また!やらかしたぁ!

第44話 もしかして、『陽太くん』か?

 陽太から贈られた婚約指輪は、取り外したりはせず普段から身に付けていた。会社に付けていくのはちょっと緊張したが、ピアスも気付かれなかったし問題ないだろう。

 …と思ったが、夕夏の薬指の指輪の件はあっという間に噂になった。男勝りな夕夏に男の影があるぞと職場はその話題で持ちきりに…。


 噂話に尾ひれがついて、曲解と妄想が入り交じり、何故か『杉山と婚約した』事になっていた。


 いやいやいやいやっ!

 あり得ん!あり得ん!ふつーに嫌だよっっ!


 事実を確かめにきた社員達に対し、全力で否定する夕夏。隣にいた杉山も否定する。婚約指輪の真相を聞かれたので、プライベートで知り合った人と答えた。

 素直に答えたのに、どうしてか結婚詐欺を疑われた。失礼でしょうが💢!なので、昔からの知り合いで最近再会して、付き合い始めたという経緯を話した。

 皆は『相手は高校時代の同級生』とマイルドに解釈してくれた。本当は14歳の元甥っ子だとは絶対に言えない。杉山は隣で聞き耳を立てながら話を聞いていた。








 昼休みは食堂ではなく、近くのフードコートの広間で食べていた。夕夏の婚約の話題のせいで、しばらくは食堂にいない方がいいだろう。ベンチに座って『お弁当』を食べる。おにぎり2個だけど、『お弁当』だよ!文句ある!

 すると、買い物帰りの杉山が立ち寄って隣に座る。当然ながら夕夏の婚約者の話を振ってきた。


「なぁ、婚約者って…お前が高校生時代の『知り合い』で、半年前に再会したんだよな?」


「そうだよ…」


「ふーん………



もしかして、『陽太くん』か?」


「なんでわかったのっ?」


「えっ?まじなのっ!」


「へっ?」


 杉山は冗談半分で聞いたらしかった。暴露したのは夕夏の方だ。

 また、墓穴掘ったぁぁぁぁ!大気圏突破して月まで貫通するヤツをぉぉ!

 それはもはや、墓穴を通り越してレーザービーム級の破壊力だ。


「どういう事だよ?甥っ子だろ?お遊びじゃねーよな…」


「いや、その…もう、甥っ子じゃないっていうか~」


 しつこく聞いてくる杉山を無視して戻ろうとしたが、説明しなければ社内で『甥っ子と婚約した』と吹聴すると脅された。

 そんな事をされたら、夕夏はスリーアウトチェンジだ。本当に社会から退場させられる。



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