第80話 ネクロマンシー

 レナさんが今度こそ僕らと一緒に行動する事になった。

 あと、ベルナルド伯爵の息子さんが騎士団に自首し、自らが行った事を告白すると言っているので、これで一先ず収束かな? と思っていると、


「え……そんな!? レナさん! 防御魔法を! 早くっ!」

「え? シャルロットさん? ……ウインド・シールド」


 シャルロットの言葉で、レナさんがキョトンとしながらも、とりあえず防御魔法で僕たちを覆う。

 その直後、防御魔法の周囲が暗い闇で覆われる。


「シャルロット!? これは!?」

「おそらくですが、魔力の内容から考えて、ネクロマンシー……つまり、ベルナルド伯爵がアンデッドとして復活したのではないかと」

「その通りだ。流石はシャルロット。本当はお前を使い、この魔法ではなく、転生魔法を手に入れるつもりだったのだが……まぁこれはこれで良しとしよう」


 背後から、首をはねられたはずのベルナルド伯爵の声が聞こえてきた。

 慌てて振り向くと、ベルナルド伯爵の身体が倍ほどに大きくなっており、顔も、服から見える手足も骨になっている。

 見た目は巨大なスケルトンのようだが、手にした杖が闇色に輝き、何かの魔法を使おうとしているようだ。


「全員、一旦下がりましょう! レナさんは防御魔法を維持しながら下がって! 防御魔法がなければ、こいつの近くに居るだけで何らかの状態異常を受けます!」

「……アース・ホール」


 マリーがベルナルド伯爵の足下に大きな穴を開けるが……落下しない。

 どうやら、宙に浮いているらしく、ゴーストに近いのか?


「……グラビティ・プレス」


 ベルナルド伯爵が何かの魔法を使うと、身体が真下に引っ張られるかのような強い力を感じる。

 どうやら、先程までの名前を知っているとか知らないといった魔法ではなく、ここに居る全員が一度に同じ効果を受けているようだ。


「アンデッドになって、魔力が大幅に増えています。これも、小細工無しに大量の魔力を費やした力業……周囲全てに先程よりも遥かに強力な重力魔法を使用しています!」

「何とかしないと……これは、マズい!」

「はい。このまま重力が増していくと、潰されてしまいます」


 何とか、この重力魔法の範囲から抜け出さないと……だけど、どうすれば。


「……ウインド・バリア」


 マリーが風の魔法を使い、レナさんの防御魔法を強化する。

 そうか。マリーは色んな魔法が使えるから、前にもこんな魔法を……そうか。

 前と同じだ!


「マリー、レナさん。防御魔法の範囲を、僕のギリギリすぐそばまで小さくして!」

「何をする気なんですか!?」

「いいわ! このままではジリ貧だし、やるわよっ!」


 マリーが防御魔法を小さくし、少し遅れてレナさんも。

 僕のすぐ目の前に球状の防御魔法の端があるので、火の魔銃の銃口をその外側へ出し、火の弾を撃つ!

 火の弾も重力によって、すぐに地面へ落下し……僕が込めた魔力に従い、大きな爆発が起こる。


「カーティスさん!? 無茶苦茶過ぎます!」

「そ、それより防御魔法の維持を……」

「大丈夫よ。だけど、前に一度私がした時よりも、かなり強引ね」


 風の防御魔法に包まれた僕たちは、まとめて爆発によって吹き飛び、重力の範囲の外へ。

 前にマリーが使った手を、爆風で再現したけど、上手くいって良かった。

 とりあえず、これで普通に動けるから、仕切り直しだ!


「ライトニング・ボルト」


 防御魔法を解いたマリーが、ベルナルド伯爵に向けて雷魔法を放つ……が、その遥か手前で雷が地面に落ちる。

 さっきは、同じ魔法が重力の影響を受けなかったのに! というか、雷や魔法に重力なんて影響するの!?

 それだけ魔力が膨大なのかもしれないけど、だからと言って放っておく訳にはいかない!


「ふっ。そんな方法で我が魔法から逃れるとはな。だが、こうなってしまった以上、シャルロットは不要! 私の事を知るお主ら全員には消えてもらおう」


 その直後、再びベルナルドの杖が闇色に輝き、


「皆さん、こっちへ! 今、向こうが使おうとしている魔法は魔力を大量に使う分、小回りが効きません! この位置であれば、マリーかレナさんの魔法だけで防げます」

「お姉様、では私が! ウインド・バリア」


 シャルロットの言葉で移動し、マリーが防御魔法を使う。

 少しして、


「ダーク・ブレス」


 闇色の何かが僕たちの周囲を覆った。

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