第58話 ゴミ再生スキル
「お兄ちゃん? どうかしたの?」
「え? あ、あぁ、新しいスキルが使えるようになったみたいだから。とりあえず、修理した短剣を出すね」
「う、うん……って、お兄ちゃん? ストップ、ストップ! 多過ぎるよっ!」
一先ず、修理した数十本の短剣を出した所でクリスに止められてしまったので、一旦そこで止めて、僕は新しいスキルを確認してみる事に。
「≪ゴミ再生≫」
――生成する物をイメージしてください――
イメージしてください……って、イメージ!?
選んだりする訳じゃないんだ。
じゃあ、今作ろうとしている短剣をイメージしようと思うんだけど、僕の中で短剣と言えばクリスが使うイメージだから、小さめで、軽くて、でも丈夫で……刀身が細長い感じかな。
あと、クリスの小さな手に合わせて、柄が細めで、でも握り易くて……何となく、イメージ出来たかな。
……あれ? イメージしたよ? しましたよー?
生成する物をイメージしたのに、何も起こらず困惑していると、
「カーティスさん。一先ず、この中から最も形が近いと思われる三本を選出致しました。全く同じという訳ではありませんが、それなりに似ているとは思います。ただし、いずれも銘が刻まれているので、このまま提出するのは難しいかと」
「あ、そっか。修理スキルだと、元々の状態に戻すから、銘が刻まれた短剣だと、その銘も復元させちゃうのか」
「いかがいたしましょうか。無理だったと、お断りしますか?」
「ちょ、ちょっとだけ待ってね」
シャルロットが大量の短剣の中から似ている三本を選び出してくれたけど、そもそもこの方法ではダメだという事が分かった。
だけど、こっちの――ゴミ再生スキルだと上手くいきそうな気がするんだけど、どうしてイメージしたのにスキルが発動しないんだろう。
……って、そうか。この、作りたい物をイメージした状態でスキルを発動させろって事か。
「≪ゴミ再生≫」
改めて使用すると、僕の掌の上に、思い描いていた通りの短剣が現れた。
「えっと、これならどうかな? 銘が入っていないし、たぶんだけど、同じ物が作れると思うんだ」
「お兄ちゃん、凄ーい! 確かにどこにも銘は入ってないけど……でもこれ、デザインは可愛らしいけど、全然斬れないよ?」
「えっ!? どうして?」
「どうしてって言われても、形は短剣だけど、刃が無いもん」
あ、そうか。本当にイメージした通りの物が出来てしまうのか。
そういえば、大きさとかばかり気にして、そういう所って全然考えてなかったよ。
「シャルロット。この大量にある短剣の中で、一番切れ味が良いのがどれかって分かったりする?」
「一本だけで宜しいのであれば……これですね。研ぎ幅が広く、刃厚が薄く仕上がってますね」
「ありがとう。ちょっと見せて」
シャルロットから受け得取った短剣の刃の部分をじっくり見て、先程描いた短剣のイメージを修正していく。
「≪ゴミ再生≫……今度はどうかな?」
「うん、凄いよ! 物凄く良く斬れる」
クリスが工房にあった、試し斬り用の草の束をスパスパ斬っている。
「カーティスさん。では、あとは銘を入れるだけですね」
「そうだね。けど、偽名でも名前を入れるのはちょっと抵抗があるんだよね……そうだ! こんなのでどう? ≪ゴミ再生≫」
クリスに渡した短剣と全く同じ短剣を、でも峰……っていうのかな? 柄の近くに「CCC」という文字を入れてある。
「お兄ちゃん。このCCCって、どういう意味なの?」
「えっと、カーティス、クリス、シャルロット……全員、イニシャルがCだからね。銘はニックネームでも良いって言っていたし、三人で作った武器という事でこういう風にしてみたんだ」
「カーティスさんに作っていただいた物に私の名前も入れていただいて、とっても嬉しいです!」
そんな話をしながら、同じ物を三本作った所で、
『ふーん。私は除け者なんだ。いいもん。私なんて……私なんて……』
「マリー!? ご、ごめん! 除け者にしていた訳じゃなくて……マリーっ!」
カード形態のマリーが拗ねてしまったので、「CCCM」に変えると伝えたんだけど、もう三本あるからと断られてしまった。
マリーがカード状態になれるのは便利だけど、人目の無い時は人型に戻ってもらおうか。
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