第3話お兄ちゃんと一緒に寝るのです
冒険者ギルドを出て、私達はミリアさんに連れられて郊外の一軒家にやってきた。
「ここが私の家だ。今日は疲れただろうからゆっくり休んで、明日から色々教える。今夕食の支度するから座って待っててくれ」
そう言われ、私達はリビングの席に座る。
テーブルの上には数冊の本が置いてある。
「これ、読んでもいいですか?」
私はミリアさんに尋ねる。
「別にかまわないが、レグニカ語だぞ?」
そして私とお兄ちゃんは一通り本に目を通す。
パタンとお兄ちゃんが本を閉じる。
「よし、覚えた」
お兄ちゃんが呟く。
「お兄ちゃん、早すぎなのですよ」
すると料理をしていたミリアさんが振り返る。
「えっ!?覚えたってレグニカ語を!?こんな短時間で言語を一つ覚えたっていうのか!?」
ミリアさんが驚いていた。
「やっと私も覚えたのです」
私もそう言いながらパタンと本を閉じる。
「音声言語が日本語と一致してるからな。簡単だよ」
「はいなのです」
実は私達兄妹は数あるクイズ大会に出ては優勝している天才兄妹だった。
「驚いた。お前達、すごいな」
そして、ミリアさんが作ってくれた夕食をみんなで食べる。
パンにスープ、サラダに肉のソテーだ。
「このお肉、柔らかくて美味しいのです」
「たしかに。初めて食べるな」
するとミリアさんが答える。
「これは一角ウサギの肉だ。この辺りの名物でな」
「一角ウサギって、今日森にいたあれか」
お兄ちゃんがそう呟いた。
夕食を終えると、私達は客室に案内された。
「すまない、お客さんなんてめったにこないからベッドは一つしかないんだ。でもまぁ兄妹ならかまわないよな」
「はいなのです!」
私は元気よく返事をした。
「・・・まぁ、しかたないか」
お兄ちゃんが何か呟いた。
そしてミリアさんが部屋を出ていく。
「なんか大変なことになったのです」
「そうだな。まぁ俺達は必要な単位はもう取ってるからこのまま行かなくても卒業はできるけど。大学受験は諦めるしかないな」
お兄ちゃんは東京の国立大医学部を目指していた。
「私はお兄ちゃんがいればどこでも大丈夫なのですよ」
「ところで、さっき本に書いてあったことだけど」
「なんですか?」
さっきリビングで読んだ歴史書のことだ。
「この世界には色んな亜人種がいるって書いてあっただろ?その中で、はるか昔に滅んだ伝説の吸血鬼族がいたって書いてあったけど、それってもしかして俺達のご先祖様じゃないか?」
「その可能性はあるのですよ。きっと、何らかの方法でこの世界から転移してきたのかもしれません」
私達がこっちの世界に来れたのだから、ご先祖様が私達の世界に行った可能性もある。
「まぁ、確かめようがないけどな。もうこの世界でも吸血鬼は絶滅したみたいだし」
本によると、吸血鬼のとてつもない力を恐れた人間族が吸血鬼の里を滅ぼしたのだという。力は絶大でも、吸血鬼族は少数だったため、人間の圧倒的な数に押されたらしい。
ちなみに吸血鬼は赤い目に白髪が特徴らしい。
「とりあえず今日は寝るか」
お兄ちゃんがそう言いながらベッドに入る。
「はいなのです」
私もベッドに入ると、お兄ちゃんにしがみつく。
「おい、近い近い!広いサイズなんだからもっと離れてくれ」
「いやなのです!知らない世界に来てお兄ちゃんまでいなくなったらいやなのです」
私は泣きそうな声で言う。
もちろん演技だ。
ただお兄ちゃんとイチャイチャしたいだけだ。
「しょうがないな。ほのかが寝るまでだぞ」
お兄ちゃんがそう言いながら腕枕をしてくれた。
「ありがとうなのです」
私はお兄ちゃんの腕枕であっという間に眠りに落ちたのだった。
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