散りゆく桜の中で君との想い出探し
青いバック
第1話
コンコン病室の扉をノックし入る。
「よっ元気?」
「今日も来てくれたんだね今日は元気だよ」
君はそういうと可愛らしく笑う。この可愛らしく笑ってる女性は君島叶音俺の幼馴染だ。昔から体が弱くてよく入退院を繰り返してる。でも髪の毛はサラサラでまるでお人形さんのように綺麗な目をしてる可愛い子なんだ、神様もこんな子を病弱にするとは許せん。
「あのさ、夢灯毎日来なくていいんだよ?疲れるでしょ?」
「いいのいいの俺が来たくて勝手に来てるんだし気にしないでいいの。ほら今日のお見舞い品のりんご!好きだろ?」
りんごを叶音の前に出すと、叶音はパッと顔を明るくし喜ぶ。昔からこいつの表情は読み取りやすい。
「しょうがないなりんごに免じて許してあげるよ」
「はは、ありがと」
許しを貰った俺はりんごを剥いて君の前に出す。
「美味しいね夢灯もどう?」
りんごを口に含めながら君は俺にも勧めてくる。ほんとにこいつは天使なのかってぐらい優しいんだから。
「じゃあ1個だけ貰うよ」
俺は君の好意を踏みにじりたくなかったから、ありがたくりんごを貰った。まだ話したいことはあったが、話をしすぎたら体調悪化してしまうかもしれないから今日は帰ることにした。また明日話せばいいし。
「よしりんごも食べ終わったし帰るよ」
「うん分かったじゃあね」
そういった君の顔は笑ってるが声が浮かないような声をしていた。俺が帰るのがもしかしたら悲しいのかな?!まあそんなことないか。俺は叶音に別れの挨拶をして病室を後にした。
◇
コンコン病室の扉をノックする音が聞こえた。彼かな?
「よっ元気?」
ノックし入ってきた彼は、野島夢灯私の幼馴染だ。彼は私が入院をしてから、毎日お見舞いに来てくれてる来なくていいよって言ってるのにほんとに優しいんだから。
「あのさ、夢灯毎日来なくていいんだよ?疲れるでしょ?」
「いいのいいの俺が来たくて勝手に来てるんだし気にしないでいいの。ほら今日のお見舞い品のりんご!好きだろ?」
そういい私の前にりんごを出す。私はりんごを出されるとなんでも許しちゃう傾向があるのだ。
「しょうがないなりんごに免じて許してあげるよ」
「はは、ありがと」
夢灯はりんごを剥いてくれ私の前に出してくれた。私は剥いてくれたりんごを口に含めながら夢灯にも勧める。
「美味しいね夢灯もどう?」
「じゃあ1個だけ貰うよ」
夢灯が貰ってくれたからなのか今日のりんごはより一層美味しく感じれた。
「よしりんごも食べ終わったし帰るよ」
夢灯はまだ何か喋りたげだったが帰ると言った。多分私のことを思って言ったのだろう彼は優しいから。
「うん分かったじゃあね」
「ん、また明日。」
夢灯が扉を閉めたのを確認すると私はベットに倒れ込む。実際体調は良くないのだ。日に日に悪化していってる一方お医者さんからも言われた。先は長くないと私どうなるのかな?明日も夢灯と話せるよねちゃんとあの場所に行けるよね。でも大丈夫私がもし死んでも一緒に行けるようにしてるから。夢灯ちゃんとやってくれるかな?
◇
病院を後にした俺は電車に乗り家に帰る。
「ただいま〜」
出迎えてくれたのは母だった。
「あらおかえりまた行ってたの?」
「うん」
「あんたホントに叶音ちゃんが好きなのね。元気だった?」
母にからかわれた気がしたけど無視をし話を続けた。
「元気だったよ」
叶音の母とうちの母親は昔からの、幼馴染らしく叶音の母親は僕をホントの息子のような接し方をしてくれていた。母親も叶音の事をホントの娘のように思っているだから心配なのだろう。
「そうなら良かったわ」
その後は飯を食べ、風呂を済ませてしまって眠りについた。
チャラランチャララン。携帯が鳴るもう朝なのか?早くないか?そう思いながら携帯を覗くそこに映っていたのはアラームの画面ではなく、叶音の母の電話番号だった。嫌な予感がした時刻は一時。こんな深夜に電話をかけてくることなどまず有り得ない。そう思いながら恐る恐る電話に出る。
「あのね夢灯君落ち着いて聞いて欲しいの」
あ、やっぱりだ。察した僕は一気にこの後を聞きたくなくなった。嫌だ嫌だと心が僕に訴えてくる。
「叶音が今........今」
電話越しに泣きじゃくる叶音の母親。言葉が出てこないほどに苦しいはずなのに僕に教えなきゃと思ってかけてきてくれたんだろう。
「息を引き取りました。」
あぁ、やっぱりか。聞きたくなかった言葉だった。元気と言ってた叶音が亡くなってしまった。僕は飛び出した泣きながら病院に向かって走った。
病院に着くと、叶音の母親が居た。
そして白い布を被された叶音。俺は膝から崩れ落ちるような気持ちだった。
「来てくれたのね。夢灯君明日お葬式をするから来てくれるかしら?」
俺は哀悼の意を示すかのように「ご冥福をお祈りします」と言った。本当はこんなことを言わなくて済んだらよかったのに。お葬式にはもちろん行く。
「はい、勿論です。アイツの顔を最後に拝んでやらないとアイツも悲しむと思いますから。」
「ええ、そうね。あっ、夢灯君これ」
なんだろう?と思いながら渡されたものを受け取る。
「DVDとボイスレコーダー?」
「叶音がね。私になんかあったら夢灯にこれを渡してって私達に預けていたものなの。」
「そうなんですか。じゃあ今日の所はここら辺で。」
「うん...またあしたね」
2人とも涙を堪えながら話をしていたせいなのか、声が震えていた。
家に帰った俺は貰ったDVDを先に見た。
「あ〜マイク入ってるかな?聞こえる〜?」
そこに映っていたのは、元気な姿の叶音だった。
「へへ、なんかこれ照れ臭いね?まずこれはよくあるやつです。死ぬ前に動画を残すってやつです!」
ふふ、コイツは何してんだか。
「あ〜よし!じゃあ本題に入ろうか。まずごめんね。先が長くないことを言わないで君に心配しないで欲しかったのだから言わなかったのごめんね。」
なんだ、そんなことか。やっぱり君は優しい、、
「次にこれを遺した意味は、君に宝探しをして貰うからです」
宝探し?
「宝探しとだけ聞いたら、宝探し?となるでしょう。なので今から説明をします。」
「まず最初にね、私達がよく行ってた公園に行って欲しいの。」
俺達がよく行ってた公園?ヨモギ公園のことだろうか?
「その公園にある一本松の所にある物を埋めました。それを掘り起こして次のミッションを確認してください。なので私のミッション説明はこれで終わりです!あ、後ボイスレコーダーも貰ったでしょ?それは全部のミッションが終わってから聞いてください。じゃあまたボイスレコーダーで会おう!バイバイ」
君がそう言うと、DVDは終わった。ヨモギ公園の一本松に行け?よく分からないが明日お葬式が済んだ後に行ってみよう。
お葬式が済んだ俺は家に帰り、なるべく動きやすい格好をしてヨモギ公園に向かった。
えっと確か一本松の下を掘れと言ってたな。この年でちょっと穴掘りは恥ずかしいが仕方ないやるか。
10分程掘ってるとカツンという音がした。残りは手で掘ってみると銀色の缶詰が出てきたその中に書かれていたのは。
「おめでとう!!よくぞ掘り起こした!」と何故かちょっと偉そうな口調で書かれてた叶音の実筆の手紙だった。
「じゃあ次のミッションを教えるぞよ。次のミッションは、ここの近くにある煙草屋さんに向かって、こう言っておくれ。タバコ屋さんの右隣はパン屋さんとな。そしたら次のミッションが出るよ!じゃあまた次のミッションで!」と書かれていた。終始訳の分からない口調だったのを見るとこれを書いてる叶音は相当楽しかったのだろう。後呪文みたいなのが恥ずかしすぎるよ!うだうだ言っていても仕方が無いので行く事にした。
「あのすみません。」
俺は店番をしているおっちゃんに話しかける。
「ん?なんだい兄ちゃん?未成年かい?未成年に煙草は売れないよ。」
「あっいや!違うんです。ちょっと聞いて貰いたいことがあって。」
そういい俺は咳払いをして、あの恥ずかしい呪文を唱える。
「タバコ屋さんの右隣はパン屋さん」
あぁ!やっぱ恥ずかしいこれ!!やだ!もう!消えたい!
「おお!兄ちゃんあの女の子が言ってた子だな?ほれこれ」
と言われひとつの紙を手渡された。
「ありがとうございます」
「何いいってことよ。まだ続くんだろ?これ頑張ってな!」
「はい!!」
タバコのおっちゃんに背中を押された俺は元気よく返事をしてタバコ屋を後にする。
タバコ屋を後にした俺は、貰った紙を開く。
「ふっふっふ。恥ずかしかっただろう?あの呪文は」
こいつ!わかっててしたのか!
「実はね。これが最後。次の場所に行くと、もうこのミッションは終わります。」
え?もう終わるのか?早いな。
「はい!!早いなとか思わない!幼馴染の思考回路は読めるよ!」
やっぱり凄いな叶音は。
「じゃあ最後のミッションを教えます。桜の大木があるあの神社に向かってください。それが最後のミッションです。そこでボイスレコーダーを聴いてください。じゃあまたボイスレコーダーで会おうね」
これが最後の手紙だった。神社の名前は書かれていなかったがすぐに分かった。いつも俺達が春になって桜を満開になると見に行ってた菊ヶ丘神社今年も行こうと言っていたのにちょうど今が春で綺麗に咲く時期なのに。そう思うと、思わず知らずのうちに涙が流れていた。
神社に着いた僕は、石段作りの階段を登り桜の大木の所へ行くこの桜の大木はいつ見ても迫力があり綺麗だ。桜の大木を見上げながらボイスレコーダーを出して、イヤホンを指す。
ボイスレコーダーの音声を流すと君の声が聞こえてきた。
「ミッションクリアおめでとう!!じゃあ何から話そうか?そうだなあ。じゃあこれから話そうかな。今君がミッションで歩き回った所は私たちがよく遊んだ場所です。公園で砂遊びをし、タバコ屋の周りを駆け回る。そしてこの神社の桜の大木の下で涼む。」
やっぱりそうだったのか。
「懐かしいね?つまりこのミッションは想い出巡りだったのです。そしてこの神社を最後にしたのも君との約束を果たすためです。」
約束?
「このボイスレコーダーが流れてるってことは、もう私は君の隣で桜を見ることは出来ない。だからせめて声だけでも想い出だけでも一緒に行けないかな?と思ってこれを遺しました。」
そんなことを考えてくれていたのか。僕はそれを知った瞬間我慢してた堪えていた涙が溢れ出した。
「じゃあ最後に、これからも幸せでいてください。バイバイ」
その言葉を最後にボイスレコーダーは終わった。
俺は涙を拭いて空を見上げた。散りゆく桜が空をピンクに地面をピンクに染めている。
叶音は最後まで約束を守ろうとしてくれた次は俺の番だ。叶音が最後に願った幸せでいてくれという約束を胸に俺はこれからを生きていく。
散りゆく桜の中で君との想い出探し 青いバック @aoibakku
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