第2話 女神サマとの出会い

女神サマとの出会いは唐突だった。

なんの心構えもなく気が付いたら目の前に子供の頃に憧れた月の美少女戦士のコスプレをしている美人さんが居たのだから思わずポカンとしてしまう。

ふと我に返り周りを見渡してみるが見覚えのある場所でも現実世界では無いような場所にいる。

言うならば月の戦士のプラネタリウムの中に故郷のような大地がありそこに突っ立っている訳で、よくある異世界物の話だと異空間や無の空間のように真っ白だったりする訳でもないのである。

あまりに突然の事で変な方に考えがぶっ飛んでしまうが仕方が無いハズ。


「初めまして美保さん」

私がぶっ飛んだ考えをしているとコスプレ美人さんが声をかけてくる。

その瞬間私は自分の事を思い出した。

鈴木 美保32歳独身の夢見るフリーターだ。


そういえば、私の直前の記憶はバイト先で急に刺されたような…。

ファミレスのバイト先でずっとブツブツ言っている気味の悪い男の人がいるとは思っていたけど、目の前の席を片付けていたらなにやら叫んでいて振り返ると目の前に光る何かがあり、次の瞬間には痛みと変な熱さにおそわれてそれからいつの間にかここに居たんだ。

そしてココが病院ではないということは、私はきっと…

そんな事をぼんやり考えていると。

「思い出しましたか?」

再びコスプレ美人さんが声をかけてくる。

「えっ?あ、はい。」

なんとなく感情がマヒしているというか変な感覚で少しぼーっとしてしまっている気がする。

でも、思い出しましたか?と聞かれても死んでしまったのであれば今更どうにでも出来ないよなぁ、と的外れな事を考えてしまうが、納得したという感覚ではない。

「私はとある世界を見守りし者、その世界では女神マルリナと呼ばれています。お気づきだと思いますが、美保さんは麻薬中毒者の錯乱によって刺され出血死されました。」

出血死って周りにいた人トラウマになりそうだわ、血まみれになったファミレスとか評判悪くなって潰れちゃうのかなぁ、店長はちょっと怖い人だったけどいい人で良くしてくれたのになんだか申し訳ないな。

どうにもさっきから思考が横道に逸れてしまう気がする。

「あの人気味悪いと思ってたけどヤク中だったんだね。」

「ええ、とても不幸なことに彼は女性に騙されて自暴自棄になり麻薬に手を出してしまったようです。そして不運だったのはその騙した女性と美保さんが似たような髪色と髪型だったので、その女性への恨みが暴走して美保さんがさされてしまったのが真相です。」

私が死んだ時の真相をちょっと言いにくそうに教えてくれる女神様、異世界物の話だと死んだ理由は交通事故でしたーとか誰かを守ってとか、わざと理由は不明ですとかなのにこの女神様は律儀な人(じゃなくて神)なのかな?

「はぁ、私はそんな事で殺されたって事ですか…」

それにしてもなんたる不運というか理不尽な死に方だわ。

私には夢がありそのためにこの歳までフリーターわやしながら必死で生活してきていたのにそんな理由だなんて腹が立つが不思議とイライラはしない。

「ココは私の管理する世界なので不安定な精神は消えやすくなります、なので今は感情を抑えるようにさせてもらっていますよ。」

不思議に思っていると察したのか心の声をよんだのか?女神が教えてくれる。

「それで?死んだはずの私が天国でも地獄でもなく女神様の管理する空間に呼ばれたのでしょう。見たところ死後の世界とは言えなさそうですけど?それに女神様の管理する世界とは?」

ひたすら夢に向かって頑張っていた事が突然奪われてそれを素直に受け入れる事は出来ないが、今は女神様効果で比較的冷静に話を聞くことが出来ている。

そして、さっきの女神様の発言や今いる場所に違和感を感じるのだ。

「私は美保さんのいた地球ではなく、ほかの銀河系の星、最近ですと異世界と呼ばれる所を管理しています。」

女神様はそう言うとにっこり笑い話を続ける。

「単刀直入に言いましょう、美保さんには私の管理する世界へ生まれ変わってもらいたいのです。つまり転生ですね。そしてソコに蔓延る邪教徒といいますが組織を壊滅させて頂きたいのです。」

女神様からのコスプレの連想で悪の組織をおしおきしちゃって!的なことをして欲しいと言うことなの!?と心の中で激しくツッコミを入れてしまう。

しかしその後頼まれた内容はおおむね想像通りでコレが異世界転生物のストーリーなら逆に捻りが無さすぎだろ!っと思ってしまったわ。

とりあえず女神様のお気に入りらしい月の戦士のように転生先に残り4人の仲間をのちに出会える様にしておいてあるので歳頃になったら前世の記憶が戻るようにしておくのでその後は仲間を探しつつ敵をやっつけろという事だった。

「女神様?ちやみに月の戦士のようなお助け王子様もいたりするの?」

ほら、お決まりのピンチの時は薔薇を投げてくれるヒロインの王子様(笑)

そのまでするならいるのか?と思ったけど。

さすがに居ないそうだ、そういう相手は自分の意思で好きな人を見つけて欲しいと、そういうのはコチラが用意するものでもないと、転生先では現実世界なので過信もし過ぎないように気をつけて欲しいということも言われたが、そもそも私には拒否権は無いようだ。


ちなみに私の夢だが、女神様と同じアニメを少女時代にみて憧れ実際にはヒロインにはなれないけど、子供にゆめを与えるアニメの声優になりたくてたまに貰えるガヤや、脇役の仕事をしながらフリーターをしていたので、ちょっと興味を惹かれてしまったのは仕方がないと思いたい。

そして、お助けヒーローは居ないが相棒として女神様の眷属つまりディアナをを使い魔として地上に送り込むので仲良く協力をして欲しいと紹介されてた。


そんなこんなで色々あり転生をして今の私があり、今回記憶を取り戻したのだったがとりあえずどうしていいのかさっぱりわからないし、一気に記憶を取り戻したので疲れたのかいつの間にか寝てしまっていたのだった。

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