第34話 『血が繋がってない戸籍上の母親』
夕夏と美奈は割り込んできた声に驚いて、その方向を見る。
「お前が夕夏さんをバカするなぁ!男に寄生して生きてるだけのお前なんかがっ!」
陽太の燃えるような眼光に二人とも怖じ気づく。陽太は大きくため息をついて、腕を組んで壁にもたれ掛かる。
「ここにいるって事はあの金持ちのおじさんとは結婚までいたらなかったのか?
大方、離婚歴か子供がいることがバレたんだろ。本当にあんた、取り入るのは上手いのに誤魔化すのは下手だよな。
もっと、巧くやれよ…」
夕夏も美奈も陽太の様子に戸惑って口を開けている。いつもの丁寧な口調はなく、その眼差しも汚いものを見るように冷たかった。
「何よ、あんた!その言い方は!とにかく私と一緒に来なさい。これからはあんたが私を養うのよ!」
「はっははは、やだよ!誰がお前なんか養うか!
『血が繋がってない戸籍上の母親』なんか…」
夕夏は目を開いて唖然とする。美奈は顔を硬直させた。
「な…、何言ってるの?血が繋がってない…?」
その部屋に流れる空気はなんと表現すればいいのか。怒りと当惑と怯え…。陽太は壁から離れて、夕夏に目を向ける。
「夕夏さん。お話があるって言いましたよね?
俺はこの人の息子でも、あなたの甥でもないんです。この女とは血が繋がってない別家庭の子供です」
「えっ、そんな?どういうこと?…
陽太は刺すような視線を美奈を向けたが、彼女は目を反らした。
「俺が11歳の頃です。盲腸になって、入院したことがありました。でも、その時に母子手帳に書いてあった血液型と、俺の血液型が違っていたんです。
夕夏さんの言う通り『托卵』かと思われましたが、祖母は違う事を疑って、俺とこの人のDNA鑑定をしてくれたんです」
美奈と夕夏の母は、ずっと陽太の容姿に疑問を持っていた。母親である美奈とも、結婚相手だった男性とも『似てない』と思っていた。
「結果は…この人との親子関係はゼロでした。俺は南條美奈の息子ではありません」
「ええ?じゃあ…陽太くんは誰の子なの…」
「俺もずっと…それを探していました。そして、見つけたんです。俺の本当の『両親』を…」
「だっ…誰なの!?」
「
美奈は青ざめる。肩を震わし歯をカタカタさせていた。
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