第40話 効率魔物狩り

『おはようございます、ご主人様。今は朝の七時です。そろそろ起きる時間ですが……とりあえず頑張ってください』


 今日もシャルロットが変な起こし方をして来た……と思ったんだけど、


「く、苦しい」

「あっ! お兄ちゃん、大丈夫!? マリーさん、早くお兄ちゃんから離れてっ!」

「あら。貴女が離れれば良いのでは? カーティスが苦しそうよ?」


 一体どれだけ寝相が悪いのか、クリスとマリーさんが僕の身体の上に重なるようにして眠っていた。

 とりあえず、眠っている間の話だし、悪気も無いと思うので、二人にどいてもらい、朝の支度を済ませる。

 朝食を済ませ、マリーさんに雷魔法で魔力を注入し、準備完了。

 冒険者ギルドで、D級冒険者が請けられる、最も難易度が高い魔物退治の依頼を請けた。


「お兄ちゃん。魔物を倒すのは良いんだけど……このマリーさんって、戦えるの? 普通の女の子に見えるんだけど」

「僕と同じ魔法使いと思ってくれれば良いよ。特に、攻撃魔法が得意みたいだし」

「ふふっ。この辺りに居る強い魔物って言っても、程度が知れているから、全て私に任せてくれても良いのよ? お姉様の為、魔物を倒して倒して倒しまくるんだからっ!」


 冒険者ギルドで聞いた話によると、強い魔物はダンジョンに居るんだけど、とりあえずC級冒険者にならないと、ダンジョンに入る事が許されないらしい。

 シャルロットに聞けば、強い魔物の居場所も分かるだろうし、勝手に行けなくもないんだけど……バレた時にペナルティがあって、降格処分になったり、除名されたりしてしまうそうだ。

 そうなると、その後の生活が困るので、一先ずルールに則って、先ずはC級冒険者になる為、出来るだけ強い魔物を大量に倒す事にした。


『カーティスさん。西南西に魔物の群れがいます』


「マリーさん。向こうに魔物の群れが居るんだって」

「向こうに? 何も検知出来ないわよ?」

「シャルロットがそう言っているんだけど」

「畏まりましたっ! さぁ、二人共ついてきなさい。私の華麗な攻撃魔法を見せてあげるわっ!」


 マリーさんはシャルロットの名前を出すと、態度がころっと変わるなと思いつつ、三人で歩いていくと、


「流石、お姉様。確かにいるわね」


 草むらの先に、大型犬くらいのサイズがある、バッタみたいな緑色の虫が沢山居た。


「えっと、倒した証拠が要るから、炎で燃やしたり、風で吹き飛ばすのは避けた方が良いのよね?」

「そうだね。とはいえ、ピンチの時はそんな事を言っていられないけど」

「ふっ、この程度の敵に遅れを取る訳がないじゃない。見てなさいよ…… ≪アース・スパイク≫っ!」


 少し先に居る魔物の群れの足下から、マリーさんの言葉に応じて、無数のトゲのような岩が現れる。

 魔物の群れは皆、その岩に身体を貫かれ、あっという間に息絶えた。


「ふっ……まぁこんな感じね」

「凄っ! ……こほん。な、中々やるわね」

「ふふふ……そこは、もっと褒めても良いのよ?」

「せ、接近戦ならクリスの方が凄いもん!」

「甘いわね。私は近付かせる前に倒すわ」


 マリーさんが一撃で沢山魔物を倒してくれたんだけど、どうしてクリスと言い合いになるのかと不思議に思いつつ、倒してもらった魔物の元へ。


「あー、そっか。討伐証明となる部位を拾わないといけないんだっけ? 魔物を倒すより、集める方が大変ね」

「あ、それなら大丈夫だよ。≪ゴミ保管≫」

「へぇー。貴方もやるじゃない。そのスキルがあれば、かなり効率良く魔物を倒す事が出来るわね」


 ゴミスキルで魔物の死骸を一瞬で回収し、シャルロットに魔物が居る場所を聞いて歩いて行く。

 魔物が見えたら、マリーさんが魔法で瞬殺し、僕が回収する。

 そんな事を何度か繰り返していると、


「ふふっ……さっきから歩いているだけで、お嬢ちゃんは何もしていないわねー」


 マリーさんがニヤニヤと笑みを浮かべながら、クリスをからかいだした。


「むー。だって……」

「違うよ。僕もマリーさんも、魔法攻撃が主体だから、不意打ちに弱いんだ。クリスは何かあった時に僕たちを守る為、待機してくれているんだよね」

「そ、そうっ! 流石、お兄ちゃん。クリスの事を良く分かってくれてるもんっ! だ……大好きっ!」


 いや、そんな事で抱きついてこなくても……って、どうしてマリーさんは頬を膨らませているのっ!?

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