

「そこまで暑くはないから、別に」

「嘘。永久って人間?」

悠翔は心外だと言わんばかりにこちらを見た。

「化け物」

自分で言うか、と正樹は笑う。悠翔もつられて笑った。

生暖かい風が吹き抜けていく。

「このまま、生き延びられたらいいな」

正樹の呟きに悠翔は賛同した。

そりゃあ、そうか。普通はそう思うんだろうな。

でも、僕は………………

「今すぐにでも、死にたいよ」


「は?」


飛行機が飛んでいる。爆発音がどこかで響いた。僕らは______僕以外の人間は______いつでも死ねる準備が出来ている。

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