第9話実技の授業なのです

 そして、実戦場に入る。そこは体育館のような建物だった。周りには観客席があり、中央で戦うようだ。

理事長が入ってきて説明を始める。

「ここが実戦場じゃ。四方の柱に埋められた魔石により特殊な結界が張られておる。この結界の中では致死ダメージを受けると自動的に外へ弾き出されるようになっておる」

「なるほどね。つまり死ぬことはないけれど、別にダメージを受けないわけでもないってことね」

ナナリーが言った。

「その通り。死にはしないが大怪我はするというわけじゃ。じゃが安心せい、どんな怪我をしようが治癒魔法でわしが治してやる」

「それなら安心なのです。私、まだ治癒魔法って使えないのですよ」

ミリアさんは聖魔法が使えなかったため、教わってないのだ。

「それじゃ、始めるとするか。まずはセイヤとナナリー」

「はい」

理事長に呼ばれ、結界内に入る。

「外に弾き出されるか、降参した方が負けじゃ。では、はじめ!」

理事長の合図で実技が始まった。

(相手は魔法使いだ。詠唱のスキに攻撃するしかない)

俺は先制でナナリーの間合いに入る。

このスピードならまだ詠唱できてないはずだ。

「・・・って力となせ。フレアバースト」

(何っ!?理事長の合図の前から詠唱を始めてたのか!)

すさまじい炎が向かってきた。

(こうなったら!)

俺は身体強化を使い、炎に正面からつっこんだ。

「なっ!?」

ナナリーが驚いた時にはすでに俺の光の太刀がナナリーの首元にあった。

「ま、まいったわ」

カランと杖が床に落ち、ナナリーは両手を上げた。

「ふむ。ナナリーはまだまだじゃな。初手で倒したと油断したせいで次の攻撃が間に合わなかった」

「はい・・・」

ナナリーが沈んだ声で返事をする。

「セイヤもじゃ。相手の威力が身体強化を上回っておったらどうする?もっと瞬時に考えうまく回避できるようになれ」

「わかりました」

とりあえずは勝てたが、魔法使い相手の戦闘をもっと考えなければ。


 お兄ちゃんの試合が終わり、次は私とシルフィさんの番だ。

シルフィさんは剣士らしいから、こちらに来る前に勝負を決めなければならない。

「それでは、ほのか対シルフィエット、はじめ!」

理事長先生が試合開始の合図をした。

と、同時に私は魔法を発動した。

「ごめんなさい!ストーンキャノン!」

高速で射出した石の弾丸がシルフィさんの額を撃ち抜いた。

そしてシルフィさんは外へ弾き出された。

「そこまで!ほう、見事じゃ。まさか無詠唱を使えるとはな」

「ありがとうなのです」

シルフィさんは無傷のようだった。

一撃で致死ダメージの場合はダメージが残らないみたいだ。

「僕の完敗だよ。まさか無詠唱でいきなり魔法が飛んでくるとは思わなかったよ」

シルフィさんがそう言いながら戻ってきた。

「まぁ、相手が悪かったみたいじゃな。そなたの踏み込みは大したものじゃった」

たしかに、魔法があとほんの少しでも遅れてたらあっという間に間合いに入られていた。

こうして最初の実技の授業は幕を閉じた。

★★★★★★★★★★★★★★★★

 僕の名前はシルフィエット・エーデルフェルト。騎士の家系であるエーデルフェルト家に生まれた。

女として生を受けたが、後継ぎが生まれなかったため、立派な騎士となるため男として育てられてきた。

経験を積むため、冒険者を目指し冒険者予備校に入学したのだが、初日の試験でセイヤ・モチヅキという黒髪の少年に敗北した。

今まで正当な剣術の訓練しかしてこなかったため、戦いの最中に剣を投げ捨てるという予想外の展開についていけなかったのだ。

実際の殺し合いではこういう予想外のこともありえるという教訓になった。

そして、そのセイヤと同じ部屋で生活することになった。

本当の性別を知られるわけにはいかないので、できる限り慎重に行動していたのだが。二日目にしてセイヤにバレてしまったのだ。

しかし、セイヤは誰にも言わないでいてくれると言ってくれた。

そして初めての実技の授業が始まった。

ナナリーは事前に詠唱をしていたようなので、注意してほのかの様子を観察した。

口元が全く動いていなかったから詠唱を始めていないと思い、全力で踏み込んだ。

「ごめんなさい!ストーンキャノン!」

次の瞬間、僕は結界の外に弾き出されていた。

まさか、無詠唱の魔法が飛んでくるとは思ってもみなかった。

僕はモチヅキ兄妹両方に敗北したのだった。

(このままじゃダメだ。もっと強くならなければ!)

そう思い、モチヅキ兄妹に勝つことを目標にした。

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