第57話 鍛冶ギルド加入テスト
「お、ギルド加入希望者か? ウチは難しい事は言わねぇ。短剣が一本打てるかどうか。条件はそれだけだ」
「え? それだけで良いんですか? 使う材料の報告とか、定期的に一定の納品をしなきゃいけないとか……」
「ねぇよ、そんな面倒な事。製薬ギルドみたいに分量を少し間違えると、大きく効果や効能が変わる薬と違って、鍛冶なんて力加減や火の温度、火に入れるタイミングや、何ならその日の天気でも、微妙に完成品に差が出るからな。それに、新品の武器や防具を毎日必要とする奴なんて、ほぼ居ないだろ」
言われてみれば、それもそうか。
というか、毎日買い換えないといけないような武器だったら、商品として成り立たないよね。
「とゆー訳でよ。もしウチのギルドに入るなら、そこの工房に入って短剣を三本作ってくれ。その中から一番良いと思えるものを俺が選定しよう」
「同じ短剣で良いんですか?」
「あぁ、勿論だ。あと、材料や必要な道具は、中にある物を好きに使ってくれて良いし、工房の中の様子はこちらから分からないようになっているから、安心してくれ」
「え? 作るの様子をチェックしたりもしないんですか?」
「そんな事する訳ないだろ。鍛冶スキルの有無にかかわらず、作り方は鍛冶師の財産だ。普通、自分の弟子以外には教えないもんだよ。だから、そっちの女性やお嬢ちゃんと一緒に打つっていうのも勿論アリだ」
なるほど。言われてみればその通りだけど、これはゴミスキルで装備を作ろうと思っている僕にとっては願ったり叶ったりかも。
「じゃあ、作ってきますね」
「おぅ。終わったら、作った物に自分の銘を刻んで持って来てくれ。それで問題なけりゃ、鍛冶ギルドのメンバーだ」
「銘……ですか?」
「あぁ、普通は作った武器に自分の物だと分かるようにする為の銘を刻むんだよ。でないと、誰が作った物か分からないからな。あ、別に名前でなくても、自分が打った物だと分かるなら、マークやニックネームでも構わんぞ」
「わかりました。では、部屋をお借りしますね」
そう言ってクリスとシャルロットの三人で部屋に入ると、
「銘だって。どうしようか」
「そこは、カーティスさんの名前で良いのではないですか?」
「うーん。でも、そうは言っても、本名を入れる訳にはいかないよね? 僕は死んだ事になっている訳だし」
「あー、確かに。でも、これから鍛冶ギルドに偽名で登録するんですよね? その名前で良いのでは?」
「あ……そういえば、偽名を考えてなかった。じゃあ、僕は……カーディくらいにしておこうかな。クリスはどうする?」
僕は適当に決めたけど、クリスとシャルロットが中々決まらず、暫くしてから、
「じゃあ、クリスはクリスティーヌね」
「私は偽名を使わなくても良いと思うのですが……いえ、はい。シャーロットで」
それぞれ本名を少し変えた名前で落ち着いた。
あとは、ゴミスキルで短剣を作れば良いんだけど……
「あー、材料を好きに使って良いって言われたけど、ゴミだと思われている訳ではないから、ゴミスキルの対象にならないね」
「そうなんだ。お兄ちゃん、どうするの?」
「とりあえず、ストレージにある壊れた短剣を修理するよ。≪ゴミ修理≫」
使って良いと言われた材料を使う事が出来なかったので、適当に三本の鉄の短剣を修理してみる事に。
「んー、修理スキルだと、元の短剣の形に戻るから、リスト上は同じ鉄の短剣なんだけど、全然違う物が出来上がっちゃった。流石に、こうもバラバラだと、変に思われるよね?」
「んー……でしたら、カーティスさんの錬金スキルでしょうか」
「うーん。それなんだけど、よくよく考えてみると、錬金スキルも壊れた短剣を元にしているから、修理と変わらない気がするんだよね。とりあえずやってみるけど。≪ゴミ錬金≫」
案の定、また違う形の短剣が出来てしまった。
しかも、適当に錬金した僕が悪いんだけど、プラントキラーっていう特性が付与されて、変な模様が描かれている。
「こ、こうなったら、ストレージの中にある短剣や剣を全部修理してみて、似た形のを探そう」
リストに表示されている短剣を全て選択し――凄い量になっている気がするけど――一括修理を行うと、
――ゴミスキルがレベルアップしました。ゴミ再生スキルが利用可能です――
大量に修理したからか、新たなスキルを習得した。
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