第46話 決断を迫られるカーティス

 ボスモンスターによって、マリーさんが生み出した岩の壁が壊され、ボスモンスターが大きな身体を躍らせる。

 だけど僕は魔銃に十分な魔力を込め終えていて、姿を現したボスモンスターに狙いを定め……撃つ!

 見た目は先ほどまでと同じ氷弾だけど、一発でボスモンスターの身体の半分を凍らせた。


「やった! クリスのおかげで、ボスモンスターに与えるダメージが大幅に上がったよ! ありがとう!」


 同じ攻撃なのに、どうして攻撃が通り易くなったのかというと、先程マリーさんが生み出した壁の内側で、クリスが言った話……魔銃にビーストキラーの特性を付与出来ないかというアイディアからだ。

 氷の魔銃を一旦ストレージに格納し、ゴミ錬金スキルで、ダンジョンで倒した少し強めの魔物の血を使うと……氷の魔銃(ビーストキラー:ランクC)っていう表示に変わった。

 その効果は、先程目にした通りで、ボスモンスターの半身が凍りついている。


「ボスモンスターの攻撃を防いだ時に、偶然傷を付けて、気付いただけなんだけど、お兄ちゃんの役に立てて良かったよー」

「うん。けど、まだ倒した訳じゃないから、二人とも気をつけてっ!」

「えぇ、そのつもりよっ! ≪アイアン・ジャベリン≫」


 動きがかなり鈍くなったボスモンスターをクリスが引き付け、マリーさんが鉄の槍を放って牽制している間に、次弾となる魔力を込め、撃つっ!

 着弾し、ボスモンスターが殆ど動かなくなったけど、念のためにもう一発……うん、大丈夫かな?

 警戒を解かずに近付くと、


「≪ゴミ保管≫」


 ゴミスキルでボスモンスターがストレージに収納され、その大きな身体が目の前から姿を消した。


「やったー! お兄ちゃん、凄ーい!」

「いや、クリスのアイディアや、マリーさんが時間を稼いでくれたおかげだよ」


 無事に帰れる事が嬉しいらしく、クリスに抱きつかれていると、


「ま、まぁ、私が手伝ったんだから当然の結果よね。それより、早くお姉様を」


 マリーさんがシャルロットを修理しようと急かしてくる。


「待って。ここはダンジョンの中だし、一旦外に出ようよ。ダンジョンは一定時間で魔物が復活するって言うし、さっきのボスモンスターとは戦いたくないよ」


 とりあえず僕の意見が通り、三人でダンジョンの入り口へと戻る事に。

 流石に、倒してすぐ復活という事は無いのか、道中は魔物が出て来ない。

 なので、大量に得た魔物の死骸を買い取ってもらったら、何を買うか……なんて話を楽しくしていたんだけど、不意にマリーさんが足を止める。


「マリーさん? どうしたの?」

「う、嘘でしょ……どうして!? ローガンが居る!」


 ローガン? どこかで聞いた事のある名前な気がするけど、誰だっけ?

 そんな事を考えていると、マリーさんが頭を抱えてしゃがみ込んでしまった。


「マリーさん!? 大丈夫!? 顔が真っ青だけど、どうしたの!?」

「この先、ダンジョンの入り口を出てすぐの所に、騎士団長ローガン……今の私の所有者が居るわ」

「え? マリーさんの持ち主? それってつまり、マリーさんがその人の元へ帰らないといけないって事?」

「それどころじゃないわ。あの人が、お姉様を探せって、ジェームズたちに依頼しているのよ。あの人自身は魔力量が多くないから」

「……その人がここで待っている。しかも、騎士団長っていう事は……狙いはシャルロット!?」


 けど、どうして騎士団が?

 騎士たちは撒いたし、念の為に街ももう一度移動した。

 それなのに、見つかるのが早すぎる。

 しかも、ダンジョンで待ち伏せするかのように……まさか、冒険者ギルドから情報が流れているの!?

 何故、騎士団がここに居るのかと考えていると、突然マリーさんが立ち上がり……僕に抱き付いてきた!?


「マリーさん!?」

「カーティスもお嬢ちゃんも、よく聞いて。私は、あのローガンに命令されたら、抗えないの。マジックフォンの姿になってもダメ。強制的にこの姿に戻らされてしまうの。そしてきっと、貴方たちと、お姉様を攻撃させられる。だから……私を壊して」

「な、何を言っているの!?」

「こうするしか、貴方たちや、お姉様を守る方法が無いのっ! 魔力切れを起こしても、騎士団に魔力を持つ者くらい居るでしょうし、強制的に活動させられる。ね? もう、これしか方法が無いのよ」


 そう言って、抱きつくマリーさんが僕の顔を見上げ……っ!?

 き、キス……された!?


「ふふっ。これでもう、思い残す事はないわ! 私は私自身に攻撃出来ないから、一思いにお願い。ね、カーティス」


 マリーさんが僕から離れ、笑顔を向けてくる。

 だけど……こんなの、どうすれば良いんだよっ!

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