第47話 命令

「ダメだよっ! 僕にはマリーさんを攻撃なんて出来ないっ!」

「何を言っているの!? 私を壊さなきゃ、私に攻撃されるが確定しているのよ!?」


 マリーさんは、所有者であるローガンに命令されると拒まない。

 だからと言って、今まで一緒に行動してきた仲間を攻撃なんて出来る訳ないよっ!


「お嬢ちゃん。貴女でも良いわ。そのナイフで、私を滅多刺しにして」

「む、無理だよーっ! そりゃあ、お兄ちゃんにキスした時は……げふんげふん。何とか違う方法を考えようよ」

「……今、私を壊さないと、カーティスにもっと凄い事するわよ? 最期の思い出作りだもの。あんな事やこんな事だってしちゃうんだからっ!」

「そ、それならクリスも混ぜ……こほん。とにかく、それもダメーっ!」


 何をする気なのかは分からないけど、何となく良くない事なのだろう。

 この状況で、どうすればマリーさんを壊さず、無事に切り抜けられるかを考え、


「……シャルロットはどう思う?」

『……マリーが所有者の命令に逆らえないのは本当かと。攻撃能力だけを破壊出来れば理想的ですが、流石にそれは難しいかと』

「……マリーさんをストレージに収納出来れば良いんだけどね」


 シャルロットに話を聞いてみたものの、特に有益な情報は無かった。

 シャルロット曰く、このダンジョンに他の出入口は無いらしいので、やはりあのローガンの前を通るしかないようだ。


「そうだ! もう入り口のそばまで来ているし、マリーさんの魔法で壁を壊して、ダンジョンから出るとかはどう?」

「出来なくはないけど、ここって山の中の洞窟よ? そんな事をしたら、山が崩れて生き埋めになるわよ」

「生き埋め……は嫌かな」


 どうしたものかと思っていると、


『カーティスさん。洞窟の入口に居る者たちが、こっちへ向かっています』

「げっ……皆、隠れよう」


 シャルロットの言葉で慌てて後ろに下がり、岩陰に隠れる。

 少しすると、何人かの足音が聞こえ、


「ふっ、隠れても無駄だ。黒髪の人形が居るだろう。そいつには、何処にいても居場所が分かる追跡魔法を掛けている。さぁ人形よ、隠れてないで出て来い」


 マリーさんの事を人形呼ばわりしてきた。

 だけど、そのマリーさんが立ち上がり、歩いて行こうとする。


「マリーさんっ!?」


 慌ててその手を掴むけど、マリーさんは振り向きもせずに、歩きだす。

 なので後ろから抱き締め、羽交い締めにして、無理矢理止める。


「ふむ。一緒に居る男……カーティスとか言ったか。そやつがカード形態にしているのか。まぁ良い。ならば、出て来たくなるようにしてやろう」


 何とかマリーさんを抑えていると、遠目にローガンたちが何かを取り出したのが見えた。

 それが何かは分からないけど、何をする気なのだろうか。


「お前たちがこの近くに居るのは分かっている。出て来るなら今だぞ。まぁ嫌でも出て来る事になるのだが……これは、ダンジョンに魔物を出現させるマジックアイテムだ。しかも、魔物の強さや量を指定出来る。お前たちは……A級ダンジョンの魔物に勝てるかな?」


 ローガンがそう言った直後、ダンジョンが震えた……気がした。


『カーティスさん! 残念ながら、あの男の言う事は本当かと。周囲にこれまでよりも遥かに強い魔物が居ます!』


 待って! これまでよりも強い魔物って言うけど、マリーさんがこの状態で戦うなんて無理だよっ!?

 だけど、そう思った時には、


『カーティスさん。後ろから魔物が来ています!』


 背後に熊みたいな魔物が居て……仕方ないっ!

 マリーさんの手を握りつつ、片手で魔銃の狙いをつけ……撃つっ!

 あぁぁ……片手だからか、思っているところから少しズレてるっ!

 幸い、複数の敵を対象にして、範囲攻撃となるような弾を込めていたから命中したけど、そうでなければ、外れていた。

 片手で戦闘は無理だと思った所で、クリスが飛び出し、魔物に斬りかかる。


「硬ーい!」


 幸い、動きはそれ程速くないみたいだけど、クリスの攻撃が効いていないみたいだし、早く次弾を……撃つっ!

 クリスを巻き込む訳にはいかないので、両手でしっかり狙いを定めたので、無事魔物に命中し、倒す事が出来たんだけど、


「はっはっは。そんな所に居たのか。追跡魔法は大雑把にしか位置が分からんのが困ったものだが……人形よ。古代兵器は何処にある!」


 手を離してしまったが故に、マリーさんがローガンに見つかり、シャルロットの位置を聞かれてしまった。

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