第22話 ゴミ錬金からのゴミ修理

「お待たせー。カー君、凄いわねー。この数日間で沢山作ったのねー。買取価格は、こんな感じでどうかしらー?」


 そう言って、テレーズさんが提示してきた金額は……金貨四枚!?


「こ、こんなにも……ですか!?」

「えぇ。どれも質が良いし、鋼で出来た武器や防具が沢山あったからねー。あと、カー君が可愛いから、ちょっとおまけしてあげたのー」

「……お兄ちゃんは、絶対にあげないんだから……」


 金貨四枚……銀貨にすると四百枚か。

 特急馬車の代金を引いても、余裕で黒字だ。

 クリスが小声で何か言っていた気もするけど、僕はこの大金をどうするかで頭がいっぱいになっていて、


「ふふっ。じゃあ、カー君。金貨四枚ね」

「は、はい。ありがとうございます」


 テレーズさんに声をかけられ、出されたお金を受け取る。


「じゃあ、カー君。今日こそ、お姉さんと一緒にお茶を……」

「お兄ちゃん! 新しいスキルの確認をするんだよね!? 早く行こっ!」

「え? 新しいスキル……?」

「あっ! な、何でもないのっ! お兄ちゃん行こっ!」


 口を滑らせたクリスに手を引っ張られ、慌ててお店を出る事に。

 クリスも分かって居るみたいだけど、普通は新しいスキルを得る事なんて無いから、人に言わないようにね。


 お昼時だし、沢山買い取ってもらったから、テレーズさんのお店でお昼ご飯を食べようと思っていたんだけど、クリスの言う通り新しいスキルが気になるのも確かなので、一先ず宿へ戻る。

 ベッドに腰掛けると、クリスが隣に腰掛け、


「お兄ちゃん、早く! 新しいスキルを使ってみてよー」

「うん、ちょっと待ってね」


 僕の手元を覗く。

 クリスはゴミ整理スキルの板は見えてないはずなんだけど……まぁ気分の問題なのかな?


「≪ゴミ錬金≫」


 早速スキルを使用すると、


――リストの中から、錬成する素材を選んでください――


 いつもの声が聞こえてきて、鉄や銅といった金属に、ガラスや大理石といった、様々な素材の表示が沢山並ぶ。

 一先ず、試しに銀を選んでみると……ゴミのリストに、銀の延べ棒という物が追加された。


「なるほど。錬金っていうのは、錬金術の事かな?」

「ん? お兄ちゃん。新しいスキルは、どんな効果だったの?」

「どうやら、ゴミから素材を作れるみたいなんだ」

「でもそれって、今までも出来たんじゃなかったっけ?」

「たぶんだけど、錬金っていうくらいだから、別の素材から、新たに素材を生み出せるスキルだと思うんだよね」


 そんな事をクリスと話していると、


『詳しい事は分かりませんが、カーティスさんは錬金術が使えるという事ですか?』

「……たぶんね」

『で、では、魔鋼鉄をっ! 魔鋼鉄を作ってくださいっ!』


 シャルロットが物凄く食いついてきた。

 魔鋼鉄があればシャルロットが修理出来るからだと思うんだけど、そんな素材まで作れるのかな?


「≪ゴミ錬金≫」


 一先ず、もう一度スキルを使い、魔鋼鉄という表記が無いか確認していると、


「……ん? あ、あれ?」

「お兄ちゃん、どうかしたの?」

「う、うん。どうやらゴミ錬金スキルで真銀が作れるみたいなんだ」


 さっきは気付かなかったのか、それとも銀の延べ棒を作ったからなのか。魔鋼鉄は見つからなかったけど、代わりに真銀の表記を発見し……ゴミ整理スキルの板に、真銀の塊という表示が追加された。

 試しにストレージから出してみると、


「お、お兄ちゃん? これは?」

「真銀……の塊」

「えっと、真銀って指先くらいの大きさで、金貨数枚くらいするって聞いた事があるんだけど」


 驚くクリスと僕の前に、拳大の真銀の塊が現れる。

 と言っても、物凄く重いし、邪魔になるだけなので、一旦ストレージに戻すと、


『カーティスさん。今の真銀で私を修理出来ませんか!?』


 再びシャルロットが確認だけでも……とお願いしてくる。

 真銀も特殊な金属だけど、魔鋼鉄とは別物だから、その代用品には出来ないと思うんだけど。

 シャルロットを一旦ストレージに収納して……うん、やっぱり無理だよ。

 修理可能なものに絞り込んでみたけど、マジックフォンっていうのは出て来なくて……あれ? 魔銃っていうのが三つ表示されているけど、これって何だっけ?


「……って、魔銃!? 遺跡で見つけた、あの!? ……ご、≪ゴミ修理≫」


 シャルロットに教えてもらった魔銃の事を思い出し、早速修理する。

 真銀の塊を消費する事になってしまったけど、三つあった魔銃の内の一つ、水色の魔銃が修理出来た。

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