第79話 事の顛末……?
「えっ……!?」
目の前で突然起こった事が理解出来ず、唖然としていると、
「カーティスさんっ! 下がってください!」
シャルロットの声が響き渡る。
気付けば、目の前に血の付いた剣を持つ男……ベルナルド伯爵の息子が居た。
つまり、さっき伯爵を斬ったのは、この人!?
「アンタ、本当はカーティスって名前だったんだな。通りで魔法が効かない訳だ」
「お兄ちゃんっ!」
クリスが慌てて駆け寄って来た所で、
「悪かった。このバカ親父が、また何か悪事を働いていると思い、その重要人物っぽいアンタらを殺して、それを止めようとしていたんだ。申し訳ない」
息子から深々と頭を下げられてしまった。
「えっと、息子さんは伯爵が何かを企んでいるのを知っていて、それを止めようとしていたって事?」
「あぁ。だが、詳しい事までは分からず、レナと共に居るアンタたちもバカ親父側だと思っていたんだ。親父は常に大勢の冒険者を護衛に雇っているから、手薄なアンタたちを狙ってしまった」
つまり、ベルナルド伯爵が言っていた、問題がある義息というのは嘘で、伯爵自身に問題があったという事か。
まぁ伯爵からすれば、自分の悪事を継いでくれないという意味で問題なのかもしれないが。
「で、レナはその伯爵の命令で、カーティスに近寄ったっていう訳ね? 何となく嫌な予感がして、ずっとご主人様って呼んでいたけど、大正解だったわ」
「……すみませんでした。しかしながら、所有者の命には逆らえなくて。一応、伯爵に直接攻撃される事とならないように、私がカーディさん……いえ、カーティスさんを懐柔したかったのですが、それも上手くいかなくて」
まぁ、レナたちが所有者の命に従うしかない事は、マリーの時に分かっているからね。
だからか、マリーも責めるつもりは無いようだし、僕もそれについては言わないでおこう。
「ところで、行動Dっていうのは?」
「ベルナルド伯爵から事前に指示されていた行動です。予め条件を指定する事によって、直接命令しなくても、私の行動を指定出来るようでして」
そんな事も出来るんだ。
おそらく、レナが突然息子さんを蹴り飛ばしたのも、何らかの条件を満たしたからなんだろうな。
あの状況から推測すると、闇魔法の事について話そうとすると、止められるって事かな?
「……あの、さっき使っていた闇魔法は?」
「あれは、このバカ親父が研究していた事なんだが、弱化や状態異常に特化した闇魔法で、相手の名前を知っていれば、確実に魔法を成功させられるという魔法なんだが、まぁ……こう言っちゃなんだが、魔法っていうより呪いみたいなもんだな」
僕自身は闇魔法を使う事は出来ないけど、身体能力を下げたり、眠らせたりっていう類の魔法は、相手が魔法に抵抗するから、使用しても効かない事があるっていうのは聞いた事がある。
それが必ず成功するっていうのは、確かに凄いかも。
まぁ、名前を知られなければ良いんだけどさ。
「……あれ? そういえば今、魔法の話をしたけど、レナさんは何も……」
「おそらく、ベルナルド伯爵が亡くなった為、指示が無効になったのかと」
「じゃあ、今のレナさんは所有者が居なくて、自由になれたの?」
「いえ、元より伯爵の息子さんが共同所有者となっておりましたし、その、伯爵にとどめをさしたのも息子さんなので、私の所有者は息子さんかと」
なるほど。ベルナルド伯爵を止めようとしていたみたいだから、レナさんに変な事をさせたりはしないだろうけど……さっきの謝罪を聞く前ならともかく、今はもう僕から攻撃は出来ないかな。
「確かに、レナは私が所有している事になるかと思う。だが、私には過ぎたる存在だろう。街の者たちにも迷惑をかけているし、レナは君に任せたいと思う」
「えっと、僕にレナさんを預けるという事ですか?」
「いや、そうではない。完全に譲る……つまり、所有権を君に渡そう」
「え……?」
「レナは風の魔法を使うだろう? 君と一緒に色々な場所を見て回った方が良いだろう」
そう言うと、レナさんがお世話になりますと言いながら、抱きついてきて……
「……お兄ちゃん」
「貴方。鼻の下が伸びているわよ」
「カーティスさん。やけに嬉しそうですね」
僕としては、レナさんが自由になれて良かったと思っていたんだけど、何故か三人の女性たちからジト目を向けられてしまった。
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