第5話最終試験なのです
さっきお兄ちゃんがすごく高くジャンプしたのを見てあっけにとられてしまった。
棒高跳びに出場したら金メダル間違い無しだろう。
そして、今度はミリアさんが私に教えてくれる番がやってきた。
「次はほのかの番だ」
「はいなのです」
お兄ちゃんとタッチ交代して、ミリアさんの元に駆け寄る。
少し離れたところでお兄ちゃんは自主練習をしていた。
「魔法は大きく分けて3種類ある。攻撃魔法・治癒魔法・召喚魔法陣。まずは属性魔法の説明から始めようか。ほのかはオール使い、つまり全属性持ちだったな。まず、魔法の属性には火・水・土・風・聖・闇の六属性がある。私は火・水・風のトリプル使いだ」
「なるほどなのです」
「そして魔法を使うためには2種類の方法がある。まずは『詠唱』だ。これは決まった文章を声に出して発することで魔法が発動する。次に『魔法陣』だ。描いて魔力を込めることで発動する。まずは手本を見せよう」
ミリアさんはそう言いながら杖を構えた。
「汝の求めるところに大いなる風の加護のあらんことを。風の刃を今ここにーー『エアスラッシュ』」
すると、杖の先から風が巻き起こり少し離れたところの木の枝が切り落とされた。
「わぁ、すごいのです!」
「今のが風の初級魔法『エアスラッシュ』だ。さぁ、ほのかもやってみようか。風の刃をイメージしながら詠唱してみて」
ミリアさんはそう言いながら私に杖を手渡した。
「わかったのです」
私は受け取った杖を構えた。
イメージ・・・イメージ。
かまいたちみたいな感じだろうか。
周りの空気を圧縮するイメージを浮かべる。
「汝の求めるところに大いなる風の加護のあらんことを。風の刃を今ここにーー『エアスラッシュ』」
すると先程と同じように風が巻き起こり、木の反対側の枝が切り落とされた。
「できました!」
「おぉ、すごいな。まさか一発で成功するなんてな」
そうして私とお兄ちゃんは二週間ミリアさんの特訓を受け、ある程度の魔法力を得たのだった。
「さて、いよいよ明日から入学となるわわけだが、最終試験を行おうと思う」
入学の前日、ミリアさんがそんなことを言い出した。
「最終試験なのですか?」
「そうだ。この私が教えたからには主席で入学してもらわないとな」
「で、何をすればいいんだ?」
お兄ちゃんが尋ねる。
「私が今から召喚する魔獣と戦ってもらう。試験とはいえ、全力で挑めよ?さもなければ死ぬからな」
「「わかりました」」
私とお兄ちゃんが同時に答える。
「闇よりいでしかのものよ、我が求めに応じ姿をあらわせ。召喚、ヒュドラ!」
ミリアさんが詠唱をすると巨大な8本の首の龍が現れた。
「お兄ちゃん、来ます!」
「まかせろ!」
ヒュドラがブレスを吐こうとした瞬間、お兄ちゃんが手刀の光の太刀で首を落とした。
「やったか!?」
「お兄ちゃん、それは言ったらだめなのです!」
すると、切断した首がみるみるくっついていく。
「切るだけじゃだめか。ほのか、頼みがある」
「なんですか?」
「俺がやつの首を切るから、すぐに切断面を焼いてくれ」
「わかりました」
そして再びお兄ちゃんが光の太刀でヒュドラの首を落とす。
「大いなる火の精よ、我に力を与えたまえ、ファイヤーボルト」
私が火の魔法でヒュドラの首を焼く。
すると再生はしなかった。
そうして、その作業を繰り返しようやくヒュドラを倒すことに成功した。
「ふむ。合格だな。これでお前たちは立派な冒険者になれるだろう。今日はゆっくり休め」
「はい、ありがとうなのです」
その日の夜、ささやかなお別れパーティーを開いた。
「これはうまいな。なんていう食べ物だ?」
ミリアさんが器に入った黄色い食べ物を口に入れ、尋ねた。
「それはプリンっていうデザートなのですよ」
ほのかが答えた。
今日の料理は全てほのかが用意してくれた。
「なるほど。これが異世界の食べ物か」
ミリアさんはプリンがよほどお気に召したらしい。
「短い間でしたがお世話になりました」
俺はミリアさんに礼を言う。
「いや。私もなかなか勉強になったよ。ほのかの火と風の合成魔法など私では考えもしなかったからな」
ほのかは炎に風魔法を組み合わせることでより威力の高い青い炎を生み出していた。
「私もお前たちに追いつかれないよう旅に出ようと思う」
「ミリアさん、出ていっちゃうのですか?」
ほのかが悲しそうな声で尋ねる。
「まぁ、そんな顔をするな。別に二度と会えなくなるわけじゃない。ほのかが冒険者になればまた会うこともあるだろう」
「はい、私も頑張ります」
そしてミリアさんの家での最後の夜は更けていった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます