第45話 生娘か、お前…

 退勤後に杉山と飲み屋に行く。行き付けの居酒屋は完全個室で防音の席だった。会社の愚痴を話す事が多かったので、情報漏洩を防ぐためだ。お酒はそこそこに杉山は夕夏の話に聞き入った。


 ほぼ姉の恥さらしだったが、開き直ってボロカスに話した。杉山は陽太の悲運とそこから脱け出すための行動力にガチ泣きしていた。

 ママ活の事は話さなかった。これ、本当!学費を崩したとかで『誤魔化した』。


「いや~、俺はもう陽太くんに惚れたよ。尊敬するわ、うううっ…」


「もうウザいから泣き止んでくれない?」


「にしても、ずっと南じょに片想いしてたとはな~。一途だね~」


「なんで…わかったの?陽太くんと付き合ってるって…」


「ほら、駅で1度会ったことがあっただろ。あん時、陽太くん、めっちゃ俺の事睨んでたもん!

あれは叔母さんを心配してたんじゃねーよ。俺の女に手ぇだすなって目だったな!」


「そうだったんだ。気付かなかった…」


 陽太があの時怒っていたのは嫉妬していたからなのかと、理解した夕夏。本当に自分は鈍感だと再認識した。


「でも、まぁ~陽太くんも生殺しだよな~。積年の想いが通じてお前と恋人になれたのに!大人になるまで待たなきゃなんて!」


「だって、陽太くんはまだ、子供だし…」


「いや、ちょっとぐらいはいんじゃねーの?お前だって、付き合ってんなら色々やりてーだろうがよ!生娘じゃねんだから!」


「……」


「生娘か、お前…」


「うっせぇ!」


 怒鳴ってジョッキのビールを飲み干す夕夏。勘定を済ませて解散することにした。


「まぁな~、大人としての対応も大事だけどな~。陽太くんはイケメンだぜ~?周りの女の子がほっとく訳ないんだし。離れてかないようにちゃんと掴んどけよ!」


 別れ際に杉山がアドバイスをする。確かに、陽太はモテるし、告白されているとこは前に見たことがある。

 でも、今の自分に何が出来るのだろうと考えながら、涼しくなった夜道を歩いた。


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