第8話 Fランク冒険者のお仕事
「じゃあ、これから冒険者ギルドへ登録しに行くんだけど、クリスは僕と一緒に冒険者としてお仕事をする……で本当に良いんだよね?」
「うんっ! クリスはお兄ちゃんと一緒なのっ!」
身支度と朝食を済ませ、宿を出る前に改めてクリスの意志を確認したけど、僕について来るようだ。
「わかった。僕は雷の魔法を使えるのと、得意ではないけど、最低限の剣の使い方は習っているんだ。もしも魔物と戦う事になったら、僕がクリスを守るね」
「お兄ちゃん、ありがとう! でも相手が魔物なら、クリスがお兄ちゃんを守るのっ!」
「え? 気持ちは嬉しいけど……」
「ううん。だって、お兄ちゃんは魔法使いだよね? クリスは小さな頃から魔物を狩っていたし、獣人だから平気だよ? 流石に、人を相手にした事はないけどね」
そっか。獣人は、人間よりも遥かに身体能力が高いんだった。
それなら、クリスに魔物を引き付けてもらっている内に、僕が魔法で倒すっていうのが良いのかな。
クリスは昨日の男たちみたいな剣は持ってないけど、小さな短剣を持っていて、これで十分なのだとか。
「じゃあ、早速冒険者ギルドへ行ってみよう」
「うんっ! あ、お兄ちゃん。は、逸れないように、手……手を繋いでもいい?」
クリスのお願いに応じて、小さな手を取って宿を出る。
それにしても、大きな猫の耳を隠すマジックアイテムを使用したクリスは、十歳くらいにしか見えない。
お腹が見えてしまっているシャツと、物凄く短いショートパンツに布の靴……僕が持ってきた服はサイズが合わないだろうし、仕事を頑張って、お金に余裕が出てきたら、クリスに服を買ってあげよう。
そんな事を考えつつ、
『カーティスさん。次の十字路を左です』
シャルロットに案内してもらい、冒険者ギルドへ到着した。
ちなみに、シャルロットの声はクリスにも聞こえないらしい。
シャルロットと会話が出来るのは、やっぱりゴミスキルの効果みたいだ。
「いらっしゃいませ。ご依頼ですね? あちらの部屋へどうぞ」
「いえ、違います。僕たちは冒険者として働きたくて来たんです」
「えっ!? ……失礼致しました。では、こちらでお伺い致します」
受付のお姉さんに驚かれたけど……あ、そうか。僕の服が冒険者っぽくないんだ。
クリスの服を買ったら、僕の服も買わないといけないな。
そんな事を考えながら、先ずは冒険者のお仕事の説明を受ける。
お姉さん曰く、Eランクから始まって、仕事をこなしていくと、D、C、Bとランクが上がっていき、受けられる仕事も変わっていくという話だ。
「……では、貴方がお持ちのスキルを教えていただけますか?」
「えっ!? スキルを……ですか?」
「はい。冒険者向きの有益なスキルをお持ちの場合、DランクやCランクからスタートする事もあります」
「出来れば言いたくないのですが」
「……そうしますと、通常のEランクよりも低い、Fランクからのスタートとなってしまいますが、宜しいでしょうか?」
Fランク!?
Eランクが一番下じゃなかったの!?
どうしようかとクリスに目を向けると、
「お兄ちゃんが言いたくなければ、構わないよ。クリスは、お兄ちゃんについて行くもん!」
クリスは僕に従うと言う。
一先ず、EランクとFランクの違いを確認しようとした所で、先にお姉さんが口を開く。
「あ……そちらの弟さんも、冒険者として登録されるのですね?」
「弟……えぇ、そうですが」
「なるほど。残念ながら、十六歳未満の方はスキルを授かっていませんので、必然的にFランクからのスタートとなります。ご兄弟でパーティを組まれるのであれば、ランクが同じ方が何かと都合が良いかと」
「そ、そうですか。では、僕もFランクでお願いします」
それから、冒険者の証となるカードを受け取り、Fランクの仕事を請け、僕とクリスは無事に冒険者となる事が出来た。
「お兄ちゃん、ごめんなさい。クリスのせいで、お兄ちゃんまでFランクに……」
「何を言っているんだよ。そもそも僕もスキルを言いたくないって話してただろ? だからクリスが気にする必要なんて、少しもないよ」
そう言って、暫く二人で街を歩き、初めての仕事場に到着した。
「いやー、しかし……まさかここが最初の仕事になるとは思わなかったよ」
魔物と戦う時の事をクリスと話していたけど、Fランクではそんな仕事は請けられないそうだ。
その結果、昨日ゴミスキルの実験をしまくったゴミ捨て場……ここのゴミを、街外れの焼却場へ運ぶ事が、冒険者としての初めての仕事となった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます