第81話 アンデッドの弱点
「ひ、一先ず私がこれを防ぎます! 貴方は何とかアイツに攻撃を」
防御魔法を展開するマリーに頼まれながら、どうすれば変貌してしまったベルナルド伯爵を倒せるか考える。
先ず、相手とは距離がある事と、魔法による範囲攻撃を行なってくるので、クリスは攻撃に不向き。
シャルロットは元より攻撃手段を持たないので、僕の魔銃による攻撃か、レナさんの風の魔法による攻撃しかないだろう。
だけど、いずれも重力魔法で無効化される可能性が高い。
「シャルロット。この周囲の闇色の物に触れると、どうなるか分かる?」
「魔力の感じからして、毒ですね。吸い込むだけでなく、皮膚からも体内に侵入されそうです」
「とりあえず重力ではないんだ」
「えぇ。あれは伯爵の周囲にのみ展開されています」
という事は、さっき使った放物線を描いた攻撃は有効って事か。
その上、相手はアンデッド。
光属性や火属性が弱点っていうのが定番中の定番だから、直撃させる事が出来れば、倒せるんじゃないかと思う。
ただし、爆風ではなく、炎を。
その為には、先ずここから出なくちゃいけないんだけど、
「魔法の効果が長いね」
「そうですね。……って、マズいです! カーティスさん! これ、どんどん広がっていって、街全体を覆うんじゃ……」
狙いは僕たちだけじゃなかった!?
僕たちの足止めだと思っていたら、街の人達全員が狙われていたようだ。
「君たち。あの父の成れの果てが拡散しているのは毒だと言ったね。という事は、あの魔法を受けてもすぐには死なないという事だろうか」
「ま、まぁ、即死ではありませんが……何をされる気ですか?」
「俺が一太刀浴びせてくる。これでも俺は、元々剣士なんだよ。君たちが魔法の使い手ばかりだと知って、父の闇魔法を借りてしまったけどね。……父の不始末だ。息子である俺が責任を持って終わらせよう」
そう言って、止める間も無く息子さんがマリーの張った防御魔法から飛び出て行ってしまった。
無謀と言えば無謀かもしれないけど、責任を感じての事だろうし、何より直ぐに死なないというのは、その通りだ。
「よし。じゃあ、僕も……」
「バカな事を言わないでください! あの方は剣士と言うだけあって体力があります。ですから、多少は動けるでしょうが、結局重力の効果で……いえ、そこまで行き着く前に動きが鈍くなり、辿り着けていません」
「そ、そんなに強力な毒なのか。街の人達の為にも、早く何とかしなきゃ」
とりあえず、息子さんを助ける事も考え、レナさんにこんなお願いをしてみた。
「分かりました。私の魔法で、この毒の霧みたいなのを上空に吸い上げますね。……トルネード!」
レナさんが風の魔法を使い、黒い靄を上空に吸い上げ……上がってない!?
「ど、どうして? 魔法はちゃんと発動したのに」
「おそらく、この黒いのは空気の流れではなく、魔力の流れで動かさないといけないようですね。レナさんが竜巻を発生させた箇所からは、黒い物が一時的に消えました。……すぐに新たなのがやってきましたが」
つまり、この毒をどうにかするには、伯爵を倒すしかないという事か。
だけど、さっきのレナさんの魔法を見て、思いついた事がある。
試した事は無いけど、やってみる価値はあるはずだっ!
「マリー。悪いけど、もう少し防御魔法の維持をお願い。あと、レナさん。ただの風を起こす魔法ってある? ……こういう事を試してみたいんだけど」
「……風を起こす魔法は使えますが、それは大丈夫なのでしょうか? 先程は凄い衝撃でしたが」
「たぶん、大丈夫だよ。爆風を抑えるような弾にするから」
一先ずやりたい事を伝え、僕も魔銃に魔力を込めたので、マリーの防御魔法から銃の先だけを出すと……撃つっ!
今回は真っ直ぐにベルナルド伯爵に向かって撃ち、
「ウインド・ストリーム」
レナさんが僕の放った火の弾に向かって魔法を使う。
お願いした通りに、レナさんの風の魔法で火の弾が上昇して行き、伯爵の周囲の重力と合わさって、真っ直ぐ飛んで……見事に命中した。
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