優しくて、美しくて、可愛らしい人…

第22話 懐かしい夢を見た。

「う~ん。あんま美味しくないね。次は頑張ってみるから!」


 焼け焦げた茶色い卵がのったオムライスを前に、苦い顔をする少女。はじめて作ったと言っていたオムライスは、ライスがべちゃべちゃで野菜も一部焼けてなく固かった。

 それでも、一生懸命作ってくれたのが嬉しかったから全部食べた。


 お下げの髪に可愛らしい笑顔。自分にとっては『叔母さん』にあたる人だが、『叔母さん』と呼ばないでと言われたので、『ゆーちゃん』と呼んでいた。


「うん。また、作ってよ。ゆーちゃん!」


 『うん!』っと笑顔を向ける夕夏。陽太も笑顔を返した。







 懐かしい夢を見た。

 夕夏さんとの夢だ。彼女との思い出を何度も思い返してはいたが、夢で見るのは久しぶりだ。ゆっくり眠れたからだろうか。


 ここに来てからは睡眠薬を服用せずとも寝れていたのに、『ママ活』がバレてからはまた不眠症になった。


 6時間寝れたことを確認して、部屋を出ようとして眼鏡をかけ忘れたことに気付く。黒いフレームの眼鏡をかけてドアを開ける。


 朝食の準備をする前に夕夏の部屋に入る。体を丸めて眠っている夕夏のベッドに腰かけ、短い髪に触り自分が送ったピアスに触る。


 あれからずっとつけてくれているのが、嬉しかった。





 ママ活の現場を見られたのは、本当にミスったとしか言えない。夕夏さんの『会社の最寄り駅』だとは知っていたが、『休み』だという事で油断した。


 ホテル街で夕夏さんの姿を見た時は、心臓が止まるかと思った。最初から17時までだと伝えていたのに、ねだられて説得に苦戦してたら…。

 やっぱり、面倒そうな女性ひとだった。もう、2度と会わないし、お金も貰わなかったからいいだろう。





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