第4話 レベルアップするゴミスキル

「凄いね。シャルロットの言った通りの時間に、イリアスの街へ着いたね」

『当然です! 地図の表示に、歩き易い最適ルートの提示はもちろん、乗合馬車の乗り換え方法だって提示出来ますよっ!』


 適度な休憩を取りつつ、街道を歩いて行くと、街が茜色に染まり始めた頃に到着した。

 とりあえず、宿を探そう。あとは、食事かな。

 缶詰は美味しいんだけど、これしか食べてないしね。


「さて、安くて食事の付いている宿はないかな」

『宿をお探しですか? お任せ下さい。街の中の施設や、そこの評価だってお調べ出来ますよ』

「評価?」

『はい。実際にその施設を利用された方の感想と共に、五段階評価で表示致します。例えばすぐ右手にある食堂は、手頃な値段でありながら、味も良く、星四つの評価ですね』


 シャルロットの示すお店を見てみると、確かにお客で賑わっている。


『一方、向かいのレストランをご覧下さい』

「あ、僕あのお店は行った事があるよ」

『あのお店は、以前は良かったのですが、代替わりして、味が落ちてしまい、かつ値段は高いままなので、非常に評判が悪いですね。星一つです』

「そうなんだ。じゃあ、こっちの食堂にしよう。どうやら宿も併設しているみたいだしね」


 こういう大衆食堂みたいな場所は余り入った事がなかったけど、シャルロットの言う通り、ご飯は美味しいし、何より財布に優しい。

 今の僕は、もうルイス家の人間じゃなくて、自分でお金を稼いで生活していかないといけないからね。

 しっかり考えていかなきゃ。

 そんな事を思いながら、パンを食べていると、キラキラと光る物が視界に映る。

 だけど、そこにはウェイトレスさんがお客さんの食べ終えたテーブルを片付けているだけだ。


「おねーちゃん、お勘定ー」

「はーい! 今行きまーす!」


 人懐っこいお姉さんが、一旦片付けを中断し、別のテーブルへ。

 気になったので良く見てみると、


「……全く手をつけていない料理?」


 綺麗に盛り付けられた料理が、そのまま残っていた。

 その後、ウェイトレスさんが戻って来て、料理の乗ったお皿を奥へ運んで行く。

 目を凝らして見ていると、そのままゴミ箱へ。

 その後も、キラキラ光る物を見ていると、どれもゴミ箱へ捨てられる。

 何だか勿体ないな……と思っていると、


――ゴミスキルがレベルアップしました。ゴミ保管スキルが利用可能です――


 突然聞いた事のない声が聞こえてきた。


「っ!? しゃ、シャルロット。今、何か言った?」

『いいえ、何も言っていませんよ? あと、人前では私に話しかけない方が良いかと。他の人に私の声は聞こえないので、カーティスさんが変な人と思われますよ?』


 賑やかな食堂の中でもハッキリ聞こえる声だったけど、僕以外は誰も気にしていない。

 ゴミスキルって言っていたし、僕にしか聞こえない声……って、ちょっと待って。

 今更だけど、スキルのレベルアップって何!?

 スキルは十六歳で授かったら、それっきり。

 後はそのスキルを活かして生きていくか、僕みたいにゴミなスキルを無視して生きていくか……なんだけど、スキルが増えた!?

 そんなの前代未聞だよ!?


 ……いや、落ち着こう。

 増えたと言っても、確か「ゴミ保管」って言っていたよね。

 ゴミなんて保管してどうするのさ。

 元々ゴミな物を、それ以上ゴミにしないように……って、意味ないから!

 既にゴミなんだし!


 ……とはいえ、増えたスキルは気になる。

 とりあえず、鞄の中をゴソゴソと漁り、細長い棒――壊れた魔銃を見つけると、


「……≪ゴミ保管≫……」


 呟くようにして、こっそりスキルを発動させた。

 すると、魔銃が突然鞄から消える。

 あれ? ちょっと待って。ゴミ保管スキルって、もしかして、持っているだけで勝ち組と言われるレアなスキル――ストレージスキルなのっ!?

 試しに、今度は魔銃を思い描きながらゴミ保管スキルを使うと……取り出せたっ!

 間違いないっ! これは、冒険者にも商人にも重宝される当たりスキルだっ!

 ウキウキしながら、今度は自分の着替えを保管しようとして、


「≪ゴミ保管≫……あれ? 消えない?」


 何故か僕の服は保管出来ない。

 今度は別の魔銃を……保管出来た。

 まさか……ゴミだけを保管出来るスキルなのっ!?

 試しに、目の前にある空になったお皿は……ダメか。

 じゃあ次は……と思った所で、隣のテーブルの人が、氷が入ったカップを床に落とした。

 その時、床に落ちた氷は……保管出来る。


 や、やっぱりゴミだけしか保管出来ないスキルなのっ!?

 こんなの全然使えないゴミスキルじゃないか!

 そう思った所で、ウェイトレスさんが奥へ運ぶお皿に乗った、光るリンゴに目が留まる。

 さっきも思ったけど、少しも食べられていないリンゴだけど、この後ゴミになってしまうんだ。

 この光は、ゴミじゃない! と主張するようだなと思い、何と無しにスキルを使うと、


「消えた……という事は、あの光る物は、現時点ではゴミじゃなくても、ゴミ扱いされているから、保管出来るんだ」


 ゴミとして捨てられる寸前のリンゴを手に入れてしまった。

 いや、他の客が残した時点でゴミなのかもしれないけど。

 一先ず、このスキルで何が出来るのか、調べてみる事にした。

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