第33話 ああ、私はこの女を殺す…。

 この女を家に上げるなんて嫌だったが、こいつには色々言ってやらなきゃならない。


「なんで来たのよ。玉の輿に乗れるんじゃなかったの?」


「ん~、ちょっとダメになっちゃったの!だから、しばらくの間ここに置いて!」


「ふざけないでよ!自分で家を売ったくせに!」


「だってしょうがないじゃない!お金が必要だったの!セレブ妻になれるのに借金こぶ付きなんて相応しくないでしょ!」


 本当に頭が沸いてやがる。脳天カチ割って腐った脳みそを引きずり出してやりたいっ!


「あんたを泊めるなんて嫌よ。いい大人なんだから、自立しなよ!」


「なによ、ケチっ!なら、陽太を返して。あと、半年で中学も卒業でしょ!あの子に養ってもらうわ」


「だめよ!陽太くんは高校に行くの!頭がいい子なんだから、あの子の将来を潰さないでっ!」


「勉強なんて出来なくったっていいの!陽太はあのルックスで十分稼げるんだから!」


 夕夏はゾッとした。この女はまた陽太に体を売らせて稼がせる気だ。


「…あんた、陽太くんにママ活させてたんだってね」


「…知ってたの?そーよ。だって、陽太!金持ちのババアを掴まえるのが上手いんだもの!ホストとかやらせたら何千万も稼げちゃうわよ~!」


 夕夏は吐き気を押し殺した。このままじゃ陽太は一生この女に搾取される。


「陽太くんはあんたのものじゃないっ!そんな事させないからっ!」


「『私の子』なんだから、どうしたって私の自由でしょ!」


「子供に売春させて!『親』として恥ずかしくないの?今後も同じことさせるなら、私はあんたを警察に突き出すから!」


 『警察』を出されて少したじろぐ美奈。髪を掻き上げながら、苛立ちを示す。


「ごちゃごちゃうるさいなぁ!そんなに言うんなら、これからの生活は夕夏ちゃんが面倒見てよ。その代わり、陽太とさせてあげる!」


「なに……いってるのよっ」


「だって陽太、セックス上手いし、女受けいいし、夕夏ちゃんも恋人いないなら、夜淋しいでしょ~」



 ああ、私はこの女を殺す…。


 夕夏はそう確信した。もう、何を言ってもダメだ。殴ってでもこいつを止めないと…。



「あっ!夕夏ちゃんもしかして~、まだ、処女なの~?」


 夕夏の顔が一瞬歪む。気付かれないように平静を装ったが、美奈は読み取った。


「きゃっはは!やっぱりね~。勉強ばっかで、貧乳で、おブスちゃんだもんね~。男なんて出来ないか~」


「うるさい…30にもなって無職のアバズレに言われたくない!」


「仕事してるからって偉そうに!一生処女の負け惜しみにしか聞こえないわ」


 泣いたら負けだと思った。夕夏は爪が食い込むぐらい拳を握りしめ、殴りかかろうとした時だった。



「黙れよっ!」



 後ろから陽太が烈火のごとく怒鳴った。


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