第17話 陽太くん、好きな人いるの?

「モテるのも大変だね…陽太くん」


 最寄り駅に着いたが電車には乗らず、そのまま家まで歩く事にした二人。手を繋いだまま陽太に話しかける。


「そうですね。『水波さん』は俺の見た目だけで告白してくれたんじゃないんですよ」


 彼女とは1年生の頃に同じクラスで、グループ活動の時によく話したらしい。陽太もあの頃は『ただの学生』だった。2年に上がって疎遠となってしまったが、ずっと好きだったと言ってくれた。

 この前告白してきた時、陽太に『話した事ない』と言われたから、泣いてしまったらしい。

 確かに陽太は彼女の事なんて忘れていた。2年生は『いろいろありすぎて』記憶が消し炭になっていたからだ。彼女の想いに真摯に向き合ったが、やはり断ってしまった。


「振るのも辛いね……」


「はい。でも、彼女の気持ちには応えられないので、振るしかありません」


「人を好きになるのも難しんだな~」


「本当ですね。けど、好きな相手に、『好き』って言えるのはいいですよね」


 まるで、自分は言えないかのように聞こえたので、思いきって聞いてみる。


「陽太くん、好きな人いるの?」


「はい、います」


「気持ち伝えないの?」


 陽太は夕夏と目を合わせるが、すぐに前を向き直した。


「今はまだ伝えられません」


「そう、なの……。何かあったら言ってね。私に恋愛のアドバイスはできないけど、相談くらいはのるから!」


 その優しい笑顔が陽太にとっては残酷だった。お互いに変な痼が残ったまま夏祭りデートは終わってしまった。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る