第11話 樹ー主人公の理由


「俊平、アビリティの講習やってるから迎えに来たっぜぃ。」


俺と佐之助は中庭で騎士や侍女に囲まれておままごとしている俊平に声をかける。


「樹くん、佐之助も! ありがとう、でも、イルシオとネマを置いていくわけには………」


くまの人形を手に持つ俊平。

言語を理解させてくれる指輪のおかげで王子と第二王女の言葉がわかるから、おままごとなんてできるんだろうな。


王子と第二王女はイルシオとネマ。

俊平は名前を呼び合う程度には仲良くなっているようだ。

身長が同等だったが故にできた人脈チート。


俊平らしいな。こうしてみると、やはり主人公の素質がある。



「じゃあこの際、イルシオ殿下とネマ姫殿下には一緒に授業に参加してもらっちゃいましょう。お二方の集中力が切れたら、俊平も一緒に退場して、後で佐之助からどんなことをしていたのか、教えてもらうってことで。」


と、提案してみる。


「え!? 俺っちが!? まあいいっぜぃ」


佐之助はなんだかんだで俊平に甘いからな。

とはいえ、俊平にも力はつけてもらいたい。

主人公として、自爆に頼らない能力を身につけてもらわないとな。



「しゅんぺい、いっちゃう、です?」


したったらずに俊平の服の袖を摘むネマ姫殿下。


「もっとあそぶ、です」


と、上目遣いで俊平を見上げる。天使。


俊平も、なんというか(^﹏^ )こんな感じで笑ってるのに口元をもごもごさせながら俺と佐之助を見た。

気持ちはわかる。


「俊平をここで遊ばせていた方がいい気がしてきた」

「困るよぉ………」



俊平も困惑している。

俊平だって、本当は魔法の授業を受けたかったはずだ。

なのに、イルシオ殿下とネマ姫殿下に付き合って、おままごとなんてやっている。

あまり流されすぎは感心しないが、あの天使の笑顔を曇らせると思うと、俊平と一緒にしていた方が良さそうな気にもなる


「ネマ、しゅんぺいはお仕事にいかないといけないんだ。見送ってあげよう」


そこで、その泥をかぶる役目はイルシオ殿下が被ってくれた。


この子、もしかしなくても大人の感情を読むのが上手だな?


俊平はどうしても俺たちのクラスには必要な人間だし、自分たちだけで独占していいものではないことも分かっていたはずだ。


でも、歳の近そうな俊平と友達になれて嬉しくても、俊平は勇者として召喚されている。


「しゅんぺい、また来て」

「うん。イルシオとネマも、兄妹仲良くね」

「はいです!」

「うん」


結局、俊平とお別れしたイルシオ殿下とネマ姫殿下。

寂しそうに手を振って分かれた。


後ろ髪引かれながらも、中庭を後にする。


「俊平、王子とよく仲良くなれたな」

「困ってたところで、トイレに連れてってくれたからね」


やっぱり、仲良くなったのはあの時か。


「同い年くらいだと思ったんだろうっぜぃ」

「だよね………。はぁ、身長が欲しい。」


と、ため息をつく俊平を、二人して宥めた。

高校生になったらそれなりに伸びるでしょ。俊平は成長期がおそいんだろうな。


「あ、でもね、昨日、トイレに行った時に、イルシオの秘密基地に案内してもらったんだけど」


慰めていると、唐突に俊平が切り出してきた


「お、なにその面白そうなイベント。」


木の上にある子供の秘密基地に案内される俊平を想像してほっこりしちゃうよ、俺は。


「気になるでしょ。その秘密基地なんだけど、禁書庫だったんだよね」


と、特大の爆弾に火をつけやがった。このおチビちゃん。


「ぶーーーっ!!!」

「おまっ、このっ、おいっ!」


召喚1日目、それに召喚30分程度で禁書庫にたどり着くってどういうことなの!?


衝撃的すぎて日本語忘れちまったじゃねえか!!



「入れんのか? 禁書庫なんて………」


恐る恐る聞いてみた。すると


「イルシオも普通に入ったわけじゃないよ。魔法的な施錠がされてるから、扉からじゃ入れないんだけど、開かずの禁書庫の隣に物置があるんだって。そこのタイルを剥がしたら、子供なら通れるくらいの通気口があったんだぁ」


ああ、これか、チビの俊平が主人公の理由!!


低身長のミニマムサイズで無ければ通れない抜け道。


「初めて自分のサイズに感謝したよ。僕がギリギリ通れるくらいの通気口だからね。」


それで通気口を通って禁書庫に侵入ってか。


子供とは言え、王子が勝手に入っていい場所じゃなさそうだ。

しかも、完全部外者である俊平に見せるなんてもってのほかだ。


「なんか収穫とかあったのか? 昨日だったら文字読めないだろ」


「まあね。でも、指輪を持ってたのがイルシオだけで、ネマは持ってなかったから、トイレの後に案内された秘密基地の間も、ネマとイルシオ二人と会話するために僕が指輪を預かってたんだよ。まあ、必要なかったけど」

「というと?」

「禁書庫でイルシオが目をつけていた本がね、日本語で書かれていたから。それらを読むために、イルシオは宝物殿に忍び込んで翻訳の指輪を盗ってきていたって。」


ほう。

数百年ぶりの召喚と言ってたし、先代の記録かな?

でも、王子の行動力すげえな。悪い子かよ。


「古代魔法の実験の記録だった。強くなるために必要なことが書いてあるって。」


「ほむ。俊平、要点だけまとめて話すことはできるか?」


「ちょっと待って…………。うん。出来そう。」


ギュッと目を瞑って眉間に右手の第一関節を当て、しばらく考えた俊平は、パッと手を離してこちらを見上げた。


「よし、詳しく。」


「ステータスの項目にあった【通力】っていうのは、魔法と違って、スキルを使うための項目みたいでね、魔力がへそ、丹田に集中しているのに対して、通力ってのは血液やリンパに中に流れているものみたい。通力は基本的に自分の意思で動かせないから、魔力を血液の流れに沿うように操作することで、通力と魔力を一体化させて、よりつよい魔法やスキルが放てるようになるって書いてあった。魔力と通力を同時に使うことは【通魔活性】って名付けたみたい。」


まじかー………。

マジで要点だけまとめてある。

姫様が言っていたスキルの話とも一致するし、かなり有用性の高い情報だろう。


「俊平、お前凄いな。どうせ本当は分厚い本かなんかに書いてあったんだろう」


「うん。初代? 先代の? 勇者の実験記録がついた日記帳みたいだったよ。魔力や通力を感じるために、魔族を生捕りにして拷問して聞き出して、試して、どちらの力も空っぽにして、何処に力の源があるのか手探りで探っていた手記だった。」


「よくそれでそこまでまとめたな。けしかけた俺が言うのもなんだが、教師に向いてると思うよ。」


「えへへ、そうかな」


てれてれとほおを掻く俊平。

照れる姿は完全に小学生の少年だ。


「でも、本来は魔力や通力を空っぽにしてからじゃないと感じられなかった古代魔法の片鱗を、手記のおかげでショートカットできるよ」


「俊平、俺っちはお前が親友で心からよかったっぜぃ!!」


「ぴゃーーー!!」



佐之助に振り回される俊平も、何処からみても小学生だった。




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