第39話 新たな仲間

「貴女とは、はじめましてかしら。私はマリーよ」

「あ、えっとクリスです……って、お兄ちゃんから離れてっ! 胸を腕に押し付けないでっ!」


 クリスが、今にもマリーさんに飛びかかるんじゃないかって勢いで、声を上げる。

 というか、マリーさんは胸を押し付けてなんて……くっついてたっ!


「二人とも待って。マリーさんはマジックフォンの状態で話を聞いていたんだよね? じゃあ、クリス。説明するから少し話を聞いてね」


 何とかクリスを落ち着かせようとするんだけど、


「お兄ちゃんから離れてっ!」

「ふふっ……カーティスには、いい事をしてあげる約束だったのにね」

「い、いい事って何よっ! 何をするつもりなのよっ!」

「知りたい? ……どーしよっかなー?」


 どうしてマリーさんは変な事ばかり言うんだよっ!

 とりあえず、話が進まないので、マリーさんには離れてもらい、事情を話していくんだけど……クリスも僕にくっつき過ぎだってば。


「……という訳で、魔鋼鉄があれば、シャルロットを直せそうなんだ」

「むー。でも、そのシャルロットさんも、直したらマリーさんみたいに女の人になっちゃうんだよね?」

「多分……本人は人型って言っているから、そうなんだと思う」

「うぅぅ……でも、家を出たばかりのお兄ちゃんを助けてくれた恩人なんだよね? むぅぅ……」


 何故かはよく分からないけど、クリスはシャルロットが人型になる事が懸念みたいだ。

 もしかして、馬車代とか宿代とかっていう生活費が増えちゃう事を心配しているのかな?

 けど、テレーズさんに装備を沢山買い取って貰ったし、薬草もかなりの金額になったから、懐はかなり温かいんだけど……あ、そうか。クリスは家が欲しいって言っていたから、お金を節約して貯めたいんだ。


「マリーさん。マリーさんって、魔力切れでマジックフォンの姿に戻るけど、それ以外でも自分の好きな時に戻れたりするの?」

「えぇ、それくらい造作もないわよ。魔力切れ状態でなければ、マジックフォンの姿で会話も出来るわ」

「なるほど。じゃあ、シャルロットが直ったら、マリーさんと同じように、任意のタイミングでマジックフォンになれる?」

「んー、正直分からないわね。お姉様とは型が違うから。というか、そんな話なら直接お姉様に聞いた方が早いんじゃないの?」

「あ、確かに。という訳で、シャルロット。どうかな?」


 胸ポケットのシャルロットに話し掛けると、


『残念ながら、私は任意では戻れないですね。あくまで人型の状態が正常で、魔力切れや故障などの異常状態が今の姿になので』


 出来ないという答えが返ってきた。

 出来るなら、クリスも納得してくれるかと思ったのに。


「うーん……クリス。シャルロットは人型の姿になると、任意で今の姿には戻れないんだって。けど、シャルロットの分も僕が頑張るからさ」

「……えっと、お兄ちゃん。何の話?」

「え? シャルロットを直すのに、協力して欲しいっていう話だよ?」

「う、うん。協力はする……よ? けど、シャルロットさんが直っても、お兄ちゃんの一番はクリスなんだからねっ! そこは絶対に譲らないんだからっ!」


 僕の一番って何の事だろう?

 けど、一先ずクリスも納得してくれたみたいだし、明日から沢山魔物を倒さないとね。


「じゃあ、そういう訳で、明日の為に今日は寝ようか。実は僕、もう結構眠くてさ」

「……それは良いけど、この部屋にベッドが一つしか無いんだけど」

「あー、うん。二人部屋よりも、一人部屋に二人で泊まる方が安かったから。それに、ベッドが二つあっても、いつもクリスとは一緒に寝ていたから……はふ」


 最初はクリスが一人で寝るのが寂しいっていう話からだったと思うけど、いつの間にか、いつも同じベッドで、くっついて寝るようになっちゃってたね。

 ベッドにゴロンと寝転がると、


「へぇー。じゃあ、私も一緒に寝よーっと。カーティスの隣で」

「ど、どうしてよっ! マリーさんは、カードみたいな姿になれるんでしょ!? だったら、そっちの姿で良いじゃない!」

「イヤよ。こっちの方が面白……こほん。この姿じゃないと、疲れが取れないのよ。明日は強い魔物と戦うんでしょ? しっかり休んでおかないとね」

「むー……じゃ、じゃあ、クリスの隣でっ! クリスが真ん中で寝るのっ!」

「ふわぁー。眠いから、もう寝るわね。おやすみー」

「……って、お兄ちゃんに抱きつかないでっ! うぅっ……クリスもっ! クリスもお兄ちゃんに抱きついて寝るもんっ!」


 マリーさんとクリスが、よく分からない話をしていたけど、それより眠くて……何故か暖かくて柔らかい物に包まれながら、心地良く眠る事が出来た。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る