第10話 機嫌がころころ変わるクリス
「≪ゴミ整理≫?」
どういうスキルだろう? と思いながら使ってみると、ずらずらと何かが書かれた半透明の板が現れた。
どうやら、保管したゴミをリスト化してくれる上に、状態や品質による並べ替えや、種別によるフィルタ機能まであるようだ。
「何これ凄い!」
「お兄ちゃん。どうかしたの?」
「いや、クリスも見てよ。凄くない?」
「え? 何が?」
「だから、これが……」
って、クリスには見えないのかな?
クリスは、僕には見えている板を見ようとして、僕に密着しながら視点を合わせてみたり、おんぶされるみたいに、背中から抱きついてきたりする。
ん? あれ? クリスの息が荒くなってる?
獣人だから身体能力が高いって言っていたけど、街の中を端から端まで歩いたし、実は疲れているのかな?
「クリス。今からまた焼却場へ戻るんだけど、このままおんぶで行こうか」
「えぇっ!? ど、どうしてっ!?」
「いや、だって息が荒くなっているし、辛いのかなって思って」
「そ、それは……その、お兄ちゃんに抱きついて……な、何でもないっ!」
「僕は魔法使いだけど、ちょっとだけ戦闘訓練も受けているからね。体力はあるから、クリスは休んでて」
そう言って、僕の背中に抱きつくクリスの太ももとお尻を支えると、
「にゃぁぁぁ。お、お兄ちゃ……うぅん、何でもないの。お、お願いします」
僕の首に両腕を回し、身体を預けてきた。
……しかし、クリスの身体は軽過ぎないかな?
でも、脚はムニムニしていて、ガリガリって訳ではない。
ご飯が食べられていない……という訳ではないみたいだけど、大丈夫かな?
最初はおんぶされているのが恥ずかしいのか、クリスは黙っていたけど、焼却場が見える頃には、ご機嫌で鼻歌を歌っていたりする。
そのまま焼却場へ行くと、ゴミ整理スキルを使い、品質が悪い物だけ出してみた。
うん、この中に光るゴミは無いね。
再びオジサンにサインをもらい、冒険者ギルドへ戻る。
何故か、ギルドまでは自分で歩こうか……と言ったら、クリスが少し拗ねたけど。
「お待たせしました。先程運んでいただいたゴミに対する報酬、銀貨三枚です」
「あれ? 最初のゴミ運びより、報酬が高いんですね」
「えぇ。焼却場までの距離が違いますので」
冒険者ギルドの受付で説明を聞いて、報酬を受け取ると、
「カーティスさん、クリスさん。お二人は、Fランク冒険者として、通算銀貨五枚を得ましたので、Eランクに昇格となります」
受付のお姉さんが意外な事を言ってきた。
「え? 僕たち、さっき登録したばかりですよ?」
「そうですね。ですがルールはルールですし、有益なスキルを持つ方には、もっと活躍していただかないと困りますので」
「……それってもしかして、もうゴミ運びの仕事は請けられないんですか?」
「いえ、請けられますけど……請けたいんですか? ストレージスキルをお持ちなら、もっと稼げるお仕事が沢山あるのですが」
お姉さんが困惑しながら話しかけてくるけど、僕のは普通のストレージスキルじゃないからなー。
とりあえず、Eランクで請けられる仕事を見てみる。
「……薬草集めとか、隣町へのお使いとかがメインなんですね」
「そうですね。大雑把にですが、Fランクは街の中、Eランクは街の近く、Dランクで弱い魔物退治……と思っていただければと」
お姉さんの話をしっかり聞きながら、どんな仕事を請けようかと考え、クリスに相談しようとしたら、
「むー」
何故かクリスは、僕を見ながら頬を膨らませていた。
「ど、どうしたの?」
「……お兄ちゃん、見つめ過ぎ……」
「ん? な、何を?」
「むー、何でもないもん!」
何だろう?
クリスはどうして機嫌が悪いの?
そう思った所で、ギルドの大きな時計から鳩の人形が飛び出て、お昼を告げる。
……あ、なるほど。お腹が空いていたのか。
「すみません。ちょっと考えてから、また後で来ます」
「はい、わかりました」
「クリス。ご飯を食べに行こう」
そう言って手を繋ぐと、
「うんっ!」
さっきまでの不機嫌はどこへ行ったのか、急にクリスが元気になる。
うん、やっぱりお腹が空いていたんだ。
午前中だけで、かなりの金額が稼げたし、好きな物を食べて良いからね。
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