第82話 再来

「命中はしたけど……シャルロット、どう思う?」

「……闇魔法の黒い靄が少しずつ消えていきます。ベルナルド伯爵の魔力も消失しておりますし、倒したと思って良いかと。流石、カーティスさんです」

「そっか。良かった……けど、それより先ずは息子さんを助けなきゃ!」


 防御魔法ごと移動してもらい、まずは倒れている息子さんのところへ。

 マリーが治癒魔法を使い、体力を回復させたものの、毒は消えていないのだとか。

 面倒な魔法を……とりあえず、ゴミ錬金スキルを使い、毒消ポーションを作って飲ませると、


「おぉ、君は薬を作る事が出来るのか」


 無事に息子さんが回復した。

 一先ず多めに毒消ポーションを作って渡し、街の人で体調が悪いという人が居たら使ってもらう事に。

 少しして靄が消えので、伯爵が居た部分に近寄り……焦げた地面があるだけで、何も残っていなかった。


「あの、伯爵は僕が……」

「いや、元々死んでいたんだよ。君が気に病むことはないさ。今の俺にはお礼と言えるものは無いが、必ずお礼はさせて貰うので、いつかまたこの街へ立ち寄ったら、ぜひ俺のところへ来て欲しい」

「分かりました」


 そう言って、街の様子を見てくると言い、ポーションを持った息子さんが何処かへ姿を消したところで、


「貴方。あれは何かしら? ほら、私が空けた穴の中」


 マリーが指差す先に闇色の何かがある。

 レナさんが風魔法でゆっくりと降ろしてくれたので、近寄って見てみると、ベルナルド伯爵が使っていた杖だった。

 一先ずゴミスキルでストレージに入れておき、穴から出ると、マリーに穴を埋めて貰う。

 これで、後は息子さんが何とかしてくれるだろう。

 まだ街は混乱しているけど、次の……


「じゃないや。僕たちの目的地は、クリスの家だったね」

「そうだよっ! お兄ちゃん、色々あったから仕方ないかもだけど、一番大事な事なんだからねっ!」

「とりあえず、もうクタクタだから、宿を探そう」


 街の大通りは未だ混乱が続いているようなので、街外れの小さな宿へ。

 もう誰が何処で眠るかとか何て事を気にせず、そのまま皆でベッドへダイブした。

 ……はずなんだけど、朝になると皆が僕に抱きついているのは、何故なのだろうか。

 特にレナさんは、僕の左腕を抱き枕にして眠っているから、柔らかい何かに挟まれていて……み、身動きがとれない!


 暫くしてから、皆が起き出して動けるようになったけど……皆、どういう寝相なの!?


「お兄ちゃん! 今日はいよいよ、クリスのパパとママに挨拶だからね? 身嗜みをしっかりチェックしてね」

「……あの、クリスさんのご両親は、そういう所を気にされる方なのですか?」

「え? 分かんないけど、身嗜みが悪いよりかは、良い方が良いよね?」

「それはそうかもしれませんが、普段のカーティスさんの、そのままを見ていただくという考え方も……」


 な、何? クリスとシャルロットは何の話をしているの!?

 そんな二人を他所に、何かを察したレナさんが、メイドさんとして僕の髪の毛や服を整えてくれているんだけど、気合いが入り過ぎじゃない?

 暫く色々されてから、ようやく宿を出て、クリスの家に向かう。


「ここから先が、獣人たちの住むエリアなの。あと少しだよ、お兄ちゃん!」


 なんて言うか、初めてクリスと出会った場所に似ている気がする。

 ここまでと街の雰囲気が少し違い、下町というか、立ち並ぶ家の質が悪くなったというか。

 獣人が良い扱いをされていないのかと、少し悲しく思っていると、


「カーティスさんっ! 危ないっ!」


 突然シャルロットに飛びつかれ、横に倒れる。

 その直後、目の前の古い家に氷の塊がぶつかった。

 その直後、マリーの心底嫌そうな声が聞こえ、


「アンタ……まさか、こんな所までやって来たの!? 相当しつこいわね」

「迎えに来たぞ、マリー。さぁ、俺と一緒に帰ろう。俺がそいつから助け出してやる!」


 その直後に、幾度となく聞いた、よく知る声が聞こえてくる。


「……あ、あの。何だか、凄く訳ありな感じなのですが、あちらの方はどなたでしょうか」

「あー、レナさんは初めて見ると思うけど……俺の弟なんだ」


 不意打ちで背後から攻撃魔法を放ってきたのは、残念ながらジェームズだった。

 

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