第59話 C級鍛冶師
「お待たせしました。少し時間が掛かってしまいましたけど、鉄の短剣を三本打ちましたので、確認してもらえますか?」
試行錯誤の末、鍛冶ギルドの工房から出て、ゴミ再生スキルで作った鉄の短剣を職員さんに渡すと、
「いや、むしろ早い方だろ。さて、肝心の短剣だが……おぉ、かなり腕が良いな。この刃の薄さは中々の研ぎ……むぅっ!?」
三本の短剣を見比べ、唸りだす。
もしかして鍛冶スキルではなく、ゴミスキルで作ったのが何かマズかったのだろうか。
でも鍛冶スキルを使わなくても打てれば良いって話だったよね?
内心ドキドキしていると、
「兄ちゃん。師匠は誰だい?」
「え、えーっと……ど、独学です」
「な……マジか。独学で打って、この刃の薄さと強度を保っているなんて……兄ちゃん、すげぇな! しかも、三本とも寸分違わぬ作り。いや、マジで神がかってるぜ!」
「か、会心の出来でして」
い、言えない。
頭の中でイメージしたものが、そのまま出て来ただけなんて。
自分で打ってなくて、ゴミスキルが全部やってくれたから、全く同じ物が出来上がっているだけなんだよね。
「ところで、このCCCっていうのは何だ? これが銘か?」
「はい。僕たち三人の頭文字が全員Cなので」
「なるほどな。まぁ出来上がる時間も早かったし、分担してやっているって感じか」
「そ、そんな所です」
それから暫く、職員さんが三本の短剣を見比べ続け、
「おっしゃ。じゃあ、兄ちゃんたち三人は、C級鍛冶師に認定しよう」
いきなりC級鍛冶師に認定されてしまった。
「えっ!? いきなりC級ですか!? E級やF級からスタートするんじゃないんですか?」
「まぁ普通はE級だな。だが、この短剣の出来栄えの良さに加えて、三本とも同じ物を打てるという品質の良さ。本来ならB級相当なんだが、B級以上は実績が必要だからな」
「実績……ですか?」
「あぁ。知名度と言ってもいい。兄ちゃんの打った武器や防具のファンが大勢かいたりとか、どっかの村の自警団の装備に採用されたとか、兄ちゃん武器を使って、冒険者が凶悪な魔物を倒した……とかな。最後のは冒険者じゃなく自分でやっても構わないが、まぁそんな感じだ」
それから、作った武器を直接商人に売っても良いし、面倒なら鍛冶ギルドに委託するとかって説明を受け、
「じゃあ、これが三人のギルド証だ。品質的には余裕でB級だから、後は沢山作って、沢山売ってくれ」
建物を後にする。
「良かったですね。カーティスさん」
「そうだね。……って、今の僕はカーディだからね。街中では気を付けてね、シャーロット」
新たに貰った身分証は、当初の予定通り偽名なので、気を付けないとね。
とはいえ、知人とかに会わない限り、バレる事は無いと思うけど。
「えっへっへー。その点、クリスはお兄ちゃんって呼んでいるから、いつも通りで大丈夫だもんねー」
「えーっと、クリスはクリスティーヌだよね?」
「あっ……クリス自身の呼び方!? えぇーっ、これは今更変えられないよーっ! お兄ちゃん、どうしよーっ!」
「んー、まぁクリスティーヌを略してクリスっていう人も居るし……セーフ、かな?」
「やったーっ! お兄ちゃん、ありがとーっ!」
一人称を変えるのが余程嫌だったのか、クリスが喜びながら、抱きついてきた。
まぁでも、クリスからクリスティーヌに変えるのは、文字数も多くて大変そうだしね。
「クリスさん。どさくさに紛れて何をしているんですかっ! だったら私も、名前が大して変わらなくて済んだのが嬉しいです。カーティスさん、なのでギュッてしてください」
「え? どうして? というか、シャーロットって名前はシャルロットが自分で決めたよね?」
「それなら、クリスさんも同じじゃないですかーっ! ズルいですよーっ! ……えーいっ!」
何故か、突然二人から抱きつかれることになり、街中で騒いでいると、
「そういう事は私も混ぜなさいよねっ!」
マリーが人型に戻り、抱きついて来た。
「ま、マリー! 周囲に人が居る所で、いきなり人型に戻っちゃダメだよっ!」
「大丈夫よ。誰も見てないわ。それに、帽子も被っているもの。それより、お姉様の気持ちが良く分かったわ。カード形態でカーティスに密着していると、時にはこうして抱きつきたくなるわね」
「一体何の話なのっ!?」
一先ず無事に身分証を得る事が出来たので、久々にゴミ捨て場でゴミを回収してから、乗合馬車でクリスの生まれ故郷へ向かう事にした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます