第20話 年頃の子供っている?

 それから4日間、陽太とは一言も話さなかった。『おはよう』や『おかえり』の挨拶だけで会話はない。朝食と夕食は陽太が時間をずらして顔を合わせないようにしていた。


 反抗してる感じではないが、距離を置かれている。


「はぁ~」


 大きなため息をつく夕夏。昼ご飯時に陽太が用意してくれたお弁当を食べる。


「どうした?『あの日』か?」


「セクハラで訴えるぞ!」


 軽口を叩きながら目の前に座る杉山。袋から菓子パンを取り出して食べてはじめた。


「杉やんはさ、年頃の子供っている?」


「子供?なんでそんな事聞くんだ?」


「いやさ、今甥っ子を預かっててさ…」


 夕夏は陽太の事をざっくりと説明する。無論、クソ姉の事やママ活の事は伏せておいた。


「なに、手ぇつけられない悪ガキなのか?」


「ううん、びっくりするくらいいい子なんだけど、ちょっと…非行に走ったっていうか…」


「まじ、何したの?」


「聞くな!」


「夜遊び?万引き?盗んだバイクで走り出す?」


「いや、中3だからバイクはないよ!」


「ふーん、中学生か~。俺の再従兄弟はとこも今中2だけど、まぁ言うこと聞かないらしいぜ。反抗期なんじゃないの?」


 『反抗期』で片付けられた方がまだいい。家庭への不満や自立心の芽生えの反抗期なら、自分にも経験があるから何かしらアドバイスできる。


 けど、お金を稼ぐために援交してる甥っ子をなんて諭せばいいのかわからない。


 クズ姉を反面教師にしてきた夕夏にとって、『体だけの関係』というのは未知の感覚だったからだ。



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