第3話 自称古代兵器の優れた機能
『おはようございます、ご主人様。今は朝の七時です。そろそろ起きる時間かと』
聞きなれない声のメイドさんに起こされ……って、誰も居ない?
違う! そうだ、僕は昨日家を追い出されたんだ。
「えーっと、シャルロット?」
『はい、何でしょうか。今日の天気は、曇りのち晴れです。また占星術によると、本日のご主人様の運勢は、三位です』
呼びかけてみると、僕のそばにあるカード型の何か――シャルロットは、マジホって言っていたけど――がよく分からない事を話し掛けてくる。
「天気はともかく、運勢が三位って何? ……いや、いいや。それより、僕はこれから街道を歩いて、イリアスの街へ行くつもりなんだけど……シャルロットは持って行った方が良い? それとも、このまま遺跡に残した方が……」
『私も連れて行ってください! というか、昨日あれ程お話ししたのに、置いて行くとか酷くないですか!? 私は貴方のお側に置いていただけないと、何も出来ないんです! 貴方のお役に立ちますし、誠心誠意尽くしますので、一緒にいさせてください。あと……時々雷魔法で魔法力をチャージしていただけると助かります』
とりあえずシャルロットはついて来たいそうだ。大きくも重くもないし、胸ポケットにでも入れておけば良いか。
まぁ一人で移動するにあたって、話し相手が出来たと思おう。……相手はゴミだけど。
「けど、シャルロット以外にもゴミは沢山あったのに、他のゴミが話し掛けてこないのは、どうしてだろう?」
『ゴミ……? 何の事ですか?』
「いや、僕のゴミスキルでシャルロットと会話出来ていると思うんだけど、だったら他のゴミと会話出来てるはずだと思って」
『わ、私はゴミではありませんよっ! 昨日も言いましたよね? 私はあらゆる情報を収集可能な、古代兵器だと』
「あー、うん。シャルロットは古代兵器、古代兵器」
『し、信じてませんねっ!? でしたら、これを見てくださいっ!』
そう言うと、シャルロットの銀色の部分が一部黒くなり……少しすると、緑色の変な絵や、白や水色の線が描かれる。
これは一体何の絵だろうかと思っていると、
『これは、この辺りの周辺地図です。中心の青い丸が今いる場所で、イリアスの街でしたら、街道を徒歩で進むのでしたら、ここから休憩無しでも八時間は掛かります。一方、大きく迂回する街道を通らず、このまま真っ直ぐ森の中を突っ切れば、六時間で着きます』
「え!? ちょ、ちょっと待って! 地図……って、そんなの軍事情報だよっ! しかも、物凄く細かい……こ、これ本物なの!? というか、どうやって地図を入手して、表示しているのっ!?」
他国との戦争なんかがある為、街に住む者でさえ、「この街道を進めば、どこどこの街に着く」くらいの認識しかない。
勿論、地図なんてどこにも売っていないし、個人的に作った地図だって、兵士に見つかったら没収されると思う。
だから、森の中を突っ切ってイリアスへ行く道を表示するシャルロットは凄いんだけど、大丈夫なのかな? っていう気はする。
『この地図は、古代に空の上へ打ち上げられた衛星から得たデータを元に作成しています』
「空の上? 衛星? ……星の事?」
『まぁそんな感じです。一先ず、私はゴミではないですよね?』
「とりあえず、この地図が合っていればね」
正しい地図だと言い張るシャルロットを制し、残っていた缶詰を幾つか鞄に入れ、
「この変な形の棒……魔銃だっけ? これも持って行った方が良いんだよね?」
『そうですね。壊れているので骨董品的価値しかありませんが、それでも持って行くべき所へ持っていけば、金貨百枚は超えるかと』
「え? 銅貨や銀貨じゃなくて、金貨!? 壊れたゴミなんだよね!?」
『壊れていなければ、その千倍の価値はあるかと。というのも、それは魔法力を弾にして攻撃する武器ですから、魔法が苦手な人でも、魔法力さえ注げば、強力な攻撃が出来ますので』
それって、ずばり僕の事なんだけど。
魔法力は沢山あるのに、強い魔法が使えないから、ジェームズに言われたい放題でさ。
とりあえず、三本の魔銃を鞄に詰めたけど、一つくらい修理出来ないかな?
売れば暫くお金に困らなくなるけど、出来れば僕が使いたいくらいの、魅惑の武器だし。
そんな事を考えながら、朝ごはんの缶詰をいただき、
「じゃあ、行くよ」
『はい。どこまでも、お供いたします』
これから冒険者として生きていく為、喋る自称古代兵器と共に、イリアスの街を目指して出発した。
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