第56話 ギルド巡り

「では、宿から近い順に行くと、先ずはこちらの魔術師ギルドですね」

「僕が魔法使いだから、一番の候補なんだけど……ここは無しかな」

「そうなんですか? では、次へ参りましょう」


 街にあるギルドを見て回るつもりだけど、一軒目は建物に近付く事なく、パス。

 理由は二つあって、一つはルイス家が賢者の家系だからね。万が一にも、僕の事を知っている人が居たらマズいから。

 もう一つは、僕がまともに使える魔法が一つしかないから。

 幼少期からの教育のおかげで、知識だけはあるから、魔銃はしっかり使えるんだけどね。


「では、次はこちらの製薬ギルドですね」

「あー、ちょっとアリかも。ゴミスキルで錬金出来るしね。……すみません。ちょっと見学させてもらって良いですか」


 ……うん。結果から言うと、ギルドに加入はしなかった。

 というのも、ゴミスキルを使うと一瞬で素材と素材から新しい物を作ったり、装備に特性を付与したりできる。

 きっとポーションの類だって作る事が出来ると思うんだけど、薬って言うだけあって、スキルを使って作るとしても、使った材料と分量を正確でないと許されない。

 それだけなら別に構わないんだけど、定期的に決まった種類と量の薬を納品しないといけなくて、今の状況ではそれが難しいと判断したからだ。

 ちなみに、とりあえず加入して国境だけ越えるっていうのも考えたけど、そういう行為には後でペナルティが課せられるのだとか。ギルドがここしかなければ、それもやむなしだけど、まぁ他にもあるからね。

 そんな事を考えながら、次のギルドへ向かっていると、


「お兄ちゃん。薬を作るのって、大変なんだねー。クリス知らなかったよー」

「そうだね。一つのポーションを作るのに、凄く時間を掛けて、正確に作っていたもんね」


 とはいえゴミスキルだと、使用するだけで必要な素材を必要な分量だけ消費して、一瞬でアイテムを修理したり作ったり出来る。

 対象がゴミに限定されるという事を差し引いても、ゴミスキルは規格外に凄過ぎるのかもしれない。


「カーティスさん。次は、この建物にある盗賊ギルドですが……」

「いや、流石にそれは見るまでもなくパスかな。というか、こんな街中に堂々とあるんだ」

「いえ、街中ではありますが、見た目は普通の民家に偽装されているんです。ですが、この地下が盗賊ギルドになっていまして」


 流石と言うべきなのか、シャルロットは隠れているギルドまで調べられるらしい。

 他にも、密猟ギルドや暗殺ギルド、闇魔法結社と、知らない方が良さそうな組織の場所を説明される。

 この街を出る時にでも、匿名でこっそり騎士団に投書しておこうか。

 それから少し歩いて、


「でしたら、こちらはどうでしょうか。商人ギルドです」

「あ、これかも! ゴミスキルで修理したり、作ったりした物を売れるようになるもんね」


 僕が商人ギルドへ加入すれば、テレーズさんに買い取ってもらうしかなかった、ゴミスキルで作った装備品が、これからは自分で売れるようになるんだ。

 商人ギルドが最適だと思って建物に入り、説明を聞いてみると、商品はどこで仕入れた物なのか……とか、価格は適正なのか……とか。

 基本的に、安く仕入れて高く売るっていうのが商売なんだけど、暴利を得る事は禁じられていて、商品の種類毎に仕入れ価格の何パーセントまで利益を得て良いかと細かく定められていた。


「えっと……自分で作ったアイテムを売る場合はどうすれば良いですか?」

「貴方が製薬ギルドや鍛冶ギルドに属していて、商品の品質をギルドが保証してくれれば、通常の商品と同じ様に売れますが、そうでなければ販売する事は出来ませんね」


 という訳で、商人ギルドも見事に玉砕。

 結局、錬金ギルドか鍛冶ギルドっていう、生産側のギルドへ入って、商人に買い取ってもらうしかなさそうだ。


「シャルロット。この街の錬金ギルドって、どこにあるの?」

「錬金ギルド……ですか? そのようなギルドは、少なくともこの国には存在しないかと」

「えっ!? どうして? 製薬ギルドや鍛冶ギルドはあるのに」

「そうですね。流石に理由までは存じませんが、おそらくカーティスさんのイメージされている錬金――錬金術を扱える人が居ないからかと」

「でも、冒険者ギルドの人が言っていたみたいに、魔石から魔鋼鉄を作る人が居るんだよね?」

「それはそうですが、カーティスさんのように――錬金術のように一瞬で作っている訳ではないのかと」


 つまり錬金術というか、ゴミスキルが規格外……というか、規格外過ぎるのか。


「シャルロット。こ、この街に鍛冶ギルドは……」

「はい、ありますよ。ご案内します」


 一先ず、鍛冶ギルドへ加入するため、案内してもらった建物へ入る事にした。

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