第49話 私で『最後の女』にしてくれるなら…

 お父さんは入浴中、お母さんは食器を洗っている。今なら2階で電話しても聞かれることはないだろう。ベッドに寝転がって夕夏に電話をする。


『こんばんは、陽太くん』


「こんばんは、夕夏さん。今いいですか?」


 『うん』と可愛い返事がくると陽太の心は和む。


「夕夏さん、俺のこと好きですか?」


『好きだよ』


「俺が複数の女性と関係を持っていた過去があっても?」


『………』


「俺、本当にいろんな人としました。キスや前戯もなしで突っ込んだこともあるし、濃厚な行為もしたこともあります。経験人数なんて数えてませんし、体で稼いでいたセックス魔です」


『どうしたの?最近自虐的だね』


「だって事実です。その過去は変えられません。そんな事故物件を好きでいてくれるのかなって…」


『何かあった?』


「いえ、夕夏さんからしたら俺はどう映るのか気になって」


 枕を抱えて夕夏の返事を待つ。夕夏はどんな返事をくれるのだろうとドキドキした。


『そーだね~。陽太くんはいろいろ持ってるからね~』


「言っときますが、病気は持ってませんよ」


『あっはは!何度も言うね!それ。そこは特に気にしてなかったけど…。


陽太くんがいろんな問題を抱えてて、私が全部受け止めてあげられるか分かんないんだけど…、陽太くんは『もうやらない』って決めたんだよね』


「はい、夕夏さん一筋です」


『なら、いい。過去の女性に嫉妬してたらキリないもん。私で『最後の女』にしてくれるなら…』


 陽太は今すぐ夕夏を抱きしめに行きたくなった。言葉だけじゃこの想いは伝えきれない。


「夕夏さん、大好きです。愛してます……」


『私も!』


 夕夏と話して気持ちが落ち着いた。


 過去は変えられない。でも、こそに囚われていてはいられない。『あの』過去を乗り越えなければ、今に至らないかもしれない。そう、解釈する事にした。


 だから、『これから』の事を考えよう…。





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