第9話 初仕事……はイージーモード

「お兄ちゃん。じゃあ、お仕事頑張ろーねっ!」


 そう言って、クリスがギルドで受け取った麻袋を広げ始めたので、慌てて止める。


「ん? どうしたの? クリスもお仕事するよー?」

「いや、そういう訳じゃないんだ。ちょっと見てて…… ≪ゴミ保管≫」

「えぇっ!? これって、ストレージスキルなの!? こんなレアなスキルがあるなら、絶対にもっと上のランクからスタート出来るのに……お兄ちゃん、ごめん」

「違う、違う。いや、ストレージスキルの類ではあるんだけど、これはゴミしか収納出来ないんだよ」


 ゴミ保管スキルで、ゴミを一気に収納し、焼却場へ向かいながらクリスに説明する。

 ゴミしか扱えない微妙なスキルだから、ギルドで言いたく無かった事を話すと、


「でも、クリスは凄いと思うけどなー! あんなに沢山あったゴミを、一瞬で片付けちゃったし」


 クリスが凄い凄いと褒めてくれた。

 このスキルのせいで家を追い出された訳だし、初めて褒められたのがちょっと嬉しい。

 なので、クリスの頭を撫でると、


「えへへー。お兄ちゃんに撫でられちゃったー」


 嬉しそうな声をあげ、抱きついてきた。

 なるほど。クリスは寂しがり屋で、甘えん坊さんっと。

 そこからは、僕の腕に抱きついて歩くようになってしまったけど、逸れたりするよりは良いと思い、そのまま移動する。

 というのも、街の外れにある焼却場までの道が、細くて入り組んでいて、ややこしいんだよね。


『カーティスさん。次の角を右です』


 右なのか。ギルドで貰った地図だと直進……って、壁が出来てるっ!

 複雑な地形で、地図に載っていない家も建っていて……シャルロットが案内してくれなかったら確実に迷子だよね。

 一先ず、それらしき施設に着いたので、中に居るオジサンに話しかけてみる。


「すみません。冒険者ギルドの仕事で、東のゴミ捨て場からゴミを運んで来たんですが、どこへ持って行けば良いですか?」

「あぁ。それなら、ここに置いてくれれば、こっちでやっておく……って、荷車とかが見当たらないが、どこにゴミがあるんだ?」

「あ、今から出しますね」


 スキルを使い、さっき収納したゴミを出していくと、


「おいおい、ストレージスキル持ちかよ! しかもこれだけの収容量……兄ちゃんは、Bランクくらいか? ……って、Fランクだと!? いやいや、ストレージスキルを持ってる時点でCランク以上は確定なのに、どうしてこんな仕事をしているんだ!?」


 オジサンが驚き、一気にまくしたててきた。

 とりあえず、適当に誤魔化し、仕事の依頼者にサインと、運んで来たゴミのおおよその量を記入してもらう。

 というのも、今回の仕事は運んだゴミの量に応じて報酬が発生する為で……っと、クリスが待っているので、オジサンに礼を言って帰路に着く。

 再びシャルロットに案内してもらいながらギルドへ戻ると、


「えっ!? ……この量、本当ですか? でも、ちゃんとサインが……少しお待ち下さい」


 受付のお姉さんが困惑した様子で、奥へ行ってしまった。

 少しすると戻ってきて、


「お待たせしました。先ずは、今回運んでいただいたゴミに対する報酬、銀貨二枚です」

「ありがとうございます」


 無事に報酬を得る事が出来た。

 銀貨一枚が銅貨百枚と同じで、昨日の宿だと、二人で一泊しても銅貨二十枚だから、食事などの料金を引いても、数日は過ごせる。

 街の中を歩いただけで、こんなに報酬が貰えてしまうとは。


「カーティスさん。焼却場の職員から聞きましたが、ストレージスキル持ちだとか。それなら、一気に等級を上げて、もっと良いお仕事を紹介出来ますが、如何でしょう」

「いえ、ちょっと特殊なスキルなので、このままで良いです」

「そう……ですか。わかりました。では、今日はどうされますか? 先程は街の東のゴミ捨て場を案内させていただきましたが、西のゴミ捨て場ですと、今日は誰にも案内していないので、まだゴミがあるかと思いますが」

「じゃあ、そっちもやります」


 これで、さっきと同じくらいの報酬が得られたら、クリスに服を買ってあげよう。

 そう思いながら、西のゴミ捨て場の場所を聞いて早速移動すると、ゴミの山の中に幾つかキラキラと光る箇所がある。

 一先ず、一旦まとめて収納すると、


――ゴミスキルがレベルアップしました。ゴミ整理スキルが利用可能です――


 沢山ゴミを収納したからか、新たなスキルが利用可能になった。

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